長期レビュー
三菱電機「炭炊釜 NJ-VX」その1
三菱電機の「炭炊釜 NJ-VX」。おひつのような、つややかなデザインだ |
今回から3回に渡って、三菱IHジャー炊飯器「炭炊釜」NJ-VX101(以下、炭炊釜)をレポートさせていただく。製品の詳細についてはニュース記事をご覧いただくとして、ここでは使用感を中心にたっぷりとレポートさせていただこう。
■コンパクトな“オーディオ感”のあるデザイン。ハンドルもしゃもじ立てもない
三菱IHジャー炊飯器「炭炊釜」NJ-VX101 |
炊飯器は、一度購入したら5~10年は買い換えない製品だけに、次に購入しようと思った時に相当に進化されていて驚かされる。「炭炊釜」もまさにそのパターン。届いた箱をみて「ちいさ~!」と驚き、開封して「四角いぞ!」と目を丸くしてしまった。
やはり注目なのは、その独特の形状だ。炊飯器といえば、楕円っぽい丸みのあるお馴染みのデザインを思い浮かべるが、炭炊釜のデザインはカッチリとしたスクエアなデザイン。特に我が家に届いた「ルビーレッド」は、上にiPodが刺さっていても違和感なさそうな、オーディオ感が醸し出されている。
ふたの様子。上に空いているのは蒸気口 | 右側面のようす |
この炭炊釜は、炊飯中の蒸気をカットするという最上位モデル「蒸気レスIH NJ-XWA10J」の1つ下のモデル。蒸気レス機構は搭載していないが、サイズはさらにコンパクトになっているのだ。
拙宅の引き出し付きラックの中断に置いてみると、四角い形状が限られたスペースに収まりやすく、なかなか具合がいい。ラックの上にはオーブンレンジがあるが、どちらも美しいスクエアなレッドで、見た目にも美しい。偶然にもコーディネートできてしまった。
このスクエアデザインが採用されたことで、本体手前にあることが多い操作部の“出っ張り”も消えた。このため、フタを開けたときに内釜が手元に近づいたこともうれしいポイントだ。腕を伸ばさずに済むので、ごはんを盛るのが楽になりそうだ。
愛用中の炊飯器(左)と、炭炊釜 | 炭炊釜を設置したラックの様子。偶然にもオーブンレンジとの相性が良い |
小さくなったからといって、容量が少ないわけではない。しっかり5.5合が炊けるファミリーサイズである。そのため、本体のほとんどは、内釜に占められているような状態だ。
もう1つ注目したいのが、ボディ部に用意された大型液晶だ。液晶サイズは従来比で約1.3倍、文字サイズも4.0mmから5.5mmに拡大していることもあって、大きな文字でハッキリと見やすい。実は筆者は、徐々にではあるが確実に老眼への階段を上っているため、見るべき情報がピタッと入ってくるこの液晶はそれだけで嬉しい。機械の操作が苦手な方にもやさしいはずである。これも好感度アップポイントだ。
そういえば、「これまであったものが何かない!?」と思っていたら、炊飯器にありがちなハンドルと、しゃもじ用のフックがなかった。よくよく考えれば、これらはどちらもなくてそこまで困らないものだ。しゃもじ受けは本体とは別に付属されており、横でも縦でもしゃもじを置ける仕様となっている。
ふたを開けたところ。丸い網状のパーツは、放熱板のフィルター | 放熱板をはずしたところ | 放熱板の裏側にある、カートリッジ。沸騰したときに受け止めたうまみ成分を、むらし時に還元する役割がある |
カートリッジの中には、らせんパッキンがある | 放熱板のパーツ。一番左はフィルター。実は放熱板には、さらにブッシュと呼ばれる小さなパーツがついている | フィルターは簡単にとりはずせる |
ふたの開閉に用いるフックボタン | 内なべをとりはずした様子 |
左から、計量カップと、無洗米用計量カップ、しゃもじ受け、しゃもじ | しゃもじを横にした状態 | しゃもじは立てられる |
■浸し時間なしでもおいしいごはん&玄米。わずか20分の早炊きも
デザイン面では使用する前から満足だったが、炊飯器の真価はおいしいごはんが手間なく炊けるかという点。さっそく白米(ミルキークイーン)を炊いてみよう。
内なべは、直接お米が洗える |
まずは、お米を洗うところからスタート。嬉しかったのは、内釜でお米を洗えると明記されていることだった。昔はコーティングが傷むのでやらないで欲しいというものが多かったように思うのだが、「時代は変わったのね」と軽く感動した(笑)
