火災警報器を正しく使うには「設置場所」「アラーム音」に注意
――国民生活センター

~空気清浄機が誤作動を引き起こすことも

 独立行政法人の国民生活センターは、住宅用の火災警報器に関するテストを実施。消費者のアドバイスとして「取扱説明書にしたがって正しく設置すること」「アラーム音が他の機器と混同しないものを選び、連動型の設置も検討すること」「必ず定期的に点検をすること」の3点を指摘した。

 2004年の消防法の改正により、全国の住宅に火災警報器の設置が義務付けられた。新築住宅は2006年に義務化され、既存住宅についても、2011年6月1日までに順次義務化されることとなっている。火災警報器は、煙の量で火災を感知する「煙式」と、熱で感知する「熱式」の2タイプがあるが、義務化されるのは煙式となる。

 しかし、国民生活センターでは2005年より、住宅用火災警報器の安全性や品質、機能に関する相談を175件受けており、現在も増加傾向にあるという。主な事例としては、「設置したが音が小さい」「煙を感知しない」「1年前に購入した製品なのに、電池切れを示す警報が鳴った」「夜中に誤作動を起こした」などがあったとのこと。

 このことから同センターでは、4社4銘柄の火災警報器について、設置場所による煙の感知の影響や、警報音などに関するテストを実施した。なお、テストで使用した機種はすべて配線工事不要の電池式で、本体の動作表示灯と警報音で火災を知らせるタイプとなる。

国民生活センター受けた、住宅用火災警報器に関する相談件数。現在、増加傾向にあるという


天井の隅や壁の低い位置では感知エラーが発生。空気清浄機にも注意

壁と天井に、説明書通りに付けたもの、誤った位置に付けたものの計4パターンでテストを行なった

 テストではまず、火災警報器本体の設置場所による感知テストが実施された。これは火災警報器を説明書で指示されている範囲内に設置した場合と、天井の隅や壁の下部といった範囲外に設置した場合で、警報音を発するまでの平均時間を比較するというもの。天井と壁のそれぞれで実施された。

 この結果、説明書の範囲内に設置した場合は、警報音を発するまでの時間に大きな差は見られなかったという。

 しかし、範囲外に設置した場合、通常の位置と比べて、すべての機種で警報音を発するまでの時間が遅れてしまい、さらに警報が停止したり、警報音が一時停止した後で再び警報音が鳴るなどの誤作動もあったという。同センターではこの結果について、火災の煙は下から天井に向かって上昇、横方向に広がってから床面へと降りる性質があるため、検知するのに時間がかかったこと、煙は部屋の隅には届きにくいため、煙の濃度が均一にならなかったことを要因として挙げている。

この結果、誤った位置に付けた火災警報器では、正しい位置よりも警報が遅れる結果と鳴った。中には、動作しない例もあったという
煙が拡散するイメージ図

 また、火災警報器を説明書通りの位置に設置しても、空気清浄機を使うと、警報が鳴るまでの時間が遅れる結果となった。特に、壁に設置した場合は、煙を感知しなかったり、警報音が一時停止した後で再び鳴り出すということがあったという。原因としては、空気清浄機から出る風によって、警報器周辺の煙が拡散されたこと、煙の粒子が空気清浄機に吸収されたことで、煙の濃度に影響を及ぼしたことが考えられるという。なお、テストでの空気清浄機の風量は「中」。

空気清浄機を近くに設置した場合のテストも行なわれた空気清浄機が煙を拡散したり吸収することで、警報が遅れたり誤作動が起きる結果が出た

隣の部屋で警報音がしても「おしゃべり程度」に聞こえてしまうおそれも

 次に、警報音に関するテストも実施された。各製品の警報音の音量は、平均で83~91dBと、省令で規定されている「1mの距離で70dB以上の音圧であること」の基準を満たしていた。また、警報音の周波数は、2.5kHz~3.15kHz(最大時)で分布しており、人が聞き取りやすいとされる周波数だったという。

警報音の例警報音量の比較(最大値)。すべて省令で定められた基準をクリアしている

 また、火災警報器が設置された部屋以外で警報音が鳴った場合、音がどれだけ減衰するかというテストも行なわれた。この結果、壁1枚隔てた場合で20~23dBほど、壁と廊下を隔てた場合では35~38dBほど減衰する結果となった。特に廊下と壁を隔てた場合は、警報音量が55~60dBと、距離1mでの普通の会話と同程度で、睡眠時やテレビや音楽など外部の音がする環境だと、警報音に気づきにくい可能性があるという。なお今回のテストは、約12畳の洋室に着脱式の壁を設置して行なわれたため、実際の住宅ではさらに警報音が減衰することも考えられるとしている。

隣室で警報が鳴った場合の、警報音の減衰量テストは移動式の壁を使ったため、実際の住宅ではさらに警報音が減衰するおそれもあるという

 取扱説明書の表示については、すべての製品において、正しい設置場所や、設置に向かない場所に関する記述があり、設置場所を誤ると正常に感知できなかったり、誤動作する旨が記されていたという。中には、人のいない部屋に設置すると警報音が聞こえないことや、飲酒後に寝るなど、居住者の状態によっては警報音が認識できないなどの警告も掲載する製品もあったという。

 これらの結果を含めて国民生活センターでは、消費者に対するアドバイスとして、(1)取扱説明書の設置方法に従って正しく設置し、空気清浄機やエアコンなど、感知に影響するものが周囲にないかを確認すること、(2)警報音は家電製品のアラーム音と混同しないものを選び、別の部屋では警報音が聞こえないことがあるため、1つの部屋で火災を感知すると、別の部屋にも警報を鳴らす「連動型」の設置も検討すること (3)ホコリなどに反応する恐れもあるため、必ず定期的に点検を実施すること、などを指摘している。

火災警報器の構造(煙式)





(正藤 慶一)

2011年5月13日 00:00