東京スカイツリーのライトアップ、“オールLED”で最大43%の省エネ

~パナソニック電工のLED照明を1,995台導入

 パナソニック電工は、東京スカイツリーに納入するライトアップ用照明の仕様が決定したと発表。すべての照明を“オールLED”とすることで、従来光源比で最大約43%の省エネ効果があることを明らかにした。

 東京スカイツリーは、東京都墨田区に2012年5月22日にオープンする高さ634mの地上デジタル放送の電波塔。2010年4月には、ライトアップ用の照明をパナソニックが担当することが決定していたが、今回は照明機器の仕様が決定。合計1,995台のLED照明が導入されることが明らかになった。

2012年5月22日にオープンする東京スカイツリー“オールLED”化することで、従来光源よりも最大で43%の省エネ効果があるという

頂上部から胴体部まで、ライトアップは“オールLED”

LEDが導入されるのは、頂上の「ゲイン塔」や胴体部のライトアップなど全6部分

 パナソニックのLED照明は、東京スカイツリーのうち、(1)頂上部の「ゲイン塔」、(2)展望台の「時計光」、(3)胴体部の「ゴールド色」の照明、(4)鉄骨交点、(5)「粋」色のライトアップ、(6)「雅」色のライトアップ、という6つの部分に導入される。いずれも、今回のために新たに開発された器具となる。

 まず、頂上部のゲイン塔(放送用のアンテナ部)のライトアップについては、反射した光を集める半円形状の「パラボラ曲面」の反射板を採用した投光器60台を設置。光を絞り込み高出力化を図ることで、約140mの高さのゲイン塔を従来光源よりも明るく照らしながら、消費電力は従来の400Wのところ50Wに抑えることができるという。

 また、補助反射板やルーバーが光の漏れを遮断することで、光が漏れるのを防ぐ対策も施されている。

ゲイン塔のライトアップに使用される投光器投光器の内部構造。「パラボラ曲面反射板」を採用することで、遠くまで光を届けるほか、光の漏れを抑える効果があるという投光器内部の反射板の構造図
発表会会場では、実際に投光器を使うデモが行なわれた。投光器自体は写真の後方にあるが、遠くまで光が均一に届いているのが分かる従来光源と比較した場合、140m地点の明るさは約2倍になった一方、消費電力が1/8に抑えられている

 展望台の周囲を光が回転する「時計光」については、常時点灯する器具と、点灯・消灯を繰り返す器具を交互に配置することで、白い光が動いているように演出する。照明器具表面には、きらめき感のある明るい光を作るための拡散パネルを採用している。合計台数は264台。

 タワー胴体部の高さを表現するゴールド色の照明には、ゲイン塔でも採用された、パラボラ曲面の反射板を採用した投光器を712台採用。また、ゴールド色を表現するために、アンバー(琥珀)色のLED4個と白色LED2個を組み合わせている。

展望台の「時計光」。1秒ごとに光が回転する時計光の照明器具常時点灯する器具と、点灯と消灯を繰り返す機器を交互に配置している
胴体部の「ゴールド」色のライトアップ用照明アンバー(真鍮)色と白色を混ぜている

 このほか、鉄骨が交差する部分のライトアップには、鉄骨の交点に、フルカラー演出ができるRGBのLEDを6個搭載したユニットを、合計348台搭載。発光部をしぼることで、ゴールドの光を点状に表現できるという。

鉄骨が交差する部分にもライトアップ用の照明を設置交差部分の照明フルカラーに対応する、RGBのLEDを採用している


毎日切り替わるライトアップ「粋」と「雅」も、オールLEDで省エネ

 1日ごとに配色が変更される「粋(いき)」と「雅(みやび)」のライトアップについても、仕様が決定した。隅田川をイメージした、淡い水色の光を放つ「粋」では、フルカラー演出ができるRGBのLEDを組み合わせており、屈折させた光と全反射した光を集めて配光制御しているという。合計台数は552台。

東京スカイツリーでは、1日おきにライトアップの配色を変更する。写真は水色が基調の「粋」こちらは紫が基調の「雅」
「粋」のライトアップのイメージ「粋」でもフルカラー演出に対応するRGBのLEDを採用ユニットが点灯しているようす

 紫色の「雅」については、ゲイン塔やゴールドのライトアップでも使われていたパラボラ曲面の反射板を搭載した投光器を59台採用。青色LEDと蛍光体で構成したLEDパッケージで、気品のある“江戸紫”を演出するという。LEDには高出力な光が特徴の集積型LEDを採用している。

 なお、「雅」の紫色には、パナソニック独自の高精度色再現技術を活用しており、さらにLEDパッケージは、蛍光体の配合を新たに開発することで、コンセプト通りの“江戸紫”が再現できたという。

「雅」のライトアップのイメージ「雅」で使用される投光器
「雅」でもパラボラ曲面反射板を採用している“江戸紫”を実現するために、パナソニック独自の高精度色再現技術を採用。蛍光体も新たに開発している

 これらの機器の導入で、ライトアップ時の消費電力は、「粋」パターンでは約153kW、「雅」パターンでは約83kWとなった。同社によると、従来の高効率ランプを使用した場合の消費電力は「粋」は約268kW、「雅」は133kWで、オールLEDとすることで、「粋」では43%、「雅」では38%の省エネ効果があるとしている。

 パナソニック電工では、今回の東京スカイツリー用の照明器具について、器具12件とデバイス2件において特許を取得している。

オールLEDにより、従来光源比で「粋」では約43%、「雅」では約38%の省エネ効果があるという今回新たに開発された照明機器の一覧

耐久性や安全性にも配慮

 耐久性については、光源寿命4万時間を確保するために、パナソニック独自の放熱設計技術を採用。実際の器具による検証も実施されており、耐久性の高い高品質の器具設計になっているという。なお、LEDが寿命を迎えた場合は、LEDユニットのみを交換するため、器具全体を交換する必要はないという。

 また安全性については、風や振動で器具や部品が落下しない構造設計を採用。万が一、落雷があった場合にも、器具が破損しないための耐雷サージユニットを器具に内蔵している。

 なお、今回導入された1,995台のLED照明は、光ファイバーによるデジタル制御方式を採用。光ネットワークと制御盤で一括コントロールできるという。

 

耐久性と安全性についても、対策が取れら得ているというLED照明は光ファイバーでデジタル制御される

 

パナソニック電工 松蔭邦彰代表取締役専務 照明事業本部長

 パナソニック電工の松蔭邦彰代表取締役専務 照明事業本部長は、今回のオールLEDの導入について「これまでに経験したことのない数々の課題や高いハードルがあったが、パナソニックは最先端の技術と総合力で、これらをクリアした。我々パナソニックは、このLEDという分野でさらなるチャレンジをしていきたい」と話した。

 また、オールLEDによる最大43%という省エネ効果については「比較対象が従来光源でも高効率なものと比較しているためで、低効率のものと比べれば、70%ほどの省エネ効果がある」と述べた。


会場にて披露された、「ゴールド」色のライトアップこちらは「粋」“江戸紫”の「雅」
発表会会場には、東京スカイツリーの公式キャラクター「ソラカラちゃん」も登場フォトセッションに望む松蔭本部長とソラカラちゃん。写真左は東京スカイツリー株式会社の藤井角也 代表取締役専務






(正藤 慶一)

2011年6月15日 17:26