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「エコプロ2016」、水素社会を見据えた上でのパナソニックの取り組み
2016年12月9日 16:14
環境とエネルギーの未来展「エコプロ2016」が、12月10日までの日程で開催されている。「地球温暖化対策と環境配慮」と「クリーンエネルギーとスマート社会」をテーマとして掲げた同展の様子を、レポートしていく。
パナソニックのブースでは、水素社会を見据えた中で、同社がどんな役割を果たしていくのか、その取り組みを展示会場内で説明していた。
同社の先端研究本部 小原英夫氏は、まず水素とは何かを説明。宇宙で最も豊富にある元素であり、燃焼エネルギーが高く、燃焼してもCO2(二酸化炭素)を出さずクリーンであるとした。そうしたサスティナブル(持続可能)な水素を、どう有効活用するかの研究が世界で注目され始めている。
国内では水素と空気中の酸素を使って、発電しながら走行するトヨタの燃料電池自動車「MIRAI」がよく知られている。だがパナソニックも、2009年には既に家庭用燃料電池「エネファーム」を発売していた。現在は第4世代となり、シリーズ累計の販売台数は16万台を突破したという。
そんな「エネファーム」は大きく2つの機能を備えている。1つは、都市ガスの主原料であるメタンから水素を取り出し、水素と空気中の酸素とを反応させて発電すること。2つめが、水素を作る工程で必要となる“熱”を利用して、お湯を作ること。両機能を備えることで、「エネファーム」のエネルギーロスは14.2%と低い。一般的な発電所のエネルギー効率が37%ほどで、ロスが63%なのを考えると、「エネファーム」がいかに効率よくエネルギーを使っているかが分かる。
「エネファーム」をより普及させるため、同社はラインナップを拡充している。2015年には、貯湯ユニットと熱源機とを1つにした一体型モデルのほかに、熱源機を分離した別置型モデルを市場に投入。今年7月には、新型「マンション向け」モデルを用意した。もちろん、寒冷地仕様もラインナップしている。
水素社会の実現に向かっての新たなステップを踏み出した
現状では、水素の原料として都市ガスを使っているが、国を挙げて水素社会の実現に向かって歩み始めている。将来は、ガスや水道のように、水素が一般家庭にまで直接供給されるかもしれない。そうなれば、現状の技術でも、出力範囲が700Wほどの燃料電池ユニットは、大幅に小型化と低価格化できるという。参考展示された燃料電池ユニット(純水素燃料電池)は、湯沸かし器ほどの大きさだ。
参考展示された純水素燃料電池は、山梨県米倉山の太陽光発電施設「ゆめソーラー館やまなし」で、2012年から実証試験が行なわれている。
また同社は、将来技術の取り組みとして、水から水素を作り出す「光水素生成材料技術(光触媒)」を研究中。2030年頃の実現を目指している。
ゆくゆくは、太陽光などの再生可能(自然)エネルギーにより水素を生成。純水素燃料電池で、水素で発電するという仕組みを構想している。
実現すれば再生可能エネルギー、例えば太陽光発電の問題点として挙げられる、供給電力が“お天気まかせ”という問題を解決できるかもしれない。なぜなら太陽光による電気を使って水素にすることは、太陽光を長期保管しやすい水素に変換するということだから。
晴天時には太陽光で発電した電気をそのまま使うとともに、余剰電力は水素に変換して蓄えておく。逆に曇天時には、蓄えていた水素を使って電気を作り出して供給する。水素を介せば、再生可能エネルギーでも安定した供給が、低コストで可能になるかもしれないのだ。