ニュース
シャープ、ソーラーシステム戦略を説明
~“ファンを増やすことが事業拡大につながる”
(2013/3/13 15:04)
シャープは、ソーラーシステム事業に関する戦略説明を3月13日に行なった。
シャープ ソーラーシステム事業本部ソーラーシステム事業部・宗俊昭広副事業部長は、シャープのソーラーシステム事業の軸として「発電量」、「耐久性」、「施工」、「サービス」、「保証」の5つの強みを挙げ、「安心感を提供し、シャープのファンを増やすことが、シャープのソーラー事業の拡大につながる」などとした。
また、「2012年度は、7月以降の需要回復が急であり、産業用では予想を大きく上回る需要拡大となった。18時間生産体制を24時間体制にするなど、増産体制を敷く一方、シャープ製品を専業に取り扱う施工店が参加するSSM(シャープ・サンビスタ・メンバーズ)との連携により、施工スタッフの人手不足解消にも取り組んでいく。すでに消費税引き上げを想定した需要拡大もみられており、2013年にはこの流れを加速したい」などとした。
同社では、2012年度には住宅用、産業用をあわせて3GWの市場規模が、2013年度には住宅用で2GW、産業用で3GWにまで拡大すると想定している。
2012年度の同社のソーラー事業の売上高見込みは前年比2450億円、営業損失で110億円。販売量は前年比21.1%増の1,300MW。早期の赤字脱却がソーラー事業の課題となっている。
シャープが他社と違う「5つの強み」とは
シャープは、ソーラーシステムにおける5つの強みを次のように示す。
発電量では、モジュールの高効率化とともに、屋根いっぱいにパネルを設置することができるルーフィット設計が特徴であり、さらに、効率よく電気を取り出すパワーコンディショナーとの組み合わせによって、高い発電量を実現できるとする。
パワーコンディショナーでは、電力ロスが少ないマルチストリング対応とし、真夏の高温時でも安定稼働を実現。静音性とともに耐久性を実現し、太陽光発電を高いシステム効率のなかで稼働させることができるという。耐塩害仕様とした製品も用意している。
また、耐久性に関しては、50年以上にわたる太陽光発電事業の経験から得た知見、品質への取り組みを集大成し、機械的荷重試験、鋼球落下試験、高温高湿試験などを実施。IEC規格やJIS規格よりも厳しい品質基準としている点を強調。施工においては、社内にCAD設計センターを設置。55万軒への設置実績を背景に、34万通りの設計パターンを持ち、このノウハウを活用して、安心できる施工を提供できるとした。
「産業用よりも、住宅用の施工の方が設置品質に対する要求がシビアである。架台への設置ノウハウはすぐに蓄積できるものではなく、単に屋根に設置すればいいというわけではない。シャープは、慎重すぎるといわれるぐらいの品質を保つ施工を行なっている」とした。
シャープ独自の工法により、設置時間の短縮化なども実現しているという。
さらに、サービスにおいては、設置した太陽光発電システムが発電していることを確認するウェブモニタリングサービスを提供し、「発電状況をしっかりと見守ることができる」としたほか、専門知識を持ったソーラーテクニカルマイスターが全国に駐在。「迅速に、修理対応を行ない、1日でも発電できないという日がないような状況を作るとしている」と語った。
また、「保証」では、10年間の無償保証に加えて、15年間の有償保証を用意。出力保証のほか、太陽電池モジュール、パワーコンディショナー、電力モニター、架台やケーブル、電力センサー、ストリングコンバーターといったすべての機器を保証対象にしていることを示した。
「プロが使いたいソーラーシステムとして、シャープがナンバーワンの評価を得ている。5つの安心を進化させながら、今後も継続的に太陽光発電モジュールを展開していく」と、シャープ ソーラーシステム事業本部ソーラーシステム事業部・宗俊昭広副事業部長は抱負を述べた。
住宅用では高効率&単結晶パネルが人気
住宅用製品では、2010年には高効率パネルで18.2%、単結晶パネルが12.6%だったものが、2012年には高効率パネルが25.0%、単結晶パネルが37.8%と急拡大していることを踏まえ、同社では、高効率のブラックソーラー、コストパフォーマンスを追求した単結晶のVシリーズ、業界トップクラスの高効率モジュールであるHシリーズをラインアップし、こうした需要に応えていくという。
