老師オグチの家電カンフー

女子ウケする雑貨家電・ガジェットの条件は「カバでした」

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
MOTTERUのモバイルバッテリー「MOT-MB5001」(7月下旬発売予定)。容量5,000mAhで、重量は約98gと国内最小最軽量。さらさらとした触り心地で、カラーはくすみカラーの計6色。カラーの選定には、化粧品のパッケージなどのトレンドを常に注視しているという

家電やガジェットの「雑貨化」が進行中です。世の中の約半分は女子であり(諸説あります)、当然の流れとも言えますが、ここで改めて女子ウケする家電やガジェットの条件を抽出してみました。それは、カラバリ、バリュー、デザイン、質感、単機能の5つで、頭文字を並べると「カバでした」です。順番に解説していきましょう。

・カラバリ
雑貨で最も大切だと思われるポイントはカラーバリエーションです。雑貨っぽく見せるには、最低でも3色ぐらいは欲しいところ。ここ2~3年のトレンドは「くすみカラー」で、パキッとした原色ではなく、灰色がかった彩度の低い色が人気となっています。落ち着いた色なので、成人男性にも取り入れやすい色ではないでしょうか。

レコルト「プレスサンドメーカー ミニ」。1枚の食パンで作れるホットサンドメーカー。小ささ=かわいさで正義。この色「ペールブルー」もくすみカラー

・バリュー(お値打ち価格)
雑貨が女子に人気なのは、ぱっと見てかわいいと思った時に、衝動買いできる価格にもあります。最近は、スマホ関連のガジェットも3COINSなどで、低価格で購入できるようになりました。家電も、数千円台の製品は雑貨化が進行中で、インテリアショップなど家電量販店以外の販路が開拓されつつあります。

・デザイン
女子ウケするかわいいデザイン。具体的には丸みをおびていて、親しみやすさが感じられること。また、コンパクトであることも重要です。これまで高機能や高性能を追求してきた日本の家電製品ですが、雑貨化を目指すのであれば機械っぽさはなるべく排除したいところです。

象印マホービン「電気ケトル CK-DB08」。容量0.8Lとコンパクトで丸みをおびた形がかわいい

・質感
デザインと同時に気を付けたいのが、質感です。雑貨は手に取って使うので、触り心地が重要。さらさら、ふわふわした質感のものを女子は本能的に好みます。赤ちゃんの肌や、犬や猫を触っていると心が落ち着きますからね。

雑貨とは言えないが、人に愛されるために開発された「LOVOT(らぼっと)」は、機械っぽさがないロボットで、女子ウケする雑貨に通じるものがある

・単機能
雑貨に難しさは禁物です。家電であれば、使いやすさに直結する単機能が、雑貨化にはマスト。ボタンが多く操作が複雑そうなのはかわいくない。機能をシンプルにすることで、ボタン類が減らせてデザイン的にもすっきり、かわいく見せることができますし、価格も抑えられます。

以上、女子ウケする家電・ガジェットの条件でした。でもまぁ、言うほど簡単ではないと思います。例えば、カラバリを増やすとなると、そのぶん在庫リスクが増えるので、どの色がどのぐらい売れるかの見極めが必要となります。

この点で、先日びっくらこいたのが、夢グループのテレビショッピングです。自転車用のヘルメットだったんですが、石田社長が「とっても軽くてオシャレ!」と独特の猫なで声で言うのを「夢グループほど、オシャレの対極にある通販もないわな」とか思いながら観ていました。

カラーは、ホワイト、ブラック、ネイビー、ダークグレーの4色(なぜかサイトでは7色)。そして、最後の決めゼリフが、「色おまかせで半額の2,990円にしまーす」。その手があったか! と度肝を抜かれました。

小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>