長期レビュー

アイロボット「ルンバ 577」 その2

~便利に使えるかどうかは生活スタイルが鍵
by 阿部 夏子

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



アイロボット「ルンバ 577」

 アイロボット「ルンバ」のロングレビュー2回目をお届けする。前回は、ルンバの特徴や使ってみての所感などを簡単にまとめたが、今回は、ルンバと普通の掃除機の違い、私が考えるルンバが合う人、合わない人についてお話ししたいと思う。  

1回目はこちらから。

普通の掃除機とここが違う

ルンバの収納場所は、基本的に充電ベースとなる

 人口知能を搭載したお掃除ロボットのルンバは、1度スイッチを入れたら勝手に部屋の中を検知してお掃除、掃除後は自分で充電台に戻っているというなんともお利口な製品だ。外出前にスイッチを入れておけば、帰宅後の部屋はピカピカ。共働きで、昼間は誰も自宅にいない我家ではかなり重宝している。

 しかし、ルンバはお掃除ロボットというジャンルのため、普通の掃除機とはかなり性格が異なる。ここでは、まず普通の掃除機と違う点をまとめて紹介しよう。

 

1.掃除にかかる時間が違う
 前回紹介した通り、ルンバでは同じ箇所を4回通って徹底的に掃除を行なう。そのため、普通に掃除機をかけた時に比べると、時間がずっとかかるのだ。たとえば、6畳の部屋を掃除するのにかかる時間は約30分。一般的な掃除機で6畳の部屋を掃除するのにかかる時間と比べると、4倍以上の時間がかかると考えて良い。

2.掃除の前に部屋を片付ける必要がある
 ルンバは、室内にある障害物をセンサーで検知して掃除を行なうが、物が床に転がっている状態では効率的な掃除ができない。そのため、ルンバを起動させる前に、床に転がっている本や、電源コードなどある程度片付ける必要がある。

電源コードなどもルンバの掃除を妨げる原因になる説明書にも「清掃の準備をする」との指示がある

3.掃除する場所はルンバ任せ
 掃除機をかける時のシチュエーションの1つとして「何かをこぼしたから」というのがある。しかし、ルンバでは、基本的に人間が操作することはないため、狙った場所をきれいにしたいという用途には向かない。

 以上のように、一般的な掃除機とはかなり性格が違うこの製品。上に書いた事柄だけを見ると、これってホントに使えるの? と不安に感じる人も多いかもしれない。ただ、もっとも大きく違うのは「使い方」だ。この使い方が合う人にとって、ルンバは生活を変えるといって良いほど便利な製品になる。

合う人と合わないひとがいる

 繰り返しになるが、人工知能を搭載しているルンバの一番のキモは、なんといっても「勝手にお掃除してくれる」という点。ただし、それは効率的であるというわけではない。前述したように6畳程度の部屋を掃除するのにかかる時間は30分。はっきり言って、掃除機で掃除した方がずっと早い。それなりの運転音はするし、人に向かって動いてくるということもある。断言してしまうが、人のいる部屋でルンバを使うというのは間違った使い方だ。

フローリングのマンションに住む私にとってルンバはとても便利に使える製品となった

 私の場合、仕事に行く前にスイッチを押してそのまま出かける。するとルンバが勝手に部屋を掃除して、自分で充電台に戻っているというわけだ。人がいない時間であれば、長い掃除時間も音も気にならない。

 実際、3カ月近くルンバのある生活を送ってみて、今の正直な感想は「もう手放せないかも」というもの。ただし、改めて考えてみるとそれは、私のライフスタイルがルンバにぴったりと合っているからではないかなとも思うのだ。

 それは、段差の少ないマンション住まいであること、食事はテーブルとイスで床に直接座ることはないということ、共働きであること、割とキレイ好きであることの4つだ。

 逆に言うと、段差が多い一軒家に住んでいる人、ちゃぶ台やこたつなど床に座って食事をしている人、昼間いつも誰かが家にいるという人、雑誌や洋服が出しっぱなしという人にはルンバは合わないと思う。

扉の下の金具などこの程度の段差であれば何の問題もなく乗り越えられる

 まずは段差について。ルンバは、部屋を自動で次々に掃除してくれるが、約2cm以上の段差は乗り越えられない。そのため部屋と部屋の間に段差がある場合は、ルンバを手で持ってほかの部屋に持っていく必要があるのだ。

 マンション住まいの我家の場合、自動で掃除できなかった場所は洗面所だけ。そのほかのリビング、キッチン、寝室、クローゼット、客間などはドアを開け放しておくだけで全て掃除してくれた。階段や段差が多く、部屋ごとにルンバを持っていかないといけないような状況だとルンバの「自動で掃除してくれる」という魅力が半減してしまうだろう。


