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【ダウン症児と私15】予定時間を過ぎても終らない手術と「中耳炎」のその後

「滲出性中耳炎」が原因で、耳が聞こえていなかったユキトくん。今回は、耳にチューブを入れる手術のため、前日から入院したユキトくんのその後について、伺いました。前日の夜にユキトくんが食事を食べられなかったことを知ったナナさんは、手術の朝を不安な気持ちで迎えました。

 

予定時間を過ぎても終らない手術

Q.手術当日は、ご主人と病院へ行かれたのですね。

A.はい。朝病院へ行って、主人と2人でユキトを手術室まで見送りました。不安でいっぱいでしたが、ここから先は、全て先生にお願いすることしかできませんでした。

 

Q.手術を待っている時間は、長かったのですか。

A.先生からの事前の説明では「手術は30分か40分で終わる簡単なものです」と言われていました。でも実際は、1時間経っても手術室から出て来なかったので、すごく心配になりました。1時間20分過ぎにやっと先生が出て来られて「無事に手術が終わりました。明日、調子が悪くなければ退院できます」と言ってくださるのを聞いて、やっと安心しました。時間を過ぎてしまったのは、ユキトが全身麻酔から覚めるのに時間がかかり、手術室の隣の処置室で対応していたそうで、ずっと見ていてくれたたんだと分かり、ホッとしました。

 

術後は病室での経過も順調、ミルクも飲ませる

Q.手術後、どのくらいでユキトくんに会えましたか?

A.結局、手術開始から1時間40分後にユキトが出て来ました。手術後は酸素マスク、心電図用の電極と、栄養を入れているという点滴を付けていました。その時点ではまだ完全には麻酔から覚めていないようで、朦朧としているように見えました。病室へ運ばれてから1時間ほど経つと目を覚ましたので、酸素マスクを外してもらいました。そのあと、心電図の数値もかなり安定していたので、心電図の電極も外してもらいました。段々と覚醒してくると、少しずつ寝返りを打ちだしました。

 

Q.食事をせずに手術をしたので心配でしたよね。手術後の食事はいつから食べられるようになりましたか?

A.寝返りを打つようになってから、看護師さんに許可を取ってミルクを100cc飲ませました。まだ点滴をしていたので、ミルクを飲ませる間も点滴している手を寝返りで体の下敷きにしないように、常に注意していました。本人が落ち着いていたので、少し休憩をしてから残りのミルク100ccもあげました。200cc全部飲んで吐き戻す様子もなく大丈夫そうだったのを確認してから、点滴を外してもらいました。繋がっているものが全て取れれたときは、さらに安心しました。

 

夕食の「ペースト食」が食べられず、翌日は「柔らか食」へ

Q.ミルクが飲めて安心しましたね。夕食の様子はどうでしたか?

 

A.夕食は、前日「柔らか食」が食べられなかったために、自動的に「ペースト食」へ変わっていました。でもペースト食は、固さがほとんどない液体のような状態だったので、柔らかすぎてユキトには飲み込めず、あまり食べられませんでした。そこで看護婦さんへ、「明日の朝食は私が食べさせるので柔らか食へ戻してください」とにお願いしました。ユキトは市販のベビーフードのお粥や、プリン、ヨーグルトが好きで、ドロッとした形状の食べ物を好むため、ペースト食ではゆるすぎだったのです。一方お茶やジュースなどの飲み物は、コップもストローも使えず、スプーンであげても口から出てしまう状態でした。3才になった今でも、ミルク以外の液体をあげるのには苦労しています。

 

いよいよ退院の日、ユキトくんはプリンを食べて笑顔に

Q.翌日は退院できましたか?

A.はい。問題なく、手術の次の日に退院しました。退院前には、私が朝食の「柔らか食」をフォークの裏で潰しながら、なんとか半分くらい食べさせました。ユキトが食べられる固さは、ちょうど「ペースト食」と「柔らか食」の中間の固さなのですが、病院食にはなかったので苦労しました。病院は、食べ物も飲み物も持ち込みが禁止されているので、辛かったです。ですが唯一、ミルクの回数や量が制限されていなかったので、食事が食べられない分、私は何度も何度もユキトにミルクをあげました。離乳食を満足に食べていなかったからか、ユキトはだんだん元気がなくなっているように見えました。とりあえず早く退院させたいと思い、退院診察では「すごく元気です」と言って退院手続きを取り、入院病棟を出たところにある売店へ直行してプリンを買いました。ユキトはプリンをパクパク食べてくれ、やっと笑顔が戻りました。

 

術後も問題なく、経過観察へ

Q.術後の経過はどんな感じでしたか?

A.手術の直後は、1週間以上両方の耳から血や膿が出ました。処方された点耳薬を、1日2回耳に入れていました。1カ月後に耳鼻科外来へ行き、経過を見てもらうと、手術は無事に成功し経過も問題なく、耳が聞こえるようになったと言われました。そのあとは、4カ月に1回の経過観察になりました。産まれて1年以上も音の聞こえない状態だったので、ユキトが話をし始めるのは、普通のダウン症児より遅くなるだろうと言われました。でも、マイペースに見守りたいと思いました。とりあえず、無事に手術が終わりホッとしました。

 

ダウン症の基礎知識15:ダウン症児の言葉の力

ダウン症児の子どもは、言葉の発達が遅い傾向があります。筋力が弱く口や喉が上手に動かせないので、自分の思ったとおりの声を出すのが難しく、言葉以外のコミュニケーション手段を用いたりすることもあるため、言葉を覚えるのが遅れてしまうのだそう。ユキトくんの場合は、さらに音が聞こえない状態が1年以上続いたため、言葉の発達が遅れることが予想されました。とは言うものの、言葉を覚えられないわけではないので、ナナさんとユキトくんのように子ども自身のペースで、根気よく話しかけながら子どもの成長を見守っていくことが必要なのです。

 

 

ナナ

5歳のダウン症の息子「ユキト」と、3歳半の弟「マサト」のママの「ナナ」と申します。ダウン症の子どもを育てている様子や、母親の気持ちなどを率直にお話ししたいと思います。