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「エコプロ2016」、水素社会を見据えた上でのパナソニックの取り組み

 環境とエネルギーの未来展「エコプロ2016」が、12月10日までの日程で開催されている。「地球温暖化対策と環境配慮」と「クリーンエネルギーとスマート社会」をテーマとして掲げた同展の様子を、レポートしていく。

環境とエネルギーの未来展「エコプロ2016」のパナソニックブース

 パナソニックのブースでは、水素社会を見据えた中で、同社がどんな役割を果たしていくのか、その取り組みを展示会場内で説明していた。

 同社の先端研究本部 小原英夫氏は、まず水素とは何かを説明。宇宙で最も豊富にある元素であり、燃焼エネルギーが高く、燃焼してもCO2(二酸化炭素)を出さずクリーンであるとした。そうしたサスティナブル(持続可能)な水素を、どう有効活用するかの研究が世界で注目され始めている。

 国内では水素と空気中の酸素を使って、発電しながら走行するトヨタの燃料電池自動車「MIRAI」がよく知られている。だがパナソニックも、2009年には既に家庭用燃料電池「エネファーム」を発売していた。現在は第4世代となり、シリーズ累計の販売台数は16万台を突破したという。

パナソニック 先端研究本部 小原英夫氏
家庭用燃料電池「エネファーム」の販売台数の推移

 そんな「エネファーム」は大きく2つの機能を備えている。1つは、都市ガスの主原料であるメタンから水素を取り出し、水素と空気中の酸素とを反応させて発電すること。2つめが、水素を作る工程で必要となる“熱”を利用して、お湯を作ること。両機能を備えることで、「エネファーム」のエネルギーロスは14.2%と低い。一般的な発電所のエネルギー効率が37%ほどで、ロスが63%なのを考えると、「エネファーム」がいかに効率よくエネルギーを使っているかが分かる。

「エネファーム」の構造
一般的な発電所との、エネルギー効率の比較

 「エネファーム」をより普及させるため、同社はラインナップを拡充している。2015年には、貯湯ユニットと熱源機とを1つにした一体型モデルのほかに、熱源機を分離した別置型モデルを市場に投入。今年7月には、新型「マンション向け」モデルを用意した。もちろん、寒冷地仕様もラインナップしている。

「エネファーム」のラインナップ

水素社会の実現に向かっての新たなステップを踏み出した

 現状では、水素の原料として都市ガスを使っているが、国を挙げて水素社会の実現に向かって歩み始めている。将来は、ガスや水道のように、水素が一般家庭にまで直接供給されるかもしれない。そうなれば、現状の技術でも、出力範囲が700Wほどの燃料電池ユニットは、大幅に小型化と低価格化できるという。参考展示された燃料電池ユニット(純水素燃料電池)は、湯沸かし器ほどの大きさだ。

エネファームの最新モデル。貯湯タンクと燃料電池との一体型。出力範囲は700W
参考出展された燃料電池ユニット(純水素燃料電池)。湯沸かし器ほどの大きさにまで小型化。出力範囲は700W
エネファームと比較すると、純水素燃料電池はシンプルな構造となっている。天然ガス(都市ガス=メタン)から水素を取り出す工程がなくなり、貯湯タンクも不要になる

 参考展示された純水素燃料電池は、山梨県米倉山の太陽光発電施設「ゆめソーラー館やまなし」で、2012年から実証試験が行なわれている。

 また同社は、将来技術の取り組みとして、水から水素を作り出す「光水素生成材料技術(光触媒)」を研究中。2030年頃の実現を目指している。

 ゆくゆくは、太陽光などの再生可能(自然)エネルギーにより水素を生成。純水素燃料電池で、水素で発電するという仕組みを構想している。

 実現すれば再生可能エネルギー、例えば太陽光発電の問題点として挙げられる、供給電力が“お天気まかせ”という問題を解決できるかもしれない。なぜなら太陽光による電気を使って水素にすることは、太陽光を長期保管しやすい水素に変換するということだから。

 晴天時には太陽光で発電した電気をそのまま使うとともに、余剰電力は水素に変換して蓄えておく。逆に曇天時には、蓄えていた水素を使って電気を作り出して供給する。水素を介せば、再生可能エネルギーでも安定した供給が、低コストで可能になるかもしれないのだ。

2012年から、山梨県の「ゆめソーラー館やまなし」で、純水素燃料電池の実証試験が進められている
水から水素を作り出す装置が実用化すれば、再生可能エネルギーによる電気の安定供給が可能になる

水素社会を支えるためのデバイス開発も推進

 パナソニックは、水素を扱う上で必要となる各種装置の開発も進めているという。具体的には、水素漏れを検知したり、水素が燃えていることを検知する機器などだ。

 こうした機器を実用化していくことで、より安全に水素を活用できる。

超音波気体流量計(写真左)、IoT対応水素検知センサ(写真右)
水素ステーション用 紫外線式水素炎センサ

 なお、「エコプロ2016」の会場には、トヨタ「MIRAI」のカットモデルや、ENEOSの水素ステーションなども展示されている。多くの企業が、水素社会を見据えた取り組みを始めていることが実感できた。

トヨタ「MIRAI」
「MIRAI」に搭載されている高圧水素タンク
ENEOSの水素ステーション