長期レビュー
三菱IHジャー炊飯器「炭炊釜 NJ-VX」 その2
三菱電機のIH式炊飯器 「炭炊釜」は、「可変超音波吸水」により、浸し時間を省略してもおいしいご飯が炊けることは1回目で触れた。今回は白米を使ったさまざまなメニューを試すことで、その実力をチェックしてみよう。
■白米2カップを「お急ぎ」で炊いてみる
三菱IHジャー炊飯器「炭炊釜 NJ-VX」 |
身近な男性諸氏に「炊飯器に期待することってなんですか?」と聞いたところ、遅くまで働く既婚男性(子供あり)は「保温機能?」と答え、同じく終電近くまで働く独身男性は「早く炊けること」と答えた。それぞれのライフスタイルをストレートに反映していて、実に面白い。
「炭炊釜」には、やや低めの温度で保温することで黄ばみを抑え、12時間保温可能な「たべごろ保温」と、炊きたて状態を一定温度で24時間保つ「一定保温」の2種類がある。「たべごろ保温」で5時間保温したご飯がおいしくいただけたことは前回述べた。
そこで、どれくらい早く炊けるかを試してみることにした。「炭炊釜」は炊飯キーを2回続けて押すことで、「お急ぎ」モードになるのだ。これは予熱とむらし時間を短縮することで、通常の炊飯より約20分早く炊きあがるモードだ。
1カップが最短約19分で炊きあがるというので、白米2カップ分をセットし、「お急ぎ」でスイッチオン。すると、なんとわずか22分で炊きあがった。これなら、帰宅してからスイッチを入れても、片付けをしたり、おかずを用意している間に完成する。空腹を抱えつつ「これから40分も待てない……」と思うこともないだろう。
食べてみると、取扱説明書には“少々かために炊きあがります”とある通り、実際やや固めではある。しかし、粒の表面がプリッとしていておいしく、通常と比べても違和感がない。カレーやチャーハンに合いそうだし、固め好きなら、いつだって「お急ぎ」でいいんじゃないかと思うくらいだ。
「約22分後にできあがり」とすぐ表示された | 炊きあがったご飯 |
ちゃんとふっくら炊けている | 作り置きのグリーンカレーとも相性ばっちり |
ちなみに、「たべごろ保温」に関して取扱説明書を見たところ「12時間を超える保温時間の消費電力は、炊飯約1回分に相当する」とあった。保温は短時間で済ませ、ご飯は冷凍保存して、都度電子レンジで再加熱したほうがおいしく、かつ節電につながるとのこと。賢く使い分けたいところだ。
■白米1カップを「芳醇炊き」で炊いてみる
「炭炊釜」には「芳醇炊き」なるキーが単独で用意されている。これは、スイッチを入れてから本炊きに入る前に、仕込みにじっくり時間をかけることで糖化酵素の活性化と吸水効果を高め、ふっくら甘みのあるご飯を炊きあげるモードなのだとか。白米または無洗米のみで、ご飯の固さは選べない。仕込み時間がかかることで、当然炊飯時間も延びる。
通常の炊飯でも十分おいしいと思うのだが、何が違うのか気になるところ。そこで白米1カップ分を用意し、「芳醇炊き」キーを押してから炊飯してみた。
炊きあがりまでの所要時間は69分と長かったが、味は抜群。甘みというか、柔らかさというか、確かに通常炊飯とは違う水分量で、見事な炊きあがりだった。シンプルにお漬け物や、塩辛で食べたくなるご飯である。いいお米が手に入ったときなど、ちょっと贅沢したい日や、じっくり炊きあげたいときに選ぶといいのかもしれない。
所要時間は約69分。通常炊飯より24分長い | 完成した「芳醇炊き」のご飯。表面の粘りが違う |
■白米2カップを、予約ありの「芳醇炊き」で炊いてみる
「芳醇炊き」を選択することで、通常とは違うご飯が味わえることが分かったわけだが、ここであえて吸水時間を設けたらどうなるだろう?という疑問が沸いた。そこで、午前10時すぎ頃に白米2カップ分を用意し、「芳醇炊き」の予約炊飯で、12時ちょうどに炊きあがるようセットしてみた。少なくとも40分はひたし時間が含まれるだろう。
お米が輝いていたので、驚いて思わずカメラを取りに走った。しかし写真にするのは難しい…… |
すると、ふたを開けてびっくり。ピカピカのご飯が現れた。お米1粒1粒のツヤと透明感が明らかに違うのだ。ひたし時間不要とはいっても、やはり実際にひたしてみると、仕上がりもパワーアップ! 有名ブランドの新米でぜひ試したいモードだ。
なお、予約操作そのものは、ほとんど迷うことなく完了した。
■「7分がゆ」を作ってみる
