老師オグチの家電カンフー

人民の子供たちを矯正する謎の中華ハイテクペン

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです

 アグネス・チャンがテレビのCMで、「コドモに『勉強、勉強』言いたくないデスヨネ!」と言っているように「姿勢、姿勢」言いたくないですよね。言って直るもんでもないし。わが家の今年高校生になる息子も、むちゃくちゃ姿勢が悪いです。いわゆる猫背。小さい頃に武道でも習わしておけば良かったんでしょうかね。

 と、もはやあきらめていたところ、家電 Watch編集部から、子供の姿勢を矯正するペンが送られてきました。その名は、「正姿護眼筆」。翻訳ソフトによると発音は、「チェン・ツィー・フー・イェン・ピー」。メーカーは、福州林文電子科技有限公司。パッケージには開発者でしょうか、林文老師なる方の顔写真が入っています。ああ、老師つながりでウチに送られてきたんですね。

福州林文電子科技有限公司「正姿護眼筆」
ペン本体に加えて、油性ボールペン(黒、青)、ゲルボールペン(黒、青)、0.7mmシャープペンシルのユニット、シャープペンシルの替え芯、替え電池2個がセットになっている

 正姿護眼筆は、その名の通り、姿勢が悪くなるとペン先が凹んで書けなくなります。仕組みは、単純なのか複雑なのか微妙なところです。最初は、ペンの角度を検知しているのかなと思ったんですが、それだけではないみたい。

 よく見れば、カメラがペンのお尻に内蔵されています。そして、カメラは常に自分の方を向くよう回転。中国の監視社会はここまで来ているのか、恐るべし! というわけではありません(そもそもネットに繋がらないし)。どうやら、カメラが人影を見ていて、姿勢が悪くなるとペン先を引っ込める機構のようです。

金属製だが軽くて持ちやすい。軸の中央には林文老師の顔が。中国の小学生には有名人なんでしょうか
カメラが内蔵されているのがお分かりいただけるだろうか?
ボタン電池(CR927)で駆動する

 数週間ほど息子に使わせてみて、感想を聞いてみました。息子曰く、「軽すぎず重すぎない。使うときにキャップの置き場に困る(キャップがお尻に挿せない)。長時間書くと指が痛くなりやすい。でも持ちやすい」とのこと。

姿勢が悪くなると(頭がペンに近づくと)ペン先が引っ込んで書けなくなる

 彼は文具オタクなので、こんなコメントに。聞きたかった感想はそれじゃない。改めて、姿勢との関係について聞きます。

息子「頭が下がりすぎると書けない。持ち方によっては姿勢が良くても書けないことがある」

――持ち方?

息子「小学生とかがよくやるような、ヘンな持ち方」

 どんな持ち方なのか再現してもらった(写真)。その時わかったのは、ヘンな持ち方だと本人も気づかず姿勢も崩れていること。正しい持ち方って大事ですね。小さいお子さんのお持ちの親御さんは、鉛筆の持ち方をチェックしてください。

――で、姿勢は矯正されたの?

息子「かなり。最初は全然書けなかった。意識し始めて2~3日使い続けてからは、3時間に1~2回ぐらいしか書けなくならない」

 とりあえず、一定の効果はあったようです。しかし編集部からは「試用終わったら返却してください」と言われています。元の悪い姿勢に戻るようなら購入してみようかな。日本での販売はないようですが、中国のオンラインショップ「淘宝(タオバオ)」でチェックしたら、100元ぐらい。新型コロナがなければ買いに行っていたかもしれません。

息子の言うところの「小学生とかがよくやるような、ヘンな持ち方」
タオバオでは100元ぐらい(約1,600円)で売られている

【編集部注】
記事初出時、100円台と記載しておりましたが、正しくは100元台になります。お詫びして訂正いたします

小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>