暮らし

【ダウン症児と私20】弟が同じ発達段階に、兄弟間の嫉妬に板挟みのママ

2歳4カ月のユキトくんが幼稚園に通い始めた春、弟のマサトくんは1歳になる目前。今回は、成長著しいマサトくんがユキトくんに嫉妬し、食事のジャマをするようになってしまった時期のお話を聞きました。あっと言う間に、発育段階が同じくらいになったマサトくんとユキトくんの2人の子育てに、ナナさんは板挟みになってしまいます。

弟はあっと言う間に成長し、まるで双子のように

Q.弟のマサトくんの成長は、ユキトくんよりも早く感じたのではないでしょうか。

A.マサトは、6カ月になると離乳食を始めました。ユキトが2歳のころです。ユキトも形のあるものはまだ食べられなかったので、2人におかゆをあげる日々が続きました。やがて弟もハイハイをはじめ、発達段階がユキトとほぼ一緒になり、同じおかゆを食べ、まるで双子を育てているようでした。弟の離乳食は、始めは1日1回でしたが、やがて1日2回、そして1日に3回と、だんだん大変になりました。マサトの成長は早く、あっという間に首がすわり、お座りをしてハイハイと、育児書どおりにできるようになりました。それが普通のスピードなのですが、私は今でも、弟の成長は早いと感じてしまいます。

 

弟のマサトくんは、お兄ちゃんのユキトくんに嫉妬

Q.ユキトくんが2歳になった4月から通い始めた幼稚園は、ナナさんも一緒に通う母子通園でしたが、その間マサトくんはどうしていたのですか?

A.幼稚園は週に2回の午前中で、療育施設では運動や食事の訓練もしていました。さらに回数が減ってきたものの、まだまだ病院通いもありました。わたしがユキトと出掛けるとき、弟はいつも義母へ預けていました。

 

Q.マサトくんは1歳くらいになると、好奇心が旺盛になってきたのでは?

A.2歳半でも未だに赤ちゃんみたいなユキトとは違い、マサトは1歳前には、回りのことや状況を理解するようになり、わたしをママと認識するようになりました。ユキトは、私が弟へ食事をあげることに関心がありませんでしたが、マサトは、私がユキトに食事をあげるとき、ヤキモチを焼くようになりました。ユキトへおかゆをあげようとすると、マサトは大泣きして、わたしとユキトの間に入り込んで邪魔をしたり、ユキトのおかゆをわざと床に落としたり、持って逃げたりするのです。それが1日3回の毎食で起こるようになりました。

 

Q.そんな弟の態度に、ユキトくんの反応に変化がありましたか?

A.ユキトは、幼稚園に通い始めた春ごろはおかゆを食べていましたが、弟が毎回毎回邪魔をして大騒ぎになるので、段々と食べなくなってしまいました。口に入れたおかゆを手で出して泣いてばかり。ほとんどおかゆを食べなくなっていました。代わりにプリンやヨーグルトをなんとか食べさせ、1日に5回ミルクをあげるようになりました。

 

心労が絶えないナナさん、翌年の幼稚園進級も赤信号

Q.ユキトくんが食べないと、ナナさんも心配ですね。

A.ユキトは日に日に、お粥や離乳食を食べられなくなってしまいました。そのころの私は、心配を通り越して、ノイローゼのようになっていました。9月には、通っている遺伝科の先生に相談して、食事専門外来の予約をしましたが、予約が先までいっぱいで、実際に見てもらえるのは3カ月以上先の12月になると言われました。「3カ月頑張ったらこの状況から抜け出せる」と自分に言い聞かせ、食事時間は辛くて泣きながら毎日を過ごしました。

 

Q.弟さんと離れている幼稚園ではどんな様子でしたか?

A. 実は、10月に幼稚園の先生からお話があり、「ユキトくんは食事が食べられないので4月からの進級が難しく、別の幼稚園を探して欲しい」と言われました。私は「3月までに食べられるようにするので、もう少し待ってください」とお願いをしたのですが、難しいと判断されてしまいました。幼稚園は柔らかい給食が出せず、普通食のみの提供なので、柔らかい給食を出せる幼稚園へ移って欲しいということでした。

 

Q.ユキトくんの食事についてはサポートが必要な状況だったのですね。新しい幼稚園を探されたのですか? 

A. はい。運動や食事の訓練で通っている療育施設のケースワーカーさんに相談しました。進級断念を告げられた10月の時点では、ほかの幼稚園ではまだ正式な募集が始まっておらず、12月まで待つ必要がありました。次の幼稚園が決まらず、食事専門外来の診察を待っていた2カ月間は本当に苦しかったです。ヤキモチを焼いて邪魔をするマサトをユキトから引き離して、泣きながらおかゆをあげても、ユキトは口に手をいれておかゆを出すという毎日の繰り返しでした。私にとっては、今、思い出してもとても辛く苦しい日々でした。

 

ダウン症の基礎知識20:専門家への相談と巻き込みで解決

ダウン症の赤ちゃんは口の力が弱いため、母乳やミルクの飲みが悪く、離乳食の開始が遅れたり、離乳食も流動食や子どもの好きなものしか食べないなど、食事に関する苦労話がよく聞かれます。いろいろな食べ物を自分で食べられるようになるには、食べる楽しさや自分でできる楽しさを感じることも重要ですが、今回のように兄弟間の嫉妬などで楽しい食事時間が過ごせなくなるということも影響を与えてしまいます。ナナさんはとても辛い半年を過ごされましたが、遺伝科の先生やケースワーカーさんにも、その都度相談をしていました。専門家のアドバイスを聞くことで解決策が見付かったり、気持ちが軽くなることもあるので、諦めずに周りに助けを求めたり巻き込みながら乗り越えることが重要ですね。

 

 

ナナ

5歳のダウン症の息子「ユキト」と、3歳半の弟「マサト」のママの「ナナ」と申します。ダウン症の子どもを育てている様子や、母親の気持ちなどを率直にお話ししたいと思います。