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【ダウン症児と私14】小さな身体で全身麻酔、中耳炎の手術を受ける
2016年 11月 9日 11:30
生後6カ月で「滲出性中耳炎」と診断されたユキトくんは、1歳2カ月目に、耳にチューブを入れる手術を受けることになりました。手術は通っている小児医療センターで受けることになり、前日から入院することに。普段から、ユキトくんを食事させるのに苦労していたナナさんでしたが、手術当日には不安が的中。手術直前になって、さらなる不安を感じることになってしまいました。
早く手術を受けさせたいものの、全身麻酔への不安も
Q.念願の手術でしたが、不安はありましたか?
A.「手術中に、もし何かあったらどうしよう」という、もの凄い不安がある一方で、手術が成功しないとユキトの耳は聞こえないし、話もできないと焦る気持ちがありました。「音のない世界はどんな感じだろう」「何も聞こえなくて寂しくないのだろうか」「怖くはないのだろうか」という疑問が湧きましたが、それよりも「何でユキトを健常な体で産んであげられなかったんだろう」「どうして聞こえる耳で産んであげられなかったんだろう」と止めどない問いと、何とかして聞こえるようにしてあげたいという気持ちが交錯して、手術の成功を祈りながら、震える手で手術を承諾する書類へサインしました。ユキトを見てくれる病棟の看護師さんには、ユキトを妊娠したときからそれまでの病気、体調、生活面のことをできる限り伝えました。
ユキトくん入院中の最大の不安は「食事」
Q.ユキトくんは普段から食事に苦労していましたが、入院中の食事に心配はありましたか?
A.普段のユキトはベビーフードのおかゆを1時間かけてやっと食べられるという状態でした。食事が苦手なユキトは、おかゆをあげても口に自分の手を突っ込んで出してしまうため、ユキトの手を固定して、何とかおかゆを口に入れるのが日常でした。そんな状態なので、私がいないときのユキトの食事がとても心配でした。そのころ私は、ユキトの弟を妊娠中で長時間ユキトに立ち合えなかったのです。
Q.ユキトくんの食事は、病院に任せなければならなかったのですね。
A.はい。入院中の食事は全て管理されているので、病院から出された食事以外は、食べさせることもできず、水を持ち込むことも許されませんでした。入院中の食事は、食材をドロドロになるまで潰した「ペースト食」と、おかゆや潰したおかずの「柔らか食」を選ぶことができました。ペースト食だと液体のようにだらだらしてしまうことと、療育センターで潰したおかずを食べる練習中だったこともあり「柔らか食」をお願いしました。
手術前日は、先生を待ちながら、ユキトくんをお風呂へ
Q.前日入院をされましたが、どんなことをしたのですか?
A.朝8時半に受付を済ませて、入院前検診を受けました。熱を測り、問診をしたあと、以前先生から聞いていた全身麻酔の説明をもう一度聞きました。手術の承諾書など関係する書類にサインをしてから、入院病棟に案内されました。入院病棟は両親以外の立ち入りが禁止されていたので、祖父母は入ることができません。入院手続きが済んだら帰れると思っていたのですが、「ほかの患者さんもいるので何時になるか分からないけれど、主治医の先生から手術の説明が終るまで病院でゆっくりしながら待っているように」と言われてしまい、朝早くに私たちを送ってくれた義母には、そのまま何時間も病院で待ってもらうことになってしまいました。
Q.待ち時間は何をしていたのですか?
A.時間ができた私は、ユキトをお風呂に入れることにしました。というのも、慣れない看護婦さんに慣れないお風呂へ入れてもらっても、ユキトは泣き叫ぶだけだろうと思い、自分でユキトをお風呂に入れることにしたのです。のけぞるユキトを落ち着かせ、耳に水を入れないように頭や体を洗うのはかなり大変でしたが、頑張りました。お風呂から上がると、ちょうど主治医の先生が来てくださり、手術の説明を聞き、翌朝9時から1番に手術を受けることが決まりました。義母を長時間待たせていたこともあり、私は説明を聞いてすぐに帰りました。
食事していないユキトくんの状態に不安を感じながら手術室へ
Q.当日、手術はスムーズに始まりましたか?
A. 手術当日、主人も休みを取って2人で病院に向かいました。病院に着くと、ユキトが前日の夕食を全く食べられなかったと聞かされました。入院病棟には、看護師さんとは別に、子どもの食事とオムツ替えを担当する方がいるのですが、病棟に2人しかいないということでした。入院しているたくさんの子どもに食事をあげるわけなので、口に手を入れておかゆを出してしまう子に時間をかけられるはずもありません。私の予想通り、ユキトは一口も食べていませんでしたが、私が朝行ったときはもう全身麻酔の直前なので、ミルクを飲ませることもできませんでした。
麻酔前は食事が禁止されますが、実は、前日の17時までは食事ができました。でも前日は、待たせている義母のことが気がかりで急いで帰ってしまったので、ユキトに私が食事を食べさせてあげられなかったことが悔やまれました。この状態で手術させるのは不安でしたが、ここで口を出して手術ができなくなっても困るので、手術室まで黙ってユキトを見送りました。
ダウン症の基礎知識14:滲出性中耳炎
耳の中に膿や水が溜まり、耳の聞こえが悪くなる「滲出性中耳炎」はダウン症に限らない病気ですが、ダウン症では耳管の粘膜や機能が弱いため半数以上に見られ、治癒にも時間がかかることが知られています。全体として発症の年齢は、3~6歳ごろが多いと考えられていましたが、現在では乳幼児期から発症しているのに、子どもが症状を訴えないために見過ごされているケースがあると考えられています。ダウン症に限らず、小さい子どもは症状を訴えないことが多いため、「呼んでも返事をしない」「テレビのボリュームを上げても反応をしない」など、耳の聞こえに疑いがあると思ったら、耳鼻科を受診するようにしましょう。