ニュース

ヤマハのガソリン発電機は「静か」「軽量」「長時間使える」

~静岡・掛川本社で説明会を開催

 ヤマハ発動機は26日、同社の発電機事業に関する説明会を、静岡県掛川市のヤマハモーターパワープロダクツ本社にて実施。ヤマハの発電機の運転音の静かさ、軽量性とコンパクト性、長時間使用できる点などをアピールした。

東日本大震災で発電機に注目が集まる。今後もゆるやかに需要が伸びる

説明会の会場となった、静岡県掛川市のヤマハモーターパワープロダクツ本社

 ヤマハ発動機はバイクや電動アシスト自転車などを製造するメーカーだが、子会社のヤマハモーターパワープロダクツでは、レジャーや非常用などで使用する発電機の製造を行なっている。発電機はガソリンを使って発電し、本体のコンセントに接続することで家電製品が使用できる。

写真は出力3kVAの「EF1600iS」。希望小売価格は207,900円
こちらはキャスターが付いた、出力2.8kVAの「EF2800iSE」
ヤマハモーターパワープロダクツでは、ゴルフ用のカートも販売している
ヤマハモーターパワープロダクツ 鈴木恒司社長

 ヤマハモーターパワープロダクツの鈴木恒司社長は、発電機事業について「先進国でのレジャー用途のほか、電力インフラが整わない新興国の地域に電力を届けること、災害時のバックアップとして役に立つ製品事業を目指している」を説明した。

 さらに、東日本大震災の被災地において、ヤマハ製品を含む発電機が役に立ったことに触れ、「震災以降も停電時の非常用として注目が集まっている」と、震災を期に市場が伸長していることを指摘した。同社では、2012年における世界の発電機の需要を1,100万台を予測しているが、その後もゆるやかに成長を続け、2020年には需要が1,300万台に達すると見通している。

ヤマハの国内工場における、発電機の年別生産数。東日本大震災が発生した2011年に、一気に数字が伸びている
こちらは全世界におけるガソリン発電機の需要。2020年には1,300万台と、徐々に需要が伸びると予測されている

日系企業しか生産できない「インバーター発電機」のメリットとは?

世界のガソリン発電機市場の構造。高性能のインバーター発電機は、日系企業しか生産していない

 ヤマハによると、ガソリン発電機の製品カテゴリーは、性能が高い順に「インバーター発電機」「4ストローク通常型発電機」「2ストローク通常型発電機」の3つに分かれるという。インバーター発電機を製造するのは日系企業が中心で、4ストローク通常型は日本や北米、欧州のメーカーで、2ストローク通常型は中国メーカーが多いという。ヤマハではこのうち、インバーター発電機と4ストローク通常型発電機を中心に展開している。

 インバーター発電機のメリットは、(1)家庭のコンセントで供給されているような、質の高い正弦波の電気を作り出すことで、パソコンや炊飯器など精密な家電製品が使用できる点、(2)小さなエンジンを用いることで、軽量・コンパクトな点、(3)電気製品を使用しない時に運転を抑えることで、低燃費や静粛性を実現している点があるという。

 定格出力が0.9kVAのインバーター発電機を、同じ出力の通常型の発電機と比べた場合、排気量は通常型よりも29cc少なく、重量は11.3kg軽い。また運転音は、通常型が89dBAに対し、インバーターは48~60dBAとなっている。

 4ストロークなど通常型の発電機は、インバーター発電機と比べて波形の質が劣るため、スポットライトやラジカセなどに向くという。

インバーター発電機は、家庭のコンセントのようなきれいな正弦波で出力できる点が特徴。パソコンなど精密な家電も使用できる
インバーター発電機と通常型発電機の排気量、重量、運転音の比較。インバーター発電機の方が効率が良く、軽く、運転音も静かだ

 日本国内におけるインバーターモデルの構成比は、2010年以前はほぼ半々で、東日本大震災が発生した2011年は、日系メーカーの供給不足により、中国製の通常型発電機が増加し、インバーターの構成比が低下した。しかし2012年は、中国企業が日本から撤退したことで、インバーターの構成比が67%に高まった。今後もインバーターの割合は高まっていくという。

