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長期レビュー

ホンダ「エネポ EU9iGB」最終回

〜停電時の備えとして使える? あと運転音も検証!
by 藤山 哲人

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



ホンダの発電機「エネポ  EU9iGB」のレビュー記事も、今回で最終回。最後は、停電時の利用法と、運転音について取り上げる
 カセットガスで電気を作り出す発電機「エネポ EU9iGB」。最終回となる今回は、前半では災害などで停電した際に、もしもの備えとして利用できるのかを、キャンプ歴15年の筆者がエラそうに説明したい。はたして、災害時に発電機が役立つのか? またどうやって使えばいいのだろうか?

 後半では、発電機で避けられない問題「騒音」を取り上げる。工事現場やお祭りの屋台でバリバリ唸る発電機を目にした人も多いと思うが、静音性がないがしろになっていないかを実験で明らかにしていこう。

 [第1回目はこちら] [第2回目はこちら]

地震で電気が復旧するまでの1週間、どうやってエネポでしのぐ?

 まずは、地震などの災害で停電した際、エネポが頼りになるかどうかについて見てみよう。

 もはや言うまでもないが、日本は地震大国。火山が多く、温泉地も日本全国に広がっており、極楽気分が手軽に楽しめるその一方で、日本のどこかで地震が日々起きている。

日本と取り巻くプレートは、こんなにも複雑。太平洋を越えた向こう側にも、北アメリカプレートと太平洋プレートがあり、サンフランシスコ付近の地震源となっている。すでに300年周期の大地震発生から1世紀を超えているため、サンフランシスコも日本同様に地震に警戒している
 しかし、なんで日本はこんなに地震が発生するのか。それは、日本が互いに反発する4つのプレート(岩盤)――ユーラシアプレート、北アメリカプレート、 太平洋プレート、フィリピン海プレートの境界に乗っているからだ。この4つのプレートに囲まれた国は、地球上で日本だけなのだ。

 地震は大きく2つの種類に分けられ、地表から数km程度という浅い場所で発生する直下型地震と、数十kmの深さで発生するプレートによる地震がある。直下型地震は予測がほとんど不可能で、地震が起きた後に「この断層がズレました」と気象庁から発表がされるほどだ。一方、プレートで発生する地震は、プレートとプレートの摩擦によりエネルギーが蓄えられるため、周期的に発生する場合が多く、東海沖や南海(紀伊半島〜四国南方沖)で21世紀中に大地震が起こるだろうと予測されている。だからこそイザというときに備えて、知識や技術を身に付けておきたい。

 さて、記憶にも新しい大規模災害といえば、1995年に発生した阪神淡路大震災と、2004年の新潟県中越地震だろう。次のグラフは、これらの震災でライフラインが復旧するまでにかかった日数を示したものだ。

阪神淡路大震災における、ライフラインの復旧状況。電気はいずれの場合も1週間程度でほぼ復旧しているが、都市ガスや水道が復旧するのには2〜3カ月も要する 新潟県中越地震では、電気の復旧に1カ月ほどかかっているが、それでもガスや水道と比べても復旧が早い

 グラフを見て分かるのは、ガスや水道に比べ、電気はかなり早く復旧するという点だ。阪神淡路大震災も新潟中越地震でも、ほぼ全戸が復旧するまで1週間ほど。こうして過去から学べるのは、最悪でも発電機で1週間をしのげばいいという点だ。

 とはいえ1週間も電気を使わない生活というのは、家電に慣れ親しんだ私たちにとっては死活問題。携帯電話の電池は間違いなく切れ、テレビやインターネットからの情報も手に入らない。もちろんエアコンはダメ、石油ファンヒーターですら動かせない。

災害時は必要最低限の電力に絞って耐え忍ぶほかない。数日もすれば、食料も配給されるので、カセットガスコンロはお湯を沸かすときに必要になる程度だろう
 たとえ災害時に発電機を持っているとしても、電気に依存した生活をしていると、エネポの900Wの電力ではとてもまかなえない。また発電するためには、カセットガスという燃料が必要になるので、日がな一日発電機を回していては、すぐに燃料がなくなってしまう。発電機を使うとしても、機器の取捨選択を余儀なくされるのだ。