部屋と部屋の間に段差がない我家では、複数の部屋を一度に掃除してくれる

 次に、食事をする場所についてだ。ちゃぶ台やこたつなど床が近い生活をしていると、つい床に物を置きがちになってしまう。ルンバを使う前の片づけの労力が大きくなってしまうのだ。

 昼間、人がいる場合については前述の通り。30分以上も掃除機の運転音がする状況で、室内にいるのはストレスも溜まるだろう。

 最後に、物を出しっぱなしにしているという点。これは、キレイ好きとかそうじゃないというよりも床に物を置くか、置かないかというところがポイントになりそうだ。私の場合、決してキレイ好きではないが、床の上には物は置かない。ソファの上や、クローゼットの中はごちゃごちゃでも、床の上には物がないため、ルンバで掃除をかける前の準備が短時間で終わるのだ。ついつい床に物を置きがちな人は、その分事前の準備が長くかかってしまうため、ルンバユーザーには向かないかもしれない。

 ごちゃごちゃと色々書いてきたが、一言でいうと要は、生活スタイルが欧米スタイルなのか、和風スタイルなのか、というところだと思う。もともとルンバはアメリカで開発・製品化されたもので、アメリカの生活スタイルが基盤となっている。私としては、ルンバはものすごくお勧めしたい製品だが、万人にお勧めできるタイプの製品ではないということを明記しておきたい。

人間がやるよりも圧倒的にきれいにしてくれる

 勝手に掃除してくれるルンバのもう1つの大きな魅力は「きれいに掃除してくれる」というところだ。ルンバは、掃除するのに時間がかかると書いたが、それもそのはず、ルンバは同じポイントを4回も掃除してくれるのだ。独自の「3段階クリーニングシステム」で、それこそ舐めるように掃除するので、人が掃除するよりもずっときれいに掃除してくれる。

2つのブラシが内蔵されているデュアルパワーブラシで、ゴミをかきこむゴミをかきだすエッジクリーニングブラシは、本体からはみ出るように設置されているエッジクリーニングブラシが壁の隅のゴミも残さず掃除してくれる

 たとえば、人が掃除をかける場合、その時の気持ちに左右されたりしていないだろうか。時間がないからさっとかけるだけでおしまいにしている時や、逆にきっちり掃除したい気分だから、隅から隅まで掃除機をかける時など。気分のムラで仕上がりも違う。しかし、当然ながらルンバは機械なので、そのようなムラがない。いつでも丁寧に仕上げてくれるのだ。

 また、高さ10cmの円盤型で人間が掃除しにくいベッドの下やテーブルの下も残さず掃除してくれる。

 特にベッドの下はホコリが溜まりやすく、1週間掃除していないとあっという間にホコリだらけになってしまうが、ルンバを使い始めてからはベッドの下を自分で掃除しなくても良くなった。ベッドの下であろうと、ルンバにとっては床であることには変わりない。リビングの床と同じようにチリひとつない状態に仕上げてくれるのだ。

ベッドの下やソファーの下など人間が掃除しずらい場所も残さず掃除してくれるベッドの奥や隅まできっちり掃除してくれるのはルンバならではだろう

ルンバはメインとして充分使える

 今回のレビューでは、あえてルンバのネガティブな側面も併せて紹介した。ただ、それはあくまで合う人と合わない人がいるというだけだ。繰り返しになるが、私にとっては「生活を変えた」といって良いほど革新的な製品だ。

 自宅にあるルンバを見て良く聞かれるのが「でもルンバ以外にも掃除機は必要でしょ?」ということ。ルンバはサブ掃除機として使うというイメージが強いようなのだ。確かに、使いたい時にさっと取り出して使うことができない、段差に弱いなどの弱点があるため、ルンバ1台で家の掃除を全てカバーできないという弱点はある。

 ただ、私個人の意見としては「ルンバがメイン、普通の掃除機がサブ」で良いと思う。ルンバを週2回ほど起動させておけば、自宅の90%以上をルンバが掃除してくれるので、普通の掃除機を使って自分で掃除するのは残りの10%だけなのだ。これだったら、キャニスター型の本格的な掃除機は必要ない。スティック型や、もっといえばハンディ型でも事足りるのではないかと思うくらいだ。ルンバにプラスして、もう1台掃除機が必要というのは、掃除機を選ぶうえではやはり大きなマイナス要因となってしまうが、サブの一台は安くてコンパクトな掃除機で良いと考えれば、考え方も変わるのではないだろうか。

 最終回となる次回は、リモコンやお掃除ナビを使ったルンバ活用編、さらに気になるお手入れの方法を中心に紹介する予定だ。



その1  /  その2  /  その3



2010年8月25日 00:00