 鈴木社長はまた、(1)販売台数の拡大、(2)魅力ある商品作り、(3)コストダウンの3つの成長戦略を軸に、発電機事業の事業規模拡大を明言。全世界における発電機の販売台数を、2012年の19万台から、2015年に38万台に拡大するという。また、燃費を従来比で20%以上向上する、新型の低燃費エンジンを搭載した商品を、来年以降に投入していくという。

日本国内における、インバーター発電機と通常型発電機の構成比。東日本大震災の際に通常型が増えたが、今後はインバーター発電機の割合が高まっていくという
鈴木社長は発電機事業の成長戦略として3つを挙げた。1点目は、販売台数の拡大。世界的に販路を増やしていくという。日本の場合は、ホームセンターでの販売を強化していくとのこと
2点目は「魅力ある商品づくり」。現在のところ、従来モデルよりも燃費を20%向上した新エンジンを開発中とのこと
3点目は「製造時のコストダウン」。エンジンと発電機を、中国で一貫して生産するという

発電機1台で、テレビやパソコン、冷蔵庫が5~6時間使用できる

 説明会では、同社のインバーター発電機の実演も行なわれた。

 家庭の停電時を再現する実演では、合計消費電力が1,260Wの家電11製品(テレビ/DVDデッキ/TVゲーム/フロアライト/ノートパソコン/プリンター/携帯電話の充電器/ラジカセ/小型冷蔵庫/コーヒーメーカー/扇風機)を、同社のインバーター発電機「EF1600iS」で動かしていた。約5~6時間は使用し続けられるという。

同社のインバーター発電機「EF1600iS」を使用し、テレビやパソコンなど、家庭の停電時を想定したデモが行なわれた
家電11製品(テレビ/DVDデッキ/TVゲーム/フロアライト/ノートパソコン/プリンター/携帯電話の充電器/ラジカセ/小型冷蔵庫/コーヒーメーカー/扇風機)を使用し、消費電力は合計約1,260Wだった。この状態でも、5~6時間使用し続けられるという
インバーター発電機「EF1600iS」。ヤマハの発電機は、この青いカラーリングも特徴

 アウトドアでの使用を想定した実演では、EF1600iSを2台連結し、出力をアップする「並列運転」が行なわれていた。単独の出力は1.6kVAだが、2台を並列することにより3kVAまで高められる。

 災害時における緊急対策本部を想定した実演では、出力が3.8kVAと高いインバーター発電機「EF2000iS」が使用された。二段重ねて設置したり、EF1600iSと同様並列運転もできる。別売りで4輪キャスターも用意されている。

アウトドアを想定した実演。発電機を連結(並列)させ、出力をアップさせることも可能
災害時における緊急対策本部を想定した実演
出力が2kVAのインバーター発電機「EF2000iS」が使用された
ヤマハの担当者による、正しいガソリン発電機の使用方法(1分13秒)
2台並列運転中における、発電機の運転音。大きいが会話は問題なくできるレベル。ニオイもまったく気にならなかった

 同社ではヤマハの発電機の特徴について、「音が静か」「軽量・コンパクト」「連続運転時間が長い」の3点を挙げている。モーターには静音性の高いマフラーを、発電装置には従来型の発電機よりも小さくて軽い「多極オルタネーター」を採用する。また、機器を使用していない際にはエンジンの運転をストップする「エコノミーコントロール」機能を備えているため、長時間電気の安定供給ができるという。

 ヤマハインバーター発電機は7機種用意され、希望小売価格は134,400~556,500円。うちEF1600iSは207,900円、EF2000iSは260,400円。一般向けにはホームセンターやネット通販で販売されている。

 なおインバーター発電機は、ホンダやヤンマーからも販売されている。ヤマハのシェアはホンダに続いて2番手となっており、約25%ほどのシェアを獲得しているという。

ガソリンは発電機本体とは別に管理する
ガソリンを携行缶から発電機本体に注いでいるところ。接続する機器をすべて取り外すなど、細心の注意が必要
バルーン型の投光機も、オプションで販売される。投光機下部に発電機を設置する
発電機を緊急時の備えとして導入しているマンションや企業もある

 説明会では、発電機の製造工程も一部公開された。掛川本社内で、1日に約400台生産されるという。以下、写真を中心に紹介する。

公開された発電機の生産ライン
組み立て途中の発電機
完成後は正しく動くかどうが検査が行なわれる
部品に漏れがないよう、細かく区分けしたトレーの中に部品を入れる

正藤 慶一