 では、何を使って、何を使わないのか。その取捨をこれから見極めていこう。

 夏場であれば、情報を得るために必要なラジオやパソコン、そして夜を過ごす明かりと携帯電話への充電がメインになるだろう。明かりは効率がいい蛍光灯やLED電球がベストだ。

 これらの機器を使用するのであれば、エネポのアイドル運転(待機動作)でも十分にまかなえる。おそらく連続利用時間は4時間ほど。生活を日の出と日没に合わせて生活するようにすれば、1日8時間電気を使ったとしても、カセットガス4本以内で収まるだろう。もし、まるまる1週間に渡り電気が復旧しないことを考えると、28本のカセットガスが必要になるが、復旧する3日間ほどであれば、12本もあればいい。だいたいカセットガスは3本セットで売っているので、4セットあればいいという計算になる。

 さらにいえば、冷蔵庫に残った生モノに火を入れて食べたり、お湯を作るのに必要なカセットガスも考慮すると、1日当たりさらにもう1本備蓄しておく必要があるだろう。だいたい1本のガスで2時間の利用が可能なので、朝夕それぞれ1時間使える計算だ。もちろんこれは、ガスコンロを使う場合。カセットガスで発電した電気で、IHヒーターを使うなんてことをしたら、エネルギー効率が悪いのは言うまでもない。

携帯電話のデータ通信を使えば、とりあえず病院探しや物資の至急、被害状況の確認などもできる ラジオなども貴重な情報源になるので、発電機を使ってでも稼動させておきたい

 もし冬場なら、暖を取る手段が必要になるが、一番効率よく温まるのはコタツだ。焚き火は暖かそうに見えるが、当たっている顔や胸だけが、やけどするほど暑くなるだけ。背中は寒く、体感としてはさほど暖かさを感じないものだ。ましてや屋外で焚き火をすると、足がサッパリ温まらない。


 とはいっても、4人用のコタツとなると最大600Wの電力が必要になるので、温度調節や使う時間をかなり絞る必要がある。パソコンやラジオに加えてコタツを使うとなると、おそらくカセットガスは1本2時間も持てばいい方だ。1日8時間使うとなると、1日8本のカセットガスが必要になるという計算なので、3日なら24本も必要になる。発電機を持っているからといって頻繁に利用すると、スグに燃料切れになってしまう恐れがある。より万全の体制を整えるとなると、冬場には夏の倍以上のカセットガスを備蓄しておく必要がありそうだ。

【特別講義】知ってると便利、野営のチョットしたテクニック

 ここからはエネポから話が大幅にズレるが、野外で暮らしていくうえでの、チョットしたテクニックを紹介しよう。エネポを使う際に参考にしていただきたい。

キャンプ用のランタンは、役に立つ度No.1
 まずは明かりだ。先ほど明かりは効率の良い蛍光灯がいいという話をしたが、一番ベストなのはキャンプ用のランタンだ。夏の夜は外灯に虫がたくさん集まるが、蛍光灯が虫を引きつける青い光を出すのが原因。なお、LED電球は紫外線を出さないので、虫がよってこないハズ。この夏のキャンプで実験してみるといいだろう。

 キャンプ用のランタンは眩しいほど明るいが、オレンジの光なので虫があまり近寄らない。もし近寄ったとしても、熱さで虫が死んでしまうため、殺虫剤いらずだ。しかも電気ではなく、キャンプ用のガスが使えるので燃料の節約にもなる。

雨をしのぐための屋根は、運動会で使うブルーシート。キャンプ用のポールとロープがあれば簡単に設営できる
 次に雨対策だ。写真を見れば分かるとおり、雨よけの屋根は運動会で使うブルーシートとキャンプ用のポール2本、それにロープ2本もあれば作れる。


 ブルーシートの大きさは、2m四方だと4人家族ギリギリで、風を伴う雨だと吹き込んでしまうので4〜6m四方がお勧めだ。ポイントは、4隅に金属で補強された穴が開いているものを選ぶこと(開いてないものの方が少ないと思うが……)。D.I.Y店に行けば、だいたい1,500円で手に入るだろう。

