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【これからは予防の時代22】いろいろな乳ガン検査法と、その効果

これまで、乳ガン検査法法としてメジャーな「マンモグラフィ検査」と「超音波検査」について、そのメリットとデメリットについてお話してきました。今回は「視触診」も含め、年代別に有効性をお話します。また最後に出てくる「J-START」は、マンモグラフィ検診単独の場合と、マンモグラフィと超音波検査を併用した場合の有効性を検証するために、厚生労働省の立ち上げたプロジェクトです。

 

日本での乳ガン検診の歴史と視触診

乳ガンの検診方法として、日本では1987年度から視触診単独検診が導入されました。しかし、視触診が単独で導入されたのは世界でも日本だけなのです。視触診単独での乳ガン検診は、患者に不利益が及ぶ科学的根拠があるので、実施しないよう推奨されています。視触診の感度は27.6%という報告もあります。

 

視触診の単独での検診の有効性

国立癌研究センター癌予防検診研究センターから発行された「有効性評価に基づく乳癌検診ガイドライン2013年版」によれば、視触診単独では十分な研究がされていないため、死亡率の減少効果を判断できないということです。そのため、検診による利益と不利益のバランスが判断できず、住民検診などの対策型検診としての実施は勧められないのです。

 

50代と40代へのマンモグラフィ検診の有効性

50歳以上の女性に対して行なわれているマンモグラフィでの乳ガン検診は勧められますが、利益と不利益の両方の情報を患者へあらかじめ提供する必要があります。

 

40歳代女性に対してのマンモグラフィ検診も勧められますが、利益のほか、さまざまな不利益について、50歳代に対するより詳細な情報を提供する必要があると言えます。

 

乳ガン罹患が最も多い40代のガン発見率を上げるために

出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」

 

我が国における乳ガン罹患のピークは40歳代後半なので、40歳代のマンモグラフィ検診の有効性は、相対的に高いと言えます。さらに我が国で乳ガンに罹患するのは40歳代が中心で、以前お話したとおり、まだ乳腺密度が高い年代のために、マンモグラフィによるガン発見率が十分とは言えません。そこで、厚生労働省によるJ-STARTという「乳ガン検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験」が進行しています。J-STARTについては、次回ご説明します。

高濃度乳腺では、マンモグラフィより超音波検査が有効

超音波検査は、マンモグラフィや触診で異常を検出できない患者へは勧められます。乳房濃度が上昇すると、乳ガン発症率も上昇しますが、反対にマンモグラフィでの乳ガン検出率は低下してしまいます。マンモグラフィで乳房が高濃度だった場合に限って、超音波検査を追加すると、乳ガンの検出率が17%増えたという報告もあるのです。

 

早期やしこりが小さい乳ガンにも超音波検査が有効

さらに、まだ早期だったり、しこりの小さい「非触知性乳ガン」では、超音波だけで検出される乳ガンが22%を占めるという報告もあります。またマンモグラフィに超音波を追加することで、非触知性乳ガンの検出率が69%から88%に上昇したという報告もあるのです。

 

参考文献:「乳ガン診療ガイドライン 疫学・診断編(2015年版)」日本乳癌学会

 

高島裕一郎(医学博士)

予防医学を専門としている医師です。医療の高度化でさまざまな病気の原因がわかるようになりました。これは同時に、いろいろな病気を予防することができるようになってきたことを意味します。生活習慣病やガンなど、生活のなかで予防のできる病気と、その予防方法について、お伝えしていこうと思います。日本医師会認定産業医、日本人間ドック学会認定医。