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アクア、イメージ先行ではなくコア事業に注力する“Brand Reborn”を発表
(2016/3/25 11:40)
“アクアの視点”からのものづくり
アクアは、3月24日、冷蔵庫および洗濯機に関する事業戦略を発表した。
今回の会見は、3月10日に伊藤嘉明氏が社長兼CEOを退任後、初めての会見となったほか、1月11日にハイアールアジアからアクアに社名変更してからも初の会見。今回の製品説明会は、「AQUA JAPAN“Brand Reborn”」と題したものの、「既存製品のイノベーション」という切り口においては、これまでの路線を踏襲する姿勢を強調した。
アクア 日本代表 執行役員の山口仁史氏は、「昨年は、2回の発表を通じてイノベーションのある製品を紹介し、大きな注目を浴びることができた。だが、昨年末頃から、いま一度、アクアのコア事業である洗濯機、冷蔵庫、業務用洗濯機を紹介したいと考えていた。今回はその機会になる」と、かなり前から会見を予定していたことを示した。
アクア 日本副代表 執行役員の森田昌治氏も、「これまで、DIGIやR2-D2冷蔵庫などのイメージが先行し、コア事業である冷蔵庫や洗濯機のメーカーであることや、その強みが消費者にしっかりと伝わっていないという反省もあった。洗う、冷やすというアクアの力が発揮できる部分を伝えたかった」とした。
会見の冒頭、アクア 日本代表 執行役員の山口仁史氏は、「アクアは、家電づくりの常識を疑うことからはじめる。変わることに対する不安や恐怖があるが、世の中は日々変わっているなかで、現状に留まることは後退するのと同じ。アクアは、常識を疑うことで、変わっていくことになる」と前置きし、「日本の人口は、2035年には3人に1人が65歳以上になり、単身世帯の比率は、2020年には33%に達する。だが、冷蔵庫は大容量、多機能の製品が目立っており、洗濯機にはボタンがたくさんあり、やはり多機能が中心となっている。洗濯機のすべてのボタンを押したことがある人は少ないのではないか。アクアは、真に消費者のニーズを踏まえた商品開発を行なっているのかという疑問もある。そして、『冷やす』、『洗う』というアクアの力をもっと発揮したいと考えている。大きな人口変化が見られるなかで、ライフスタイルにあわせた冷蔵庫や、ライフステージにあわせた洗濯機を投入していきたい。そこにアクアの視点がある」と説明した。
国内における中型冷蔵庫市場では、4台に1台がアクア
アクア 日本副代表 執行役員の森田昌治氏は、まず、冷蔵庫の事業戦略について説明した。「毎日買い物をする4人家族、週末にまとめ買いをする単身世帯では、求める容量が違う。これまでの基本となっていた、人数×1人あたりの容量という計算が成り立たない世界がやってきている。アクアは、様々なライフスタイルの人が選べるラインアップを揃えていきたい。また、冷蔵庫は、家庭のなかで、最も目立つ家電であり、中型、小型タイプでは、リビングのなかに設置される場合もある。だが、中型、小型の冷蔵庫ほど、デザイン面での課題がある。必要とされる容量に対して、それぞれのライフスタイルにあわせたデザインや、機能を選べるようにしたい」と切り出した。
現在、国内では110機種の冷蔵庫が販売されているというが、そのうち6割が400L以上の大容量モデルだという。これに対して、それ以下のサイズとなる中型、小型の冷蔵庫は4割程度となり、選択肢が限られているのが現状だ。
アクアは、80Lのワンドアから420Lの5ドアまでの中型以下の製品ラインアップを揃えており、「国内における中型冷蔵庫市場では、4台に1台がアクア」だという。
「アクアは、中型、小型のラインアップを強化し、現在のラインアップ数の1.5倍程度にまで増やしていきたい。また、近い将来には大型冷蔵庫のラインアップも揃えていきたい」と語った。
特徴やターゲットを明確にした中型冷蔵庫をラインナップ
森田執行役員は、冷蔵庫の具体的な取り組みとして、いくつかの製品を紹介した。
4月発売予定の製品とするAQR-361Eは、355Lの容量で、4人家族でも使用できる製品だが、幅60cmで狭いスペースにもすっきり設置することができるのが特徴。また、冷凍室が2段となっており、食品を見やすく整理、収納できるという。「このクラスの冷蔵庫は、冷凍室が1段の製品ばかりだが、冷凍室を2段とすることで、冷凍できるスペースを広く確保した」という。
また、5月中旬に発売するAQR-36Eは、このクラスで唯一、ステンレス扉の4ドア冷蔵庫。355Lでありながら、高級感を持たせたという。「このクラスにおいても、素材が選択でき、デザインも選んでもらえるようになる」とした。
AQR-D28Eは、2月に発売した製品。主に単身世帯や2人世帯を対象にしたもので、「単身世帯でも、家でしっかりと料理を作りたいという人が多い。週末に買い物をして、料理の下ごしらえをして、それを冷凍して、収納することができる製品。280Lの容量だが、102Lの冷凍室を用意した。食材にあわせて3つの冷凍室を使い分けることができる。また、自動製氷機を搭載したモデルも選べるようにした」という。