体調が悪いときや、胃腸が弱っているとき、たまに食べたくなるおかゆ。「炭炊釜」にもメニューに「おかゆ」が用意されているので試してみた。
白米1カップをいれたら、内なべの「おかゆ」の水位目盛を見ながら水加減を調整する。通常炊飯なら3.5合に相当する量の水だ。
所要時間は1時間程度だっただろうか。あのお米の量でここまで膨れるのか、と感心するくらい、まったり柔らかい7分がゆが完成していた。
炊飯器で「おかゆ」は特に珍しい機能ではないのだが、「誰かが作ってくれるもの」というイメージがあるせいか、はたまた、おかゆを食べる習慣がないせいか、筆者の周りで、この機能を自分で使ったことがある人はかなり少ないようだ。炊飯器でおかゆができると知っておけば、いざというとき便利なはずなのだが……
なお「炭炊釜」のおかゆは0.5合炊きも可能だ。また、通常炊飯に比べると時間がかかるが、おかゆにも「お急ぎ」を適用できる。炊飯スイッチを2回押すと、通常より約10分早く仕上がる。
こんなに水を入れて大丈夫なのかと心配したが | 水の量だけおかゆができていた | なんでもなくても、たまに食べるとホッとする |
「おかゆ」の設定と、できあがりの様子 |
■炊飯器で「リゾット」に挑戦
同じお米料理であるにも関わらず、なんだか面倒臭そうなイメージで一度も挑戦したことがなかったのが「リゾット」である。それが炊飯器でできるというのだから、試さないわけにはいかない。というわけで、人生初のリゾット作りは「炭炊釜」で行なうこととなった。
作ったのは取扱説明書に紹介されていた「基本のリゾット」だ。まず、内なべに、白米1カップ(4人分)、コンソメ、白ワイン、塩、胡椒、水、玉ねぎのみじん切りを入れる。あとは、メニューキーから「リゾット」を選んで、炊飯キーを押すだけだ。ブザーが鳴ったら、オリーブオイル、ガーリックパウダー、パルメザンチーズを混ぜて完成。
所要時間は20分程度と早い。発芽米は25~29分、玄米なら39~43分だそうだ。実に簡単なうえに、お米がアルデンテでおいしい。定番メニューにしたいほどの満足度。
手間がかかるのは玉ねぎのみじん切りくらいである。今ではみじん切りのレトルトパックなんかも売られているので、活用すればもっと時間短縮が可能だ。ホームパーティが好きな方なら、食事の量がちょっと足りないかな、と思ったらササッと用意できるし、満足してもらえること間違いなしだ。
「基本のリゾット」の材料 | 内なべに、白米1カップ(4人分)、コンソメ、白ワイン、塩、胡椒、水、玉ねぎのみじん切りを入れたら、「リゾット」で炊飯 | 炊きあがった直後のリゾット |
オリーブオイル、ガーリックパウダー、パルメザンチーズを加えてよく混ぜて完成 | トロッとしながらも、お米のアルデンテ感が残っていて、おいしいリゾットに |
「リゾット」の設定と、できあがりの様子 |
■「エコ炊飯」は本当に省電力だった!
2回目のラストは、炊飯メニューの中で異色の存在である「エコ炊飯」である。適用できるのは白米と無洗米のみで、ご飯の固さは選べず、「お急ぎ」も使えないが、外気温に応じた火力制御で、蒸気量にも配慮しつつ、省エネなんだとか。カタログによれば、3合炊きの場合、1回当たりの炊飯における消費電力量は、通常炊飯(白米・ふつう)が179.2Wh、エコ炊飯が157.4Whとある。
残念ながら、筆者は円に換算してくれないとピンと来ない……そこで、「エコワット」を使って測定してみることにした。
同じ日に、白米1カップ(ふつう)を通常炊飯と「エコ炊飯」で比較したところ、通常炊飯は所要時間45分に対して3円(3.1円/時)、CO2は0.07kg。エコ炊飯の場合、所要時間46分に対して2円(2.6円/時)、CO2は0.05kgとなった。確かにエコ炊飯はエコだったのだ!
気になるお味だが、やや固めのスッキリとした味で、固め好きにはおいしいご飯である。味まで「省」ではないので安心だ。
ただ、あえてメニューから「エコ炊飯」を選ぶのはどんなときだろう? という疑問は残る。利用者の感覚でいえば、その炊飯器を使うだけで省エネだと感じられるほうがありがたいのではないだろうか。
「エコ炊飯」は専用キーがあってもいいように思う | 「エコ炊飯」で炊いたご飯 | ご飯はしゃっきりして、やや固めだが、おいしい |
次回は玄米や雑穀米、炊き込みご飯などの仕上がりをレポートする。
2010年9月13日 00:00