老師オグチの家電カンフー

つまらない請求書郵送を楽しくする「オリジナル切手」

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
オリジナル切手を封筒に貼る。受け取った人はどんな顔するんでしょうか

請求書の送付もメールなどオンラインが当たり前になってきています。こんなのデジタルトランスフォーメーション(DX)以前の話だと思うのですが、今でも原本の郵送を求めてくる会社があります。めんどくせーなあ、とぶつぶつ言いながら、プリントして捺印して、封筒に宛先貼って、いそいそとポストまで投函しに行くわけですよ。帰りにコンビニに寄ってビールとつまみを買って帰ったりして。

郵便って昔はもっとワクワクする存在でしたよね。昭和の時代には切手ブームがあって、発売情報をチェックして買いに行ったりしました。中には1枚100万円を超える切手もあったりして、今の仮想通貨みたいなワンチャン狙いの投資でもありました。

そんな切手に夢が持てた時代の人間なら、オッ! となるのが、日本郵便の「オリジナル切手作成サービス」です。写真やイラストをアップロードするだけで自分だけの切手が作成できるんです。郵政省時代には考えられなかったサービスですよ。これなら請求書の郵送作業も楽しくなるのではと、さっそく注文してみました。郵便にワクワクを取り戻す!

日本郵便「オリジナル切手作成サービス」

枚数や額面(63円・84円)、レイアウトなどいくつかのタイプが用意されています。一番安いのは、63円と84円の切手が1枚ずつのセットで1シート300円。一番コスパが良いのは、84円切手30枚のシートで2,940円(1枚あたり98円)。これに送料が別途かかります(30枚のシートだと520円)。ちなみに、すべてシール式なので、貼る時に舌で舐めたりする必要はありません。

で、どんなオリジナル切手にするか。手っ取り早いのは自分の顔写真。ただ、そのままだと芸がないと、肖像画のように加工しました。イメージしたのは、1円切手。郵便の父、前島密(まえじまひそか)のように、色合いを茶色くイラストのような風合いにしてみました。

1円切手のように背景も塗ったバージョンも作りましたが、それはボツに。オリジナル切手作成サービスではフレームが付き、既存の切手のように写真全体が切手として仕上がるわけではありません。○円の印字はフレーム部分に入ります。日本郵便で発行される切手と区別するためか、偽造防止のためなのか。フレームに合わせて背景を白にした画像をアップロード、クレジットカードで支払いも完了します。

1円切手をイメージして作った画像。「オリジナル切手作成サービス」では白いフレームが付くので、こういうイメージにはならない
背景を白くしたパターンをアップロード。人物の画像を使用した場合は、肖像権の侵害を防ぐために、人物の名前や生年月日を入力する必要がある

注文してから3週間後、忘れていた頃にレターパックでオリジナル切手が届きました。自分の顔が切手として並んでいるのは奇妙な感じ。芸術好きには怒られるかもしれませんが、どことなくアンディ・ウォーホールの作品ぽくもある。複製と芸術のポストモダン、そして名も知らぬ一般人の肖像画切手になる、真の意味で郵便局の民営化が実現したのだなぁという感慨とともに、請求書を郵送します。

注文から3週間後に到着。自分の顔が切手として並んでいるのは奇妙な感じです
小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>