長期レビュー

東芝「トルネオV VC-SG512」 前編

~重さも使い心地も軽いのに、ぐんぐん吸い込むコンパクトサイクロン
by 神原サリー

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



東芝サイクロンクリーナー「トルネオV VC-SG512」

 巷では小さい掃除機がブームともいえるくらい各メーカーから勢ぞろいしている。これまでサイクロンクリーナーというと大きくてメカっぽいものが主流だったが、女性やシニアにも使いやすいようにとコンパクトながら機能も優秀というものに注目が集まっているようだ。

 そうした中で、他との差別化を図っているのが東芝の「トルネオV」。どこが違うのかいえば、独自のサイクロン技術で“フィルターのお手入れ”をなくしているところが一番だろう。本体だけでなくホースやヘッドなども軽量化して総量も軽くしていたり、付属品も豊富にそろえているなと、気になるポイントが満載。果たして吸引力は満足のいくものなのか、使っていてもその力は落ちないのか、多彩な付属品の使い勝手はどうなのか。これは実際に使ってみるのが一番だ。


メーカー東芝ホームアプライアンス
製品名TORNEO V VC-SG512
希望小売価格オープンプライス
購入場所ヨドバシカメラ.com
購入価格79,800円


 編集部からお借りして試すチャンスをいただいたので、今回から2回に渡ってレビューをお伝えする。前編では製品の特徴のおさらいと、各パーツの紹介や使ってみてのファーストインプレッションを、後編では多彩な付属品を使って家中を掃除してみた様子やお手入れについて紹介していく。

 

小さいのにプレミアム感いっぱい

 わが家にモニター機が到着して、まず驚いたのがその小ささだ。以前、ダイソンが日本向けに開発したというコンパクトなサイクロンクリーナーDC26を使ったことがあるが、ほとんど同じ大きさという印象を受けた。当時、ダイソンの売り文句が「A4の用紙に収まる大きさ」だったが、このトルネオVもA4用紙に本体を載せてみるとほぼ収まる。小さいと何となく高級感に欠ける質感の製品が多いが、“グランレッド”というカラー名のとおり、艶やかに光る赤色がプレミアム。しまい込まないで、出しておきたくなる掃除機だ。「これは期待通り働いてくれそうだぞ」とうれしくなった。

本体の質量は3.3kgと軽量でコンパクト。2011年の従来モデルよりも1.6kg軽量化を図っている本体をA4用紙に載せるとほぼ収まるほどのコンパクトさ本体、ホース、伸縮延長管、イオンカーボンヘッドのほか、付属品(バッグに収納)がセットになっている

 まず、ホースや延長管、ヘッドといった基本の付属品を取り出してみる。延長管やヘッドにも本体と同じ艶やかな“グランレッド”の塗装が施されていて、ますますプレミアム感が高まる。本体にセットして全体を持ち上げてもやっぱり軽い。これは、ヘッドや延長管に軽くて丈夫なカーボン素材を使い、ホースや延長管の直径も細くしていることにあるのだろう。本体が小さくても付属品が従来のままではバランスも悪く使い勝手にも影響してくるが、すべてを軽量コンパクト化したことで、本当にバランスのよい掃除機になっているなと感じた。また、ホースなどをつけたままで持ち運ぶことも多いので、総重量が軽くなってこそ、小ささのありがたみを感じるというものだ。

 届いた箱の中にはホースや延長管、ヘッドのほか、掃除の7つ道具ともいうような付属品がたくさん入っている。付属品は、すき間ノズル、伸縮ロングノズル、付属品用ホース、洋服布用ブラシ、ロングブラシ、ふとん用ブラシの6点で、すべて専用の収納バッグに入れておけるのがとても便利そうだ。というのも「すき間を掃除したい!」と思った時に限って押し入れにしまったはずのすき間ノズルが行方不明になり、困ることが多いからだ。

 付属品の収納袋には各パーツを入れるポケットがついていて、バッグ内でぐちゃぐちゃにならないように配慮されている。「ここにこれを入れるといいですよ」という説明書が添えられているのも親切だ。使っているうちに“投げ込み式”になってしまうかもしれないが、細部まで考えられたバッグに感心した。

付属品は、すき間ノズル、伸縮ロングノズル、付属品用ホース、洋服布用ブラシ、ロングブラシ、ふとん用ブラシの6点付属品はすべて収納バッグにきちんと収まる収納バッグの利用方法についても添え書きがついている

12気筒のサイクロンでミクロのゴミを分離する本格派

サイクロン部を取り出したところ

 ここで、トルネオVのサイクロンの仕組みをおさらいしよう。ホースから吸い込まれたゴミは、ダストカップ内に見える分離ネットが配された部分で、まず大きなゴミと空気を遠心分離し、圧縮。ダストカップの上部に搭載された12気筒のサイクロンの強力な遠心力でミクロのゴミを99.9%分離する「バーティカルトルネードシステム」を採用している。

 2つのサイクロンを垂直設計したことで、コンパクトながら強力な吸引持続力のサイクロンクリーナーが実現したのだという。1つ目のサイクロンでゴミを圧縮しているため、ゴミ捨て時にもホコリの舞い上がりを防ぐ仕組みだ。最終的には本体の後部に搭載された排気清浄フィルターを通って、室内に排気される。この排気清浄フィルターは、メンテナンスサインが点滅した時には手のひらでたたいてチリを落とすなどのお手入れが必要になるが、基本的には掃除後のフィルターのお手入れというものは発生しない。