 キャンプ用のポールは、アルミやスチール製があるが、2〜2.4mのポールが2本あればいい。片方のポールの先端が細くなっている「タープ用」というものが必ず売っているはず。4本用意できれば片側を塀などに固定しなくても自立したテントが作れるし、少し長いポールがさらに2本あれば、三角屋根のテントも作れる。ポールの価格は、だいたい1本1,000円ほどだろう。

 またロープは、長さを自由に調整できる「自在ロープ」というものを、ポール1本に対して最低1本、ベストは2本用意するといい。だいたい3〜4mのロープが4本セットで1,500円ぐらいえ買えるはず。

キャンプ用のロープ。自在ロープの特徴は、くの字に曲がった止め具が付いている。プラスチック製もあるが、アルミ製の方が頑丈で滑りづらく便利 よく見ればしくみは簡単だが、ロープの長さを簡単に調整でき、しっかり固定できるのだ

 設営は凄く簡単だ。

1) 塀などを利用する場合は、ブルーシートの片方を塀にシッカリ固定

2) 自在ロープの末端に輪を作り固結び

3) ポールの先端にブルーシートの穴を通し、その上からロープの輪をかける。

まずは、ロープをブルーシートの穴に通し、頑丈なものに固定する 次に、ロープの端に輪を作る。結び方は色々あるが、普通に固結びでOK
ポールの先端にブルーシートの穴を通し、その上からローブの輪をかける バランスを取るように設営すれば、強風の中でも1人で設営することもできる

4) ロープを地面に固定する
 自動車の牽引フックや電柱、大きな岩などに引っ掛けるといいだろう。

5) ポールを立てながら自在ロープを縮めていく
 斜めになっていたポールを起こしながら、フック側に力を込めて倒しつつ、ロープを短くテンションをかけていく。

次に、ロープを地面に固定する 写真では、ステンレス製の固いS字フックを、排水溝と車の牽引フックに引っ掛けてロープを張っている

簡易テントの完成。左右のバランスを見ながら、少しずつロープのテンションを上げていくのがポイント ブルーシートをピーン! と張れば完璧だ

ブルーシートに傾斜を付けてやると、雨の吹き込みを抑えたり、雨水が屋根のくぼみに溜まらない効果がある。ただし、水は恐ろしく重いものなので、簡易テントでは要注意
 ポイントは、ポールの足を少しテントの内側に入れ斜めにすること。これでロープのテンションとポールにかかる下向きの力と横向きの力のバランスが取れ、より強風にも耐えられるようになる。また理想的なロープの角度は、右の写真のように直角三角形(45度)になるようにするといい。

 単純ではあるが、これで多少の風では吹き飛ばないテントが完成する。塀を使わず、独立させる場合は、下の図のようにポールとロープを設営すればいい。ロープ同士がお互いに引っ張り合うので、ブルーシートはピーン! と貼った状態になるのだ。

 最後に、寒さ対策。寒さに有効なのが、日光の持つエネルギーだ。太陽エネルギーは膨大で、たとえ気温が寒くても、厚手の布団を日中に干しておけば、綿の芯まで温まりしばらく熱を保っている。物干し竿もテントと同じ要領で、ポール2本とロープ数本で作れるので、何本か常備しておくといいだろう。

4本のポールを使えば自立式のテントにすることも。このとき1本のポールに対して2本のロープをかけてやると強度が上がる。また中央の穴に長いポールを差し込めば三角屋根のテントになる。ロープは4隅と同様に2本張るといいだろう 物干し竿は、ポールに渡しているロープにかなりの重さがかかる。そのためポールは、テントより斜めにして、渡したロープにかける横のテンションを上げてやるといい。これだけで自立してるのが不思議でしょ?

