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[聴こうクラシック16]ヴェルディの「乾杯の歌」で新年を祝おう♪
2018年 1月 6日 07:00
新年の幕開けは、明るい気分を保ちたいものですね。今回は、新年の明るく前向きな気分にぴったりの曲、ジュゼッぺ・ヴェルディのオペラ「椿姫」の1曲「乾杯の歌」をご紹介します。実際にも、新年の音楽会で上演されることの多い楽曲です。またこの曲が歌われるオペラ「椿姫」についてもご紹介していきましょう。
イタリアオペラの名作を数多く生み出した作曲家、ヴェルディ
ジュゼッぺ・フォルトゥニーノ・フランチェスコ・ヴェルディは、オペラ「椿姫」「ナブッコ」「アイーダ」など数々のオペラを作曲した19世紀のイタリアロマン派の作曲家です。1813年イタリア北部にある当時のパルマ公国で生まれ、1901年に旅先のミラノで亡くなりました。幼いころから音楽に興味をもちオルガンの勉強を始め、彼の才能を評価した商人アントーニオ・バレッツィの援助で上級学校と音楽学校へ通い、22歳で音楽監督や指揮者の職を得ます。同年、バレッツィの長女マルゲリータと結婚。
26歳で作曲した処女作のオペラ「オベルト」で好評を得て、オペラ作曲家として順調なスタートを切りますが、私生活では、娘、息子、妻を相次いで亡くし、27歳で独り身になってしまいます。そして37歳のころにパリで見た薄命のヒロイン「椿姫」の芝居に感銘を受け、オペラ版を制作します。若くして命を落とすヒロインに幼くして亡くなった自身の妹や、最初の妻の姿を重ね合わせたのかもしれません。また当時の恋人でソプラノ歌手だったジュゼッピーナ・ストレッポーニとの関係を、故郷ではなかなか認めてもらえずにいた自身の境遇と物語を重ねたのではないかとも言われています。
「乾杯の歌」は、薄命の美女「椿姫」と青年の出会いの場面
「乾杯の歌」は、オペラ「椿姫」の第1幕で登場する3分弱の劇中歌です。「酌み交わそう、喜びの酒杯を」という歌詞で始まるこの曲は始終明るい曲調で進み、サロンで繰り広げられる華やかな宴をイメージさせます。
「椿姫」の舞台は1850年ごろのパリ。椿姫と呼ばれ、社交界の花であった高級娼婦のヴィオレッタは自宅のサロンで夜な夜なパーティを開いていました。青年アルフレードとも夜会で出会い、乾杯をする時ときに2人はこの歌を歌います。やがて2人は結ばれますが、アルフレ―ドの父に交際を反対され、ヴィオレッタは泣く泣く身を引きます。最後に再会するものの、彼女は病で亡くなってしまうという悲恋の物語です。
椿姫のモデルは、気品ある美貌と教養の高い女性
ヴィオレッタのモデルは、肺結核で23歳の若さで亡くなったマリー・デュプレシという女性です。マリー・デュプレシは、フランスの作家アレクサンドル・デュマ・フィスと一時期恋人の仲になったこともあり、アレクサンドル・デュマ・フィスは彼女の死後、彼女との恋を題材に小説「椿をもつ女」執筆。この物語は、戯曲、オペラ、バレエの題材として何度も舞台化され、今でも人々に愛されています。マリー・デュプレシ自身も高級娼婦で当時の裏社交界の花形でしたが、裏社交界にそぐわぬ気品のある美貌の持ち主で、ピアニスト兼作曲家のフランツ・リストにピアノを習うなど、教養の高い女性だったと言われています。
イタリアオペラの流れを変えたヴェルディ
ヴェルディの生きた時代、イタリアは統一国家を目指し、各地で政治運動が行われていました。ヴェルディも音楽で母国のために貢献しようと愛国的、男性的なオペラを多く作曲しました。そのなかで「椿姫」は身近な恋愛を題材にした、例外的に女性的な作品です。繊細なメロディがふんだんに散りばめられているのは、恋人ジュゼッピーナの影響を受けたと言われています。ヴェルディ以前のイタリアオペラは、オーケストラはシンプルに作曲され、歌手の技量を売りにしたエンターテイメントでした。ヴェルディは美しい旋律を優先して書き、それとともに歌手だけでなく、オーケストラの役割も大きくなるようにしました。この作風に感銘を受けたジャコモ・プッチーニがヴェルディののち、イタリアオペラを引き継いでいきます。
おすすめの演奏
それでは「乾杯の歌」を聴いてみましょう。20世紀最高のソプラノ歌手と言われたマリア・カラスと、名コンビと言われたジュゼッぺ・ディ・ステファーノの1953年の録音です。
またこちらは、日本の新春オペラ・ガラ・コンサートの模様です。歌詞の和訳を読むことができます。
参考文献
「三枝成彰のオペラの楽しみ方」三枝成彰著、講談社
「これだけは見ておきたいオペラ」木之下晃・堀内修著、新潮社
「オペラ鑑賞ガイド」小学館
「大作曲家たちの履歴書」三枝成彰著、中央公論社
「絵本で読む音楽の歴史 Vol.7 オペラのすべて」アレッサンドロ・タヴェルナ著、ヤマハミュージックメディア
「バロック音楽はなぜ癒すのか」竹下節子著、音楽の友社
「クラシックの名曲解剖」野本由紀夫編著、ナツメ社
◇前回記事◇[聴こうクラシック15]大晦日に聴きたいエルガーの「威風堂々 第1番」
https://kaden.watch.impress.co.jp/docs/column/lifestyle/1163115.html