家電製品ミニレビュー
三菱「蒸気レスIH NJ-XS10J」
~世界初! 炊飯中に蒸気が出ない炊飯器
まずチェックしたのが、使い慣れた三菱電機のもの。が、そこで買うものが一気に決まってしまった。キューブPCじゃないの? と思うような見た目が、筆者の胸をガシっとつかんでしまったのだ。それは炊飯中に蒸気が出ないことをウリにした三菱の新機軸炊飯器である蒸気レスIH 「NJ-XS10J」である。
メーカー | 三菱 |
製品名 | NJ-XS10J |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入価格 | 79,800円 |
購入店 | ヨドバシカメラ |
●とても炊飯器らしくない外観
まずは特長的な外観から見て みよう。これまでのイメージだと、炊飯器は丸みを帯びているものなのだが、NJ-XS10Jはフラットである。外観は写真をパッとみてもわかる通りで、炊 飯器らしくない。サイズは253×348×230mm(幅×奥行×高さ)で、他メーカーと比べてみるとやや奥に長くなっているが、ひとり暮らし用の冷蔵庫 の上においてもスペースに余裕があったので、これまで通りの置き場に対応するだろう。ちなみに「なんだ、ついにキッチンにもPC置いたのかよ」とは、遊びにきた友人の言葉。
操作ボタンは天板の前部に集中している。メニュー類がシンプルであり、さらに液晶も大きいため確認がしやすい | 側面から見たところ。何も注釈がなければ炊飯器には見えないと思う | 背面も側面と同様に操作する部分はない |
フラットなボディもそうなのだが、驚いたのは底面にある排気ファン。排気ファンがある炊飯器ってあったかしらと思いつ つ、炊飯してみたところ、ファンの駆動音がちょっと大きく、なんだかキューブPCに思えてしまった。また独特のボディ形状のためか、炊飯器にはお約束と なっている取っ手がなく、運ぶときは底を持って運ぶしかない。幸い、底はほんのり温かい程度なので火傷の心配はないのだが、やはり取っ手は欲しかったなぁ と思う。
底面には排気ファンがある。炊飯時の駆動音はやや大きめだ | 電源ケーブルは巻き取り方式で、長さは1m | しゃもじ受けは左右に取り付けが可能 |
●蒸気レスで天井や壁が汚れない
最大の特長ともいえる蒸気 レス。仕組みを見てみると、発生した蒸気はフタ内部にあるカードリッジを経由して、前面にあるタンクに誘導される。カードリッジからタンクへは蒸気のみが 通過し、うまみは釜に戻るようになり、うまみ成分は2倍になったという。これらはすべて取り外し可能で、マメな掃除が必要。またタンクの水は炊飯ごとの洗 浄が推奨されている。フタを開けて見ると蒸気レスの仕組みがわかりやすい。放熱板からカードリッジを通って、手前のタンクに蒸気が移動していくのだ | タンクは片手で楽に取り外せる | タンクを外すと水位センサーや温度センサーがあるとわかる |
タンクの水位は決まっている。ガイドラインにはゆとりがあるので、テキトーでも合わせやすい | ガイドライン以上でも以下でも、警告文が液晶に表示されるため、炊飯が開始されない |
蒸気を水冷にすることで、炊飯中の蒸気が壁や天井に付着せず、カビや汚れを気にする必要がなくなった。また蒸気がでな い構造なので、棚に炊飯器を置く人、置きたい人にもオススメといったところだ。さらに蒸気がでないため、炊飯中のニオイもほとんどない。排気ファンからニ オイが出ているのだが、気がつかないレベルで、筆者も使用開始からしばらく気がつかなかった。
注意点とすれば「蒸気レス」なので、炊飯直後にフタを開けたときの蒸気もほとんどないと思ってしまいやすいところ。実際には、炊きあがり直後に フタを開けるとモワッと蒸気が立ち上る。そのため、若干、棚に置いた状態で開けるのには抵抗があるかもしれない。ちなみにほぐしたあとはそれほど蒸気は出 てこないので、棚に置く場合はときどき拭く程度でOKではないだろうか。
また説明書を読まないで使用すると、保温中にフタを開閉するとびっくりする。空気が動いて「ボコボコ」という音がするのだ。1度体験してしまえば気にならなくなるが、深夜は少し怖いと思ってしまった。
●粘りけの少ない炊飯が得意