発電機の宿命である「運転音」も、エネポならエコスロットルで問題ナシ

 さて、今回のレビューで最後に迫るのが、「運転音」の問題である。

 発電機は音がうるさいという話は、第1回で軽く触れた。岐阜のスキー場で夜間に車を撮影したときのこと。周囲数km以内には民家がないような場所で、蛍がハエのように辺りを飛び交うような山奥に行き、照明用の電源に使ったのが某社のガス式発電機だった。

よーく見ると、どんな車を撮影してたのかが分かりますが、あまり詮索しないでください……

 でも、これがうるさいのなんの! エンジンチューンした車が多く、発電機の音で迷惑をかけることはなかったが、改造車の排気音とタメを張っていた。それはまさに、マフラーの壊れた50ccバイクのアイドル音。車より数オクターブ上の甲高い咆哮でカメラアシスタントとの会話も困難になるほどだ。騒音レベルを測定したわけではないので、あくまでも体感の話ではあるが、住宅地で使ったら、確実に文句が来そうなものだった。

 それに比べると、ホンダのエネポはとても静か。さほど電力を必要としない場合は、エンジンの回転数を下げるエコスロットルを使うと、自動車(ノーマル車)のアイドリングとさほど変わらない。

【エコスロットル ON】写真左から順に、本体からおよそ1m、2m、5m離れて測定してみた。5mも離れれば街の雑踏ぐらいの騒音なので、騒音といえないレベルだろう

 さすがに本体から1m程度だと、運転音は83dB(実測値。以下同じ)と地下鉄並みの音だが、2mも離れると活気ある事務所程度の75dB、5m離れれば街頭の雑踏ほどの約70dB。というか、これまで色々と実験をやってみたものの、ご近所から文句1つ来なかったというのが静かさの一番の証明になるだろう(笑)。

 一方エコスロットル運転を解除すると、エンジンの回転数が上がり運転音も大きくなる。

【エコスロットル OFF】こちらも写真左から順に、本体からおよそ1m、2m、5m離れて測定。エンジンが全開になるので20dB近く騒音が大きくなる。さすがにこれだと5m離れててもうるさい


 発電機から1mでは、92.5dBと“工場内の騒音”レベル、2m離れても音のレベルはさほど変わらず87.4dB。5m離れて、ようやくエコスロットル運転時の1m程度の音まで下がった。すでに実験したエコスロットルの反応の速さと騒音レベル、燃料の消費を考えると、通常はエコスロットル運転するのがベストだろう。

 エネポで特徴的なのが、低い運転音。以前に使ったガス式の発電機は、いかにも50ccという甲高い音だったが、エネポは低めの音だ。大きなマフラーを付けられない発電機としては、かなり静かと言えるだろう。

 次のムービーは、前回自作したエネポ専用実験器具(この実験器具の顛末は第2回目を見てね!)における、エコスロットル運転をしたときの消費電力による音の違い。288W相当の電球7個までは、アイドル時の回転数と変わらないが、以降電球を1つずつ点灯していくたびに少しずつ音が大きく、高くなっていることが分かる。

【エコスロットル ON】
エコスロットル運転すると、電力に応じてエンジンの回転数を制御するのでかなり静かになる。ちょっとした音楽も演奏できるかも?
【エコスロットル OFF】
エコスロットルを解除した状態では、始終エンジンがフル回転。最後にエコスロットル運転に切り替えたときの静かさが分かるはず

 ご覧の通り、エコスロットル運転では、かなりこまめにスロットを調整し、騒音を最低限に押さえようとしている。指さえ覚えれば、ちょっとした楽器になるかもしれない(笑)。


静かでどんな家電も使える発電機、それがエネポだ!

 これまで3回に渡りお伝えしてきたホンダの発電機「エネポ EU9iGB」だが、コンセントよりなキレイな波形を描く実験にも使えそうな電力を供給してくれるだけでなく、さまざまなシーンで活躍できることがお分かりいただけただろう。

 キャンプ場では発電機を持ち込み禁止としているところが多いが、バーベキューなどを楽しめるデイキャンプ場などでは、エンターテインメント用に役立つだろう。またD.I.Yや車が趣味でマンションなどの集合住宅に住んでいるという読者にもお勧めだ。

 こうした使い方を勧められるのも、ひとえに住宅地の中でも使えるほどの静音設計であることに他ならない。静かでどんな家電も使える発電機、それがエネポなのだ。




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2010年7月12日 00:00