しかも、この内釜の目盛表示が見やすい。手早く準備したいときなど、目盛がよく見えないとイラッとしがちだが、炭炊釜の「Vぴた目盛」は、お世辞抜きで抜群の視認性を誇っている。ポイントは、のこぎりの刃のようなV字状の目盛りだ。これにより、0.5合単位でもハッキリ分かるのだからありがたい。水位合わせが気持ちよくできた。
次に、操作部のボタンを押して炊飯モードを選択する。ボタンは「お米キー」、「炊分けキー」、「メニューキー」の3種類。お米キーでは「白米→無洗米→発芽米→分づき米→玄米」でお米の種類を選択し、炊き分けキーでは「ふつう→かため→やわらか」で固さを選ぶ。メニューキーは「ふつう」「おかゆ」「炊込み」「健康玄米」「雑穀米」「リゾット」「エコ炊飯」のように、さまざまなメニューが選べる。このほか、通常の炊飯コースより時間をかけてごはんを炊く「芳醇炊きキー」というのもあり、バリエーションの豊富さが伺える。
内なべの「Vぴた目盛」。とても見やすい! | 操作・表示部と各種ボタン |
炊飯で一番うれしかったのは、ひたし時間を全く気にすることなく、おいしく炊きあげられる点だった。
普通の炊飯器なら、加熱前にしばらく浸し時間を置いて炊飯することが多い。しかし、炭炊釜なら、は超音波振動で吸水を促進する「可変超音波吸水」という機能により、お米の芯まで吸水させてくれるため、お米を水にひたさなくても、すぐに炊けるという。逆に水にひたすと、やわらかめのごはんになるというのだ。
炊飯ボタンを押した後、45分後に炊きあがると表示された。計画が立てやすくて非常にうれしい |
試しに、白米1カップを、ひたし時間なしでいきなり炊いてみた。内釜をセットしたら、ふたをして「炊飯キー」を押すだけだ。
45分後に炊きあがったご飯は、少量なのに米粒の表面にプリッとしたハリがあり、弾力がある。それでいながら、シャッキリとした歯ごたえでおいしい。細かいことを言うと、圧力鍋で炊いたようなムッチリした食感こそないものの、「手抜きして浸し時間を省略しました」という感じはまったくない。もし定食屋で出てきたら「このごはんおいしいな」と思うに違いない仕上がりである。
炊きあがりのようす |
完成したご飯 | 1粒1粒がツヤツヤしている | 食感は弾力のあるシャッキリ系 |
実は本製品には、便利な保温機能もある。それが、ムダな蒸気を逃がしつつ保温する「たべごろ保温」。この機能で5時間ほど保温した後に食べてみたところ、米粒が想像していたよりぷりっとしたままで、変色もなく、おいしく食べられた。これなら家族の食事に間に合わないお父さんが深夜に帰宅しても、おいしいごはんが食べられるに違いない。
たべごろ保温は、無駄な蒸気を逃がしながら、おひつのように保温する機能 | たべごろ保温で5時間保温した後のごはん。変色もなく、おいしく食べられた |
通常の炊飯のほか、早炊きもできるが、これが本当に早いというのも「炭炊釜」の特徴のひとつだ。「炊飯キー」を2回続けて押すことで、予熱と蒸らし時間を短縮する「お急ぎ」モードになる。通常45分少々かかる炊飯が、20分も短縮できるという。試しに2カップをお急ぎモードで炊いてみたところ、わずか22分で炊けてしまった。圧力鍋で炊くより早い! これにはびっくりしてしまった。
さらに驚いたのは、玄米も浸し時間ゼロで炊きあげられることだった。炊飯時間は約70分と、白米と比べると長めではあるが、今使っている炊飯器の玄米モードでは、数時間ひたした後に炊飯するので、それでも全然早い。しかも、食感はまったく遜色ない。昔は玄米とヨーグルトを一緒に炊くなどの工夫もしたが、これまでの苦労はなんだったのか!! と思うほどである。
ちなみに、炭炊釜は“蒸気レス”モデルではないが、筆者は全然気にならなかった。というのも、圧力鍋並みに勢いよく蒸気を排出するならともかく、炊飯器の蒸気はたかが知れている。炊飯中は棚の引き出しを手前にスライドさせれば何も問題はなかったからだ。
このほかにも、おかゆやリゾットなどのメニューも備えており、いずれもなかなかの出来。正直、ハマった。次回からは、実際に炊いたご飯の数々を、写真とともに具体的にご紹介していこう。
2010年9月6日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)