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【ダウン症児と私27】入園から7カ月、柔らかい給食を時間内に完食

幼稚園で同じ発達段階のお友だちができ、楽しい通園生活を送っているユキトくん。今回は、いろいろな人たちのサポートとナナさんの頑張りで、柔らかい給食を時間内に食べ終わるようになるまでのお話です。食べ物をすり潰したり、味付けを変えたりと、根気よく工夫することで、成果が現れてきました。

 

新しい幼稚園は、ナナさんの心と体の負担を軽減

Q.週2回の通園は、ナナさんにとって負担でしたか?

A.実は、以前よりも心も体も実は楽になりました。前の幼稚園では、ユキト以外の子どもたちは歩けて走れるし、コップでお茶を飲めるので、周りについていくだけで大変でした。新しい幼稚園は、雰囲気はのんびりしていますが、同じ発達段階のお友だちと一緒なのでプレッシャーもありません。療育はしっかりしているので安心です。また家だと、2人の子どもの面倒をみなければならないですが、幼稚園へ通っている間は弟を義母に預けていたので、私とユキトは幼稚園のプログラムを楽しむ余裕が出てきたのだと思います。

 

食事を舌で押し出してしまうユキトくんに悩むナナさん

Q.ナナさんもユキトくんも気持ちに余裕が出てきたようですが、苦手な食事や水分補給などの訓練は、順調に進みましたか?

A.食事は相変わらず大変でした。豆イスには座れるようになりましたが、ユキトはテーブルの上の物を落としたり、投げたり、倒したり、手でぐちゃぐちゃにしてしまいます。ですので、ユキトの手の届くところには何も置けません。テーブルの端にユキトを座らせて、角をはさんで私が斜め隣へ座り、ユキトの手の届かない私の隣へ給食を並べます。ユキトが直接給食や食器を触れないように工夫したうえで、ユキトの両手を左手で押さえ、右手で給食をスプーンですくって食べさせます。ですが、食事の苦手なユキトは口に食べ物を入れても舌で出してしまいます。弟がいないので、私もユキトに集中できる落ち着いた状況なのに口から食べ物を出されるので、私は、すごく、すごく、悩みました。

総合病院で、もぐもぐ外来を受診してアドバイスをもらい、児童デイサービスに通わせて職員の方にもお昼ごはんを食べさせていただき、新しい幼稚園ののんびりコースに通って弟と離れた環境を作り、柔らかい給食も用意して、万全の準備でお昼ごはんをあげても、口から食べ物を出してしまうのです。

 

Q.幼稚園の先生に相談しましたか?

A. 私が途方に暮れていると、先生がおかずをすりこぎとすりばちで潰し、お味噌汁のワカメ、豆腐、キノコなどを食用のハサミで切ってくれました。柔らかいごはんには、カツオダシを片栗粉で固めたとろみダシを掛けたので、ユキトは少し食べやすくなったようです。始めは嫌がっていたユキトでしたが、先生の工夫もあり、すり潰したり細かく切った食べ物を少しずつ食べられるようになりました。何カ月も何カ月もかけて、だんだんと食べられるようになったのです。私も、おかずをすり潰したり、ハサミで切ったり、とろみダシを掛けてみたりと一生懸命やったので、以前より少しでも食べられるようになると、本当に嬉しかったです。

 

とろみダシごはんで、食べられるもののバリエーションが増える

Q.給食が食べられるようになると、食事のバリエーションが増えますね

A. はい。とろみダシを掛けたごはんが食べられるようになったら、カレーライス、ハヤシライス、ホワイトシチューなども食べられるようになりました。茹でた根菜もだんだんと食べられるようになったので、カレーに入れた野菜も大丈夫です。でも、肉はまだ難しいので、ミンチを使って作ります。

 

Q.お米以外に、麺類はどうでしたか?

A.ソバ、ラーメン、そうめん、冷やし中華も、ハサミで切ると食べられるようになりました。次は、とろみダシごはんのダシをだんだん減らしていき、ごはんだけで食べられるように練習中です。

 

入園7カ月で、給食の時間内に完食できるように

Q.どのくらいで、給食を完食できるようになりましたか?

A.10月ごろまでは、すり潰した柔らかい給食もなかなか食べられませんでしたが、11月になると私がすりつぶした柔らかい給食なら、給食の時間内に食べ終わるようになりました。飲み物は、まだコップやストローは難しいのでスプーンで飲ませています。入園したばかりのころ90分くらい掛けて食べさせていた給食を、今では50分くらいできちんと食べられるようになったのです。

 

Q.家でも食べられるようになりましたか?

A.誰もがそうと聞きましたが、幼稚園でお友だちと一緒のときは食べられるのですがが、家では甘えて食べられなかったりします。ユキトは、同級生に比べて成長発達に時間がかかるのでまだまだ大変ですが、マイペースで頑張っていきたいと思います。全く食べられない状態で入園しましたが、7カ月で柔らかい給食を食べられるようになったことは、本当に先生方に感謝しています。

 

ダウン症の基礎知識27:食事の味付けや食感などを工夫して

これまでミルク、ヨーグルト、プリンなど、噛まずに飲み込めるものしか食べられなかったユキトくんですが、「すり潰す」「細かく切る」「味付けに変化を付ける」などの工夫をすることで、柔らかかい給食を時間内に食べられるところまできました。ゆっくりでも着実に前進していることが分かり、ナナさんも前向きです。ダウン症の子は舌が少し大きく、反射的に舌が出やすく、スプーンを押し出してしまいがちだそう。また、好きなもの、食べやすいものに偏ってしまう傾向も。それでも根気よく、いろいろな食べ物を何度も食べさせて、慣れさせていくことが、食事の練習の大事なステップですね。

 

 

ナナ

5歳のダウン症の息子「ユキト」と、3歳半の弟「マサト」のママの「ナナ」と申します。ダウン症の子どもを育てている様子や、母親の気持ちなどを率直にお話ししたいと思います。