ダストカップカバーの内部に見える12個の丸い穴が12気筒のサイクロンにつながり、ミクロのゴミまで99.9%分離するホースから吸引されたゴミは本体最下部の連結部から吸い込まれ、遠心分離ゾーンと圧縮集じんゾーンの2つの気流でゴミと空気を分離・圧縮される本体後部には排気清浄フィルターがあり、ここを通過後に排気される

 これまで、日本のメーカーのサイクロンクリーナーの多くにはフィルターがついており、吸引力の低下を防ぐためには、このフィルターの目詰まりを解消することが必須だった。そのため毎回フィルターの掃除が必要だったのだが、その手間を省くものとして、自動でフィルターの除じんをするために、電源をオフにするたびに「カタカタカタ」というお掃除の音がしていたのだ。

 トルネオVはフィルターレスのため、自動除じん機能も搭載せず、カタカタ音がしない点は大きな特徴といえるだろう。

すいすい進んでしっかり吸い込み、ecoモードも充実

 能書きはこの辺にして、実際に掃除機を使ってみよう。まずは標準装備のヘッドをつけてフローリングの床から。弱モードでも十分きれいになっていく。本体が小さくて軽いので引き回しが楽で“軽々ついてくる”という感じだ。新しく開発されたというホースは本体との連結部分だけでなく手元のグリップの下の部分も動きに合わせて回転する仕様になっているため、手首の動きに合わせてホースが回るので、ねじれてしまうこともない。細くてやわらかく、しかもねじれないホースというのは、想像以上に使いやすいものだと思った。

伸縮延長管の先には可動式のブラシがついている。延長管はカーボン素材を採用しているので軽いカーボン素材を採用したヘッドホースとの連結部。接点は上でなく左にある
ホースをつないだところ本体との連結部付近のホースは動きに合わせて回転するため動きがスムーズだグリップの下の部分のホースも回転する仕組みになっていて使いやすい
延長管の黒いボタンを押しながら引き延ばして長さを調節できるグリップ部にある操作パネル。新たに搭載された「ゴミ残しまセンサー」が赤く点灯している間はまだゴミが残っている。最大52%消費電力を削減でき「ecoモード」ボタンもあるヘッド部分は左右のロックを外すだけで“上から”ブラシが取り出せる仕組み

 リビングのテレビ台の下の空間の掃除は、いつも手間取るのだが、トルネオVはヘッドが薄く、しかも床にぴたりとくっつく設計で浮き上がらないので不満なく掃除が出来る。資料によれば6.5cmのすき間にまで対応するというからかなり優秀だ。奥まで掃除する際には手首をひねると密着したまましっかりと届き、本当に使い勝手がよい。「ヘッドが浮き上がったら、ここを改善してほしいと提案しよう」と思っていたのに、文句のつけようがないではないか。

延長管とグリップがぴたりと床について、ヘッドが浮き上がらないため家具の下の掃除も楽にできる手元のグリップをひねる時にもムダな力がかからない
「ecoモード」での運転時は本体のLEDランプがグリーンに点灯。アイドリング時には点滅する仕組み

 ecoモードボタンを押すと、自動でパワーをコントロールしてくれるため、消費電力を最大52%も削減してくれるという。どんな機能が働くのかというと、床面に合わせて「じゅうたんなら強力に」「フローリングは弱に」といった床面識別が1つ。またゴミの量に合わせて自動でパワー調節する機能もある。ゴミの量をセンシングする「ゴミ残しまセンサー」が搭載されており、ゴミが残っている(多い)ときには赤いランプがつき、なくなると消える仕組みになっているのだが、これに合わせ、ゴミが多い時には強力パワーで働き、なくなるとパワーを低減させて運転する。

 床面の識別もしてくれて、ゴミの量に応じてパワーを変化させるのだから、基本的にはいつも「ecoモード」で大丈夫。しかも、ヘッドをちょっと浮かせるだけでパワーが落ち、6秒後にはパワーオフになるのだから、その素早い反応には恐れ入りましたと頭を下げたい。この“節電アイドリング”機能が働いている時には、本体のecoモードランプが緑に点滅して知らせてくれる。「ちょっと片付けたりして、掃除をしていないのなら電源をオフにしなさいね」と諭されている気持ちになる。

 ecoモードのまま、今度はキッチンマットやじゅうたん敷きの部屋でも掃除力をチェックしてみた。キッチンマットのように薄いものは、吸引力が強すぎるとヘッドにくっついてしまうこともあるが、そのあたりは絶妙に調整されてすいすい進む。

 そのままじゅうたん敷きの部屋に移動して掃除をしてみたのだが、軽い! ヘッドが軽くなって自走のパワーが強まったからだろうか。ほとんど力を入れていないのにとにかくすいすい進むのだ。あまりに軽過ぎて、ホコリを吸い込んでいないのではないかと不安になってダストカップを見てみると、しっかりゴミやホコリ、髪の毛まで吸い込んでおり、ここ数日、掃除をさぼっていたことを目の当たりに示される。

キッチンマットも吸いつかず、ゴミだけがスイスイ取れていく自走するためカーペットも軽々進む
強力なモーターが内蔵されているヘッド。イオンカーボンヘッド採用で軽く、ヘッド自体にホコリがつきにくくしっかりと吸引される全く力がいらないので、ゴミが取れていないのかと思ったが、短時間でもホコリを吸い上げていてびっくり

 本体やホースが軽いだけでなく、じゅうたん敷きの部屋でも軽やかに進み、しかも驚くほどの集じん力。こういう掃除機は年配の人にもうれしいのではないかなと思う。

 さて、今回のレビューはここまで。来週掲載の後編では、トルネオVのさらなる掃除力や多彩なアタッチメントを使った家中の掃除。そして気になるお手入れについてを紹介するのでお楽しみに!



前編  /後編 




2012年10月1日 00:00