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シャープのふとん掃除機がヒット! スタートは5,000匹のダニ飼育から

ダニ退治機発想のふとん掃除機。発売2カ月で34,000台を出荷

計画比3倍強の生産規模となっている「サイクロンふとん掃除機 Cornet(コロネ) EC-HX100」

 シャープが、5月21日から発売した「サイクロンふとん掃除機 Cornet(コロネ) EC-HX100」の生産が、当初計画の3倍強になっていることがわかった。

 同社では、当初生産計画を月5,000台としていたが、5月、6月の2カ月間の出荷台数は34,000台に達した模様で、2カ月間で1万台という当初計画を大幅に上回る結果となった。

 コロネはシャープ初のふとん掃除機で、「ふとん掃除機=ダニ退治機」というユーザーの意識を捉えて、ダニの生態を研究。同社独自の仕組みによって、ダニを吸い取ることができる点が、市場から高い評価を受けているという。

 シャープによると、ダニは強い風力で吸い取ろうとしても、鋭い爪で繊維にしがみつき、実際には取れないことが多いという。だが、40℃の熱を加えると、熱を嫌って逃げ出そうとする習性があり、この習性を利用して、ダニをしっかり吸い取るのがコロネの特徴となっている。

 コロネでは、40℃以上の温風を布団に吹き付け、逃げだそうとしてダニが鋭い爪を布団の繊維から外した瞬間に、1分間に約6,000回の高速振動が可能な「たたきパワーブラシ」と、強力な吸引力によって、ダニやアレル物質を除去する。

 温風は、掃除機内部のモーターなどで発生する熱を利用して作った業界初の「ヒートサイクロン」により発生。掃除機内部で発生する熱を利用するので消費電力も少なく、温風の温度が上がりすぎないように過熱防止機能も搭載。布団へのダメージも抑えられるという。

量販店店頭でのデモのために用意されたツール。本体の吹き出し口にあてて、40℃の熱で温風が出ていることを体感することができる

 また、吸い込んだダニは、遠心分離サイクロンの高速旋回気流によって、99%以上を死滅させ、ダストカップとフィルターはまるごと水洗いができるので清潔だ。

 さらに、シャープ独自のプラズマクラスターイオンを、枕の消臭にも活用。加齢臭や、生乾きの髪によって発生する臭いも消すことができ、温風により布団もふっくらさせることができるという。

「ダミ声と、ダニをかけた」ユニークなプロモーションを展開

シャープ 健康・環境システム事業本部ランドリーシステム事業部 副事業部長兼国内商品企画部長の檜垣整氏

 シャープ 健康・環境システム事業本部ランドリーシステム事業部 副事業部長兼国内商品企画部長の檜垣整氏は、「コロネは、梅雨入り前の時期に発売することを目指し、ふとんを外に干せないシーズン、ダニが繁殖しやすいシーズンに使ってもらえるようにした。量販店店頭でも、当社の研究によってわかったダニの特性を前提に、掃除機がダニを吸い取っていることを、映像を交えて紹介することで、コロネの特徴を伝えることができた点が、予想以上の売れ行きにつながっている」と語る。

 量販店でのビデオ放映のほか、地域販売店やJAルートといったシャープ独自の販路を通じた展開も功を奏しているという。

 また、ローカル局を中心とした情報番組での積極的な紹介、首都圏におけるJRトレインチャンネルでの告知、YouTubeを活用した告知なども認知度向上に貢献していると見ている。

 YouTubeを活用した告知では、プロレスラー・本間朋晃選手による「世界で一番聞き取りにくい新商品PR!!」と題して映像を配信。「ダミ声と、ダニをかけた」というユニークな切り口からの展開も行なっている。

 コロネの発売以降、赤ちゃんがいる家庭など、ふとんのダニが気になるユーザーのほか、アレルギー体質の人、あるいはふとんを干すことが重労働である高齢者などが購入の中心になっているようだ。

 また、先行するレイコップのドライエアブロー機能を搭載した上位モデルに比べて1万円以上安い価格設定や、アルミ合金製のモーターを採用。本体質量は2.4kgの軽量ボディを実現したこともプラス効果になっているという。

 「先行メーカーの製品を買いに来た人が、実際に商品を手にしてみたり、ダニを吸い取る機能や価格比較などによって、コロネを購入するといった例が相次いでいるとの報告がある」という。

 コロネは、中国で生産しており、現在、月産15,000台までの対応が可能。部材の調達において、この生産規模を維持できる体制が整っているという。

 年間生産計画は6万台としていたが、出足の良さを背景に、2倍規模となる年間12万台の出荷を目指すという。

ダニの飼育数、最大2万匹のダニ研究室を設置

シャープ八尾工場内に設置されたダニ研究室

 一方、同社では、コロネの開発のために、大阪・八尾の八尾工場内に設置したダニ研究室の様子を初めて公開した。

 同社では、2014年10月に、5,000匹のダニを購入。これを飼育して、ダニの生態の研究を開始した。ダニ5,000匹は、約5,000円の投資で済むというが、これを飼育するための環境整備への投資が必要。ダニを死滅させないため、餌としてドライイーストを与え、室温25℃、湿度50~70%で管理。これを守らないと、朝出社したときにはダニが死滅していたということになりかねないという。

 当初は、1~2週間でダニは死滅するといわれていたことから、追加で5,000匹を発注したが、社内に育成ノウハウが蓄積され、むしろ増加させることに成功。最大時には2万匹にまで増やすことに成功したという。

 これまでは実験室の片隅でダニの飼育をしていたが、今年6月からは、専用室を設置。ダニの生態や習性の研究にさらに拍車をかけることになる。

ダニを飼育するための設備とダニの生態を管理するためのカメラやPCが設置されている
ダニは手前の2つの容器のなかに入れられている
ダニが入った容器。5,000匹いるというが肉眼では見えない
加湿器の湿度は65%に設定されていた
ダニを飼育用の容器から移動させて、生態を研究
カメラでダニの様子を見る

 「ダニは一生に100個の卵を産むことや、5倍から10倍ものふんをすると言われている。生態を研究することで、ダニを増やさないためにはどうするか、ダニを死滅させるためにはどうするか、そもそもふとんにダニが付かないようにするにはどうするか、といったことにも研究テーマを広げ、次の製品づくりにも反映させたい」とする。

 これまではダニの習性を知ることに着目していたが、いかに死滅させるかという点にテーマが移れば、ダニそのものを増やすノウハウは研究室にとっても必要な要素となる。ダニの生態を知るところから生まれたコロネは、その成果が予想を上回る売れ行きへとつながっている。

 次の研究成果が、次期製品にどう生かされるのかがいまから楽しみだ。

大河原 克行