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【和菓子歳時記11】茶席を彩る、冬の花「山茶花(サザンカ)」の上生菓子
2016年 11月 17日 11:30
立冬を過ぎ、山茶花(サザンカ)が咲き始め、いよいよ冬を迎えますね。今回は、初冬の花「山茶花(サザンカ)」とお茶室の関係、形どった上生菓子をご紹介します。山茶花は、童謡「たきび」に歌われ、お庭や学校の生垣にも植えられている身近な花。日本原産で江戸時代にヨーロッパへ広まり、英語名もsazanqua(サザンカ)で日本語と同じ名前です。
もともとは白い花、江戸時代に赤色や桃色など華やかに
秋の終わりから冬にかけて咲く山茶花(サザンカ)は、日本原産のツバキ科の植物で、野生種の山茶花は、九州や四国から沖縄へかけて分布しています。もともとは一重咲きの白い花でしたが、江戸時代の初めごろから八重咲きや桃色や赤色など華やかな園芸品種が作られました。冬から春にかけて咲く椿と同じツバキ科で見た目も似ていますが、花の散り方に違いがあります。山茶花は花びらが個別にパラパラと散りますが、椿は首の部分から花全体が一体となって落花します。そのため、椿は縁起が悪いと言われることもあります。
茶室を飾る「茶花」に、山茶花は使わない!?
山茶花は10~12月に開花し、初冬の季語として使われます。樹々の緑が減って寂しくなるころに咲く貴重な花ですが、名前に「茶」の文字が入っているので、文字の重なりを避けるために、茶室へ飾る茶花としては使わない茶道家もいるそうです。同じツバキ科の茶の木(チャノキ)も冬に小さな白い花を咲かせ、こちらも同じ理由で茶花に用いられることは少ないようですが、茶室のお庭や生垣へ山茶花やチャノキが植えられていることは多く、初冬に可愛らしい花を咲かせています。
冬の景色に彩りを添える可憐な山茶花は、主菓子として茶席へ
茶花としては避けられがちな山茶花ですが、初冬の茶席の主菓子(上生菓子)としては多く使われます。薄い桃色に染めた練り切りあんを茶巾絞りにした丸みのある形は、寒さのなかに咲く可憐で優しい力強さを表しています。茶道のお稽古など、冬の茶席で使う茶道具や茶室のあつらえは枯葉や霜など暗い色が多いので、明るく優しい色の山茶花の主菓子は茶席に彩りを添えます。
生菓子の「山茶花」に茶巾絞りでチャレンジ
山茶花の和菓子は茶巾絞りなので、手軽に作ることができます。食紅で薄い桃色に染めた練り切りあんを薄手の布巾で包んでぎゅっと絞り、真ん中をくぼませます。ザルなどでそぼろ状にした黄色い練り切りをくぼみに乗せ、おしべに見立てます。葉は羊羹の型抜きを乗せていますが、バランなどを葉の形に切り抜いて貼り付けても可愛くできます。練り切りあんを手作りするときは、白あんの1/10の重量の白玉粉を水で溶いて白あんと混ぜ、弱火にかけながら鍋底で粘りが出るまで練り、冷ましてから使います。出来立てのあんは熱いので火傷に注意して下さいね。ネットでも多くのレシピが見つかりますよ。
まとめ
毎年、山茶花の開花で冬の到来と年末が近づいていることに気づきます。山茶花の花言葉は「困難に打ち勝つ」ですが、そのほか「ひたむきさ」「謙遜」などもあり、強さだけでなく優しく健気な様子もイメージできますね。寒さのなかで綺麗な花を咲かせる山茶花に負けないように、体調を管理して本格的な冬と年末年始を迎えましょうね。