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【二十四節気3】5月下旬は、草木や穀物の生命が満ち始める「小満」

1年間を24の季節に分けた「二十四節気」で、夏が始まる「立夏」の次は、草木が青々と伸び出す「小満(しょうまん)」です。江戸時代の俳人、山口素堂がこの季節を詠んだ句に「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」とあるように、「鰹」が美味しい季節でもありますね。今回は、「小満」のもつ意味や、旬の「鰹」が美味しい秘密を紹介します。陽気が良く、1年のなかでも過ごしやすいこの時期、夏の訪れを五感で感じながら、初鰹を好んで食べた江戸っ子の“粋”を感じてみませんか?

 

5/21から始まる「小満」は、草木の生命力が満ちてゆく時期

「小満」は、初夏の日差しを受けて草木や穀類がぐんぐん成長し、天地のあらゆる生命に力が満ちていく季節。夏の始まりとなる「立夏」の次の節季で、2017年は5月21日から6月4日まで続きます。ちょうど田植えが始まる時期で、各地で「御田植祭(おたうえまつり)」などの、豊作を祈って田植えをする神事が催されます。また「小満」には、秋に撒いた麦の穂が付き始めるこの時期、無事に穂が付いたことで少し安心する(小さな満足を感じる)という意味もあるそうですよ。

 

田植えをする早乙女の衣装は、神様を迎える「ハレ着」

豊作を祈る「御田植祭」や「御田植神事」などでは、「紺絣(こんがすり)の単(ひとえ)」「赤色のたすき」「白手ぬぐい」「菅笠(すげがさ)」という姿の若い女性が、並んで苗を植えていきます。この女性は、田の神に仕える巫女と考えられ、「早乙女(さおとめ)」と呼ばれています。この早乙女の衣装は地域によって差がありますが、すべて新品で揃えた晴れ姿が多く、田植えのときに田んぼの神様が近くまで降りてきて見ておられるので「ハレ」の姿で迎える、という説があるようです。現代から見ても、大きな菅笠をかぶり手足も隠した衣装は、紫外線が強くなる時期の日焼け対策としても万全ですね。

 

鰹の旬は年2回、身の引き締まった「初鰹」のシーズン到来

この時期、旬の美味しい魚と言えば「鰹」。鰹は初夏と秋の年2回、旬を迎えます。というのも、日本近海で群れをなす鰹は、4~7月にかけて太平洋を北上し、再び9月の半ばから群れで南下を始める性質があり、その時期に合わせて漁獲量が増えるからだそう。その年に初めて水揚げされる初夏の鰹は「初鰹」と呼ばれ、身が締まって脂が少なくさっぱりとした食感なのに対し、秋の鰹は「戻り鰹」と呼ばれ、脂がしっかり乗っているのが特徴。鰹に限らず、初物は数が少なく値段も高いもの。それでもいち早く初鰹を手に入れることが江戸っ子には“粋”とされ、「女房を 質に入れても 初鰹」や「まな板に 小判一枚 初鰹」といった川柳も生まれたほどです。

 

鰹節の旨味成分「イノシン酸」は、生きた鰹にはない成分

「鰹節」のダシは、日本の台所に欠かせませんね。「鰹節」は、頭や内臓を取って煮た鰹の身をいぶして乾かす「焙乾」という工程を繰り返して作ります。旨味成分「イノシン酸」は、生きている鰹には含まれないもので、肉に含まれる酵素が肉を分解する間に増加していきます。とは言え、その間に腐ってしまっては大変です。そのためには鰹からできるだけ水分を抜く必要があり、新鮮なうちに鰹を“煮て乾燥させる”という鰹節の作り方は、旨味をたくさん閉じ込めるための理にかなった方法なんですね。

 

「小満」の次は、梅雨を迎えて蒸し暑さを感じる「芒種」

初夏の爽やかな日々からだんだんと蒸し暑さを感じるのが次の節気「芒種(ぼうしゅ)」です。「芒(のぎ)」は麦や米の穂の先にツンツン伸びている突起のこと。このころになると、穀類の種を撒き始め、梅雨に入っていきます。次回は、6月上旬の「芒種」の由来や、梅雨にちなんで「梅」のトリビアをご紹介します。お楽しみに!

 

 

 

高橋尚美

愛知県の渥美半島生まれ。東京での会社員生活から結婚出産を経て、2009年に夫の実家がある岐阜市へ。几帳面な戌年の長女、自由奔放な子年の次女、愛嬌いっぱいの辰年の三女を育てる母ライフを満喫しつつ、qufourのリサーチ記事や地元で発行している食育冊子の記事を執筆しています。