さらに、すでに発売中のAQR-18Eは、184Lの冷蔵庫で、一人暮らしをターゲットとした製品。通常は47cmの幅の製品が多いが、本体幅を52.5cmとした。「47cmでは、本格的なオーブンレンジが設置できない。あらゆるオーブンレンジを設置できるサイズにした。本体の幅を広げた分、高さを低くし、このクラスでは最大級の冷凍室を搭載。ワンルームやリビングに置くことが多いサイズであることから、デザインにもこだわった」という。
先週から発売したAQR-271Eは、年配者や女性でも食品が取り出しやすい、140cmの高さを実現。「このクラスでは、180cmの高さの製品が多いが、上の棚の食品が取りにくいという声があった。車いすに座ったままでも、冷蔵室の扉を開けられるほか、冷蔵庫の上にレンジなどを置きやすい設計になっている」とする。
多様化するニーズに合わせ、全自動洗濯機のラインナップ拡大へ
続けて、洗濯機の事業戦略についても説明した。
森田執行役員は、「洗濯機も、家族の人数だけで、容量を決めるのではなく、洗濯の頻度や、使用シーンで選ぶべきだ」と話す。
「単身世帯でも、週末にまとめて洗濯をしたいという人や、スポーツをやっているために、日常の洋服に加えて、スポーツ用ウェアの洗濯が必要な人は、少し容量が大きめの方がいい。一方で、家族がいても、毎日洗濯する人は大容量は必要ないという提案もできる。また、夜や朝にしか洗濯しない人は、それにあわせた静かな洗濯機がいい。さらに、洗剤アレルギーがあるのでしっかりすすぎたいという人や、子供がつけた泥んこ汚れをしっかりと落としたいというライフステージにある人もいる。また、大切な衣類は、手洗いのようにやさしく洗いたいという人もいる。ライフスタイルや、洗濯の仕方にあわせて、洗濯機ニーズも多様化している。そうしたニーズに対して、アクア独自のランドリーソリューションを提案したい。2槽式モデルや10kgまでの縦型洗濯機、4.5kgからの全自動モデルをラインアップしているが、今年春以降、さらに新製品を投入し、現在の1.2倍程度まで広げたい」と述べた。
今回の会見では、新製品の内容については触れなかったが、現在、発売中の製品のなかから、特徴的な製品を紹介した。
全自動洗濯機の「SLASH AQW-GT800」は、「スタイリッシュでシンプルなデザインが特徴。外から見えるボタンは2つだけであり、やりたいことができるデザインとしている。また、中の洗濯槽は斜めにしているため、ドラムのように取り出しやすく、中を確認しやすい。しっかりと洗う、しっかりとすすぐ、あるいはやさしく洗う、やさしくすすぐといった機能を搭載している」と語った。
ツインウォッシュの「AQW-VW1000D」では、「ポケットに、うっかりティッシュを入れたまま、洗ってしまった場合、あるいは、お気に入りの黒いシャツを洗った時に、一緒に洗ったほかの洗濯物の白い糸くずがついてしまう、といったことがなくなる機能を搭載している。AQW-VW1000Dでは、パルセータが2つに分かれているため、強い水流を実現でき、さらにスイング式フィルターで、細かいゴミを取ることができる。洗濯後のストレスを解消できる洗濯機。また、10kgの大容量だが、ツインパルセータによって強い水流を生むため、使う水は5kgサイズと同じ。節水ができる」とした。
さらに、「アクアは、衣類のアンチエイジングをテーマに取り組んでいる。衣類は、洗濯すればきれいになるが、繰り返せば、衣類の痛みが進行する。衣類の痛みをできるだけ抑えたい。そのために、柔らかな脱水、柔らかな水流で洗うといった提案のほか、ハンディ洗濯機のCOTONではちょっとした汚れを部分洗いしたり、Racooonでは、外出したときについたニオイを取るため、アクア独自のオゾン技術を使って、空気で洗うといった提案ができる。自宅では洗いにくいスーツやコートのニオイも取り、リフレッシュできる。ランドリー製品では、衣類のアンチエイジングが重要なテーマになる」とした。
また、コインランドリー向けの業務用洗濯機では、75%のシェアを持っていることにも言及。全自動洗濯乾燥機やガス乾燥機、スニーカーランドリーなど、約40機種をラインアップしているという。
「コインランドリーの店舗数は増加傾向にあり、2015年には17,500店舗となっている。ライフスタイルの変化、価値観の変化によって、時間を有効に使いたいという理由から、コインランドリーの利用者が増えている。毎日の衣類は自宅で洗い、早く洗いたい、あるいは大きな物を洗う場合にはコインランドリーを使うといった例や、コインランドリーを使っている間、近くで買い物することができ、時間を有効活用できるという声もある。洗濯に伴う労働コストは、5兆2,000億円に達すると言われており、そのうち、コインランドリーが1,000億円規模、クリーニング店の活用が4,000億円規模。残りの4兆7,000億円が、自宅での洗濯による労働コスト。今後も、コインランドリーを使い分けて利用したいというニーズに応える考えであり、業務用洗濯機にはさらに力を入れていく」と語った。
最後に、トースター、クリーナー、扇風機などの小型家電製品を投入していることにも触れ、「洗う、冷やすというアクアが力を発揮できる部分とともに、ライフスタイルに寄り添う製品を提供したいと考えている」と語った。
なお、今回の会見では、伊藤前社長が強力に推進してきた「家電の嗜好化、家電を利用した新ビジネス」という領域については触れなかった。