先代の三菱製炊飯器とNJ- XS10Jの味は、当然といえば当然だが違っていた。味の確認は、食べ慣れた実家の田んぼのお米で行なった先代もけっこういい炊きあがりだったのだが、釜 底のお米がつぶれやすかった。対して、NJ-XS10Jは場所を問わずお米の形が整っているし、ツヤツヤしており、さらに香りもいい。また試食した範囲で だが、他メーカーと比べて粘りけが少なく感じた。ここは好みで別れるところだろうが、一粒一粒を口の中で確認できる炊きあがりは気に入っている。実家はガス炊き(小学校くらいまではかまどだった)におひつという環境だったので、正直、炊飯器のお米はおいしいけど、ガス炊きにはかなわないよなぁ……と思っていたのだが、ちょっと考えが変わった。やや路線は異なるが、確かに、実家のお米のうまさ引き出しているのだ。
堅さを「ふつう」で炊飯し終わった直後。お米の形がよく、ツヤツヤしているのがよくわかると思う | 端のほうであっても炊きムラが生じておらず、全体的にふっくらと炊きあげてくれている | 少し持ち上げてみると、お米の形がとてもキレイだとわかる |
構造を見てみると、ヒーターは5つ用意されており、底に3連リング上の「釜底トリプルリングIH」、銅周りヒーター、そしてふたヒーター。三菱 曰くの「五重全面加熱」により、釜内の熱ムラを可能な限り押さえつつ、炊飯に大切な釜底の火力を強化している。釜は評価の高いNJ-WS10Aの本炭釜で はなく、金属5層構造の釜を、内釜だけでなく、銅周りや内フタも炭コーディングして炭特有の遠赤外線効果を得て、「五重全面加熱」の効果をより高めている のだ。
ふたヒーターは放熱板とセットで運用 | 釜は5層金属釜を炭コーティングしたもので、釜にはシリアルナンバーが記載されている |
液晶画面には炊飯時間だけでなく、保温開始から何時間経過したかという情報も表示される |
保温は「たべごろ保温」「一定保温」の2つのモードがある。初期状態では「たべごろ保温」が設定されており、これはおひつに移した状態と同じ温 度で保温するモード。温度でいえば約60℃くらいで、ムダな蒸気を逃しつつ保温するため、おひつに近い状態なのだ。ただ「たべごろ保温」は炊飯後から12 時間までで、以降は「一定保温」に切り替わる。「一定保温」の温度は約72℃。2つのモードを合わせて、保温は最大24時間が推奨されている。また保温温 度が異なるので、もし「たべごろ保温」で冷たく感じたら「一定保温」に変更するといい。
●お手入れはやや面倒
マニュアルを見ると、洗浄に対してはかなり細かい説明がなされている。おそらく、蒸気レス構造のためだと思われるが、洗浄するパーツが多いのは面倒に感じる。洗浄するパーツは、タンクと放熱版、カードリッジの3つ。毎回洗う場合、3回に1回洗った場合と比べてみたが、味には変化を感じられなかった。 本来、炊飯器は内フタなども毎回キレイに拭くべきなのだが、ときどきのお掃除で済ませている人が多いのではないだろうか。筆者もそうなのだが、少なくとも 放熱板のパッキンはニオイがつきやすいので、面倒でも洗っておきたい。筆者はタンクに水を入れるついでに洗っている。
タンク本体はすすぐだけでも十分だが、タンクカバーの先端はしっかりと洗っておきたい | 放熱板とカードリッジの固定レバーは大きく、取り外しは楽 | カードリッジ本体。ロックを外せば、内部を直接洗うことが可能に |
水で洗うくらいでもよさそう。ときどき内部のパッキンを外して洗うといい | 放熱版は毎回洗うよう心がけたい。パッキンにニオイがつきやすいのだ | 洗わないで2回炊いた直後の放熱板。少なくとも放熱板は毎回洗ってもらいたい |
タンクの水も頻繁に交換するので、最初はかなり面倒に感じた。だが、貯水量が増えると炊飯ボタンが無効化されるので、交換しないわけにはいかない。どうせ、タンクの水を換えるなら……という感じで、ほかのパーツを洗うのもそれほど面倒に感じなくなった。
気温が高くなり始めるこれからの季節は、特に、カビの発生や、水が腐るといったこともあるので、入手した段階から毎回洗うクセを付けておくべきだろう。
●設置場所を選ばなくて良いのが魅力
炊飯時の蒸気は壁や天 井を汚すだけでなく、室内の湿度も上昇させるばかりかニオイも充満してしまう。そこに新機軸発想の水冷方式で蒸気レスで、新しい形を提案したNJ- XS10Jは面白い存在だ。見かけからもキッチンだけでなく、ダイニングにあっても違和感がない。設置スペースが限られている人にもおすすめ。蒸気周りの 問題解決とともに、おいしいご飯を食べられるので、筆者と同じ環境にあるアパートやマンション住まいの人によ~くチェックしてもらいたい。
2009年3月27日 00:02
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