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【ダウン症児と私9】心身の発達を促す「ダウン症グループ外来」へ

小児専門の総合病院で、遺伝科を始めとする専門科で診てもらえることになったユキトくん。今回は、ダウン症グループ外来へ参加したときのお話です。いよいよ、寝返りを促す介助を皮切りに「療育」が始まります。親を始めとする周囲が働きかけをしていくことで、ダウン症児にはできないとされていた認知、運動、言語の力を最大限に引き出していきます。

育児に役立つ情報を教えてくれる「ダウン症グループ外来」

Q.ダウン症のグループ外来とはどんなものですか?

A.新生児から2歳くらいまでのダウン症と診断された乳児をもつ家族を対象にした、育児に役立つ情報を教えてくれるプログラムです。このプログラムは月に1度行なわれていて、遺伝科の紹介があればいつからでも参加できるようになっていました。内容は、赤ちゃんとの遊び方、食事指導、運動発達を促す体操といった療育プログラムなど、毎月テーマが決められていて、テキストを使いながら勉強していきます。療育とは、子どもの認知、運動、言語の力を、周りからの働きかけで最大限に引き出すプログラムです。

このグループ外来、遺伝科の診察、ダウン症の母の会のほか、耳鼻科、循環器科、泌尿器科、歯科、眼科と、ユキトと一緒に出かける機会が増えたことが、忙しいですが私には嬉しかったです。

たくさんのダウン症児がいると知った初めてのグループ外来

Q.グループ外来へ初めて参加されたときのことを教えて下さい、何人くらい参加されていましたか?

A.私とユキトは、退院後初めて総合病院へ行った翌月の6月から、ダウン症のグループ外来に参加しました。受付ですごく並んでいて、部屋に入るとたくさんの人で満席でした。ダウン症の赤ちゃんが40人くらい、その親も40人くらい、先生が10人ほど。世の中には、こんなにたくさんのダウン症児がいるのだと、驚きました。
プログラムは4月から始まり、前年度に生まれた子どもたちが、一緒に遊びながら勉強します。ユキトは6月からの途中参加でした。
4月生まれでもうすぐ一歳になる大きい子から、3月生まれで生まれて数カ月の小さい赤ちゃんまで、いろいろな月例の子がいました。部屋に入ると住んでいる地域ごとに座る席が決められていて、近所の赤ちゃんが同じテーブルへ集まるようになっていたので、連絡先を交換してお友だちになりました。

 

微笑ましい雰囲気のなか、発達を促す運動を勉強しながら実践

Q.先生が10人くらいということでしたが、どんな先生がいらっしゃったのですか?

A.遺伝科やほかの科の先生、理学療法士、作業療法士、臨床心理士が参加していました。内容によっては、栄養士、歯科衛生士さんが食事や歯磨きの指導してくれる回もあります。

 

Q.1回何時間で、どのような流れのプログラムでしたか?

A.1回のプログラムは1時間でした。例えば、先生がオルガンを弾いて、親子みんなで集まって歌を歌い、手遊びをしたあと、ダウン症の基礎知識の勉強会がしっかりあって、最後は親子でマッサージをして終了といったプログラムです。リトミック教室のような微笑ましい雰囲気でした。

また赤ちゃんの足を回して、軽い運動、寝返りを促したり、うつ伏せに寝かせてハイハイを促したりといった介助方法や、発達促進の運動も習いました。でも、ゼロ歳のダウン症の赤ちゃんは筋肉が弱く、その動きができる子はほとんどいなかったので、テキストでの勉強になりました。

 

合併症の治療も、グループ外来と並行で

Q.遺伝科とグループ外来と平行して、合併症の精密検査も受けていたそうですが、何か進展はありましたか?

A.ユキトは耳が聞こえていないという診断があったので、耳鼻科でABRという聴力の精密検査をしてもらいました。赤ちゃんは動いてしまうのでオレンジシロップの睡眠薬を飲ませてから、眠った状態で音を聞かせて脳波を検査します。検査結果、両耳ともかなり聞こえが悪いことが分かりました。滲出性中耳炎で、耳の中に膿や水が溜まった状態のため、聞こえが悪くなっているのだろうと言われました。治療法は全身麻酔をかけて、手術で膿などを取り除いたあと、両耳へチューブを入れて、耳の中へ膿が溜まらないようにするというものでした。全身麻酔をするので、心臓への負担もあり、手術は1歳を越えてから行なわれることになりました。

 

離乳食の開始は、一般と同じ半年後から

Q.そのころのユキトくんの様子は、どうでしたか?

A.ユキトは、生後5カ月半。普通だったら首が座っている月齢ですが、筋肉が柔らかく、まだまだ時間がかかりそうでした。ダウン症の赤ちゃんは成長のスピードがかなりゆっくりしていますが、離乳食をはじめる時期は、健常の赤ちゃんと同じ生後6カ月からでいいそうです。スタートの時期はみんなと同じですが、食べられるようになるまですごく時間がかかりそうなので、のんびり頑張ろうと思いました。

 

ダウン症の基礎知識9:ダウン症グループ外来

ダウン症のグループ外来は、子どもの心身の発達を促す介助法や、子育てに前向きに取り組むための情報を提供するプログラムとして、導入している小児総合病院がいくつかあります。内容は、病院ごとに若干異なりますが、半年から1年ほどグループで参加するプログラムのため、ダウン症児を育てている親同士が交流でき、孤独感を軽減させる場にもなっています。以前なら、「ダウン症児にはできないだろう」と思われていたことが、早期療育や細かな指導で「できる」ようになることが知られています。「1人で寝返りはできない」「ハイハイはできない」と考えず、早い段階から、寝返りやハイハイなどの動作のサポートを繰り返すことで、1人でも寝返りやハイハイができるようになっていきます。そういったことを、親子で学ぶ場のひとつが、グループ外来です。

 

 

ナナ

5歳のダウン症の息子「ユキト」と、3歳半の弟「マサト」のママの「ナナ」と申します。ダウン症の子どもを育てている様子や、母親の気持ちなどを率直にお話ししたいと思います。