また、これらの製品が2方向に屋根を作る切妻屋根向けであるのに対して、4方向に屋根が広がる寄棟屋根向けにEシリーズを用意。屋根のスペースにあわせて効率的に設置できる製品をラインアップしたという。
「日本の屋根形状は、寄棟屋根が43%、切妻屋根が40%であるが、当社の2012年度下期の販売構成比では、92%が切妻屋根であり、寄棟屋根はわずか8%。これを早期に20%にまでもっていきたい」とした。
そのほか同社では、切妻屋根と寄棟屋根の両方に対応した瓦型モジュールを製品化。需要に広がりに対応するラインアップを揃えていることを示した。
「屋根へのぴったり設計、たっぷりの発電量、屋根面の美しさを追求するのがシャープの家庭用ソーラー製品の特徴である」と、宗俊副事業部長は述べた。
大規模から小規模産業用ソーラーへとシフト
一方、産業用太陽電池では、2012年10月に10kW~1MWの小規模産業用が前月比2.2倍に拡大。さらに11月には、1MW以上の大規模産業用の販売比率を、小規模産業用が初めて上回った実績を示しながら、「今後の日本の産業用ソーラーは、小規模産業用中心へとシフトしていく。小規模産業用の増加は、集合住宅の屋根や野立てなど、特殊な形で設置するケースが増加することにもつながる。それぞれの場所や用途にあわせた製品ラインアップが必要になる」とし、耐風荷重、耐積雪荷重の強化や、防眩機能を搭載したものなどを商品化していると説明した。
積雪タイプでは、雪の重みにも耐えうる設計としたほか、防眩機能搭載タイプでは、高速道路脇など反射の影響が懸念される場所での設置に適用。2013年4月から発売予定の高所タイプでは、細長の形状とし、ビルやマンションの屋上など、耐風圧性を持たせたものにしているという。
さらに、現在受注生産としているシースルー太陽電池については、「環境に対する意識の高まりとともに注目を集めている。2013年は、ガラスサイズや厚みといった点でも、施主の要望により柔軟に対応できる形にし、ビジネスを拡大したい」と意欲をみせた。
創エネ・蓄エネ・省エネの組み合わせも
同社では、ホームエネルギーソリューションとして、太陽光発電システムにおける「創エネ」、家庭用リチウムイオン蓄電池による「蓄エネ」、タップ方式HEMSを活用した「省エネ」への取り組みについても言及した。
創エネでは、効率の高い太陽光発電モジュールと、システム効率性を高めるパワーコンディショナーを用意していることを改めて強調。蓄エネでは、2013年2月に発売した流量データ送信機で、ガスメーターや水道メーターとの連携を可能としたことで、電力だけにとどまらない家庭内のエネルギー利用の見える化を達成。また、専用タブレット端末では、機器ごとの消費電力の見える化を実現できるようにしたという。
シャープ ソーラーシステム事業本部ソーラーシステム事業部第二商品企画部・西山晴雄部長は、「家電機器ごとの消費電力を、5秒間隔で表示するため、エアコンの温度設定の変化によって、消費電力の変化もリアルタイムでわかる」と、効果を示した。
蓄エネでは、2013年1月発表したリチウムイオン蓄電池のほか、蓄電池パワーコンディショナーなどについて説明。リチウムイオン蓄電池は、4.8kWhと、2.4kWhの2種類の容量を用意。また蓄電池パワーコンディショナーでは、太陽光発電のパワーコンディショナーとは別製品として用意することで、補助金を利用したまま、蓄電池を追加できるメリットを示した。
また、「シャープの蓄電池は、ダブル発電とならないため、太陽光の余剰電力は蓄電池がない場合の1kWhあたり42円が適用される(ダブル発電の際には1kWhあたり36円)。太陽光発電出力が低下した場合には、蓄電池システムが安定した電力を供給。蓄電残量に基づく家電機器の使用可能時間が確認できる」と語った。
専用タブレット端末では、停電時などに蓄電した電力を、残りどのぐらいの時間使用が可能かを表示。また、テレビやエアコンなどを消した場合には、どれぐらい使用時間を伸ばすことができるかといったこともわかる。
さらに、「満充放電を8,000回繰り返しても、70%以上の容量を維持。一日1回満充放電を行っても、22年間使用できる。異常時には充放電を停止し、温度上昇時にも電池内部の圧力を逃がす弁構造により、爆発を回避できるようになっている。さらに正極材料にリン酸鉄を使用しており、爆発しにくいという特性がある」という。
ホームエネルギーソリューションにおいても、高い性能とともに、安全性を訴求する姿勢をみせている。