長期レビュー
日立「圧力スチーム 極上炊き 蒸気リサイクル RZ-JV100K」 その2
前回は白米を普通モードと極上モードで炊飯した違いなどをレビューしたが、今回は炊き込みごはんや、調理モードを使ったレシピを紹介しよう。なお、今シーズンの炊飯器のトレンドをまず知りたいという人はこちらから。
■日立ご自慢の「打ち込み鉄釜」は何が打ち込まれている?
実際の調理に移る前に、前回紹介できなかった内釜の特徴について最初に説明しておこう。
炊飯器のトレンド編で紹介したとおり、通常のIHは鉄やステンレスに最適な20kHzが利用されている。中でも磁石がよくくっつく鉄が一番発熱効率がいい。この日立の炊飯器の内釜は、他社と同様に大部分がアルミでできているが、釜の製造工程で、溶解した鉄を高圧で吹きつけ、鉄の層を作り発熱効率のよい内釜になっている。製造工程であたかも鉄を打ち込んでいるような工程を取り入れており、これを日立では「溶射打ち込み鉄製法」と呼んでいるのだ。このあたりは製鉄にも精通している日立の強みと言えるだろう。こうしてできたのが「打込み鉄釜」で、蓄熱性と断熱性を合わせ持つ内釜だ。
打込み鉄釜の製造工程。ドロドロに溶かした鉄を高圧で拭きつけ、IHの発熱層を形成する(写真提供:日立アプライアンス) | 日立ならではの内釜と言える「溶射打ち込み鉄製法」で製造された「打込み鉄釜」 |
内釜の重さは0.9kg、厚みは3mmとなっている。ここに4合の米と水を入れても重さは1.8kgなので、オールカラーの女性誌2~3冊ぶんの重さだ。これならお年寄りや子供でも持ち運びできるだろう。さらにお年寄りや視力の弱い人には、ハッキリと印刷された水位の目盛りが助かることだろう。古い機種では、刻印だけとなっており角度によっては読みづらかったが、この炊飯器なら多少暗いキッチンでもハッキリ読み取れる。
内釜の厚みは3mm | 黒くどっしりとして見えるが900gしかなく、見た目より重くない | 白でハッキリと大きく印刷された目盛りは、暗いキッチンでもハッキリ見える |
内釜の内部は、熱をよく伝える金の粒子をまぜたフッ素コーティングされており、キズが付きにくく焦げ付きにくい釜になっている。しかも5年間のメーカー保証があるので、安心して内釜でお米を研げる点がうれしい。
さらに直接内釜とは関係しないが、釜を包み込むように断熱材が入っているため、炊き上がり後スグに電源を切っても、1時間以上はホカホカのご飯をいただける。
■多彩なメニューでも簡単操作の液晶パネル
炊飯器の多機能化にともない、その操作方法も難しくなってきている。白米を炊くのはどのメーカーでも簡単に操作できるようにしているが、いざ炊き込みご飯や玄米、おかゆを作ろうとなると戸惑ってしまうことも多い。
この炊飯器は、2つのメニューを組み合わせることで、多彩なメニューを簡単に操作、調理できるようにしている。1つめは、炊くお米の種類。「お米(調理)」ボタンを押すと、次のような種類のお米が炊けるようになっている。
「調理」のみ特殊な位置づけになっており、次の操作によって煮込み料理や蒸し物、温泉たまごにケーキなども作れる。
お米の種類を選んだら、今度は「メニュー(保温)」ボタンで、炊き方や炊き込みご飯、調理のメニューを選ぶ。
「白米」「無洗米」「五穀米」「発芽玄米」「玄米」「調理」からお米の種類や調理モードを選択する | 次に炊き方を選ぶ。選択中のものが、点滅表示されるようになっている |
ふつう | 省電力でおいしく炊く |
極上 | おいしさを重視して普通の硬さに炊く |
極上硬 | おいしさを重視して硬めに炊く |
極上軟 | おいしさを重視して柔らかめに炊く |
快速 | 炊き上がり時間を最優先する |
炊込み | 炊き込みご飯を作る |
おかゆ | おかゆを作る |
特筆すべきは「快速」だ。1合なら最速で15分、3合でも19分で炊き上げてしまうので、仕事の帰りが遅くなって子供たちがお腹を空かせているときには重宝する。ただ早さを最優先するため、蒸気が多くなり、味はやや落ちてしまう。
また「調理」を選んだ場合は、次のようなメニューが表示される。
煮込み | 時間を指定して煮込めるので、煮すぎて具材が崩れる心配がない |
雑炊 | 雑炊を作る専用のメニュー |
蒸し | 茶碗蒸しやシューマイ、肉まんなどの蒸し料理を時間指定できる |
温泉卵 | 白身もトロトロのものから、黄身だけトロトロのものまで好みの温泉たまごが作れる |
ケーキ | スポンジケーキ類にミートローフまで作れてしまう。もちろん加熱時間の指定が可能 |
「調理」を選ぶと煮込み料理や蒸し物、ケーキなどが作れる |
マニュアルの最後には、さまざまなレシピが載っているので、最初はこれを見ながら煮込み時間の具合を探るといいだろう。使い込めば、ガスコンロより便利に使える機能だ。
このようにお米と種類と炊き方のさまざまな組み合わせが選べるので、「調理」を除いた炊飯のバリエーションは、全部で22タイプ。組み合わせは、すべて大型の液晶に文字として表示(お米の種類以外)されるので、マークの位置で示される炊飯器に比べると操作性は格段にいい。
■炊き込みご飯を作ってみた
本来炊き込みご飯は、自分で具材を切って味付けするが、実験なので味が変化しないように市販の炊き込みご飯の素を使って炊いてみた。
スーパーでよく見かける、この炊き込みご飯の素を利用 | 研いだお米の中に、炊き込みご飯の素を入れる | お米の種類を「白米」、炊き方を「炊込み」にして炊飯開始。 |
作り方は、炊き込みご飯の素の説明に従った。ただ説明には、普通に炊飯するとあったが、ここでは「炊込み」モードを使い炊いてみた。結果はご覧の通り。
インスタント臭さを消すために、針しょうがをトッピング | おいしくいただきました! |
水分の含まれている具材だったので、若干柔らかめに仕上がったがおいしい炊き込みご飯が完成。今回は市販の商品を使ったが、炊飯器の炊き込みメニューは、炊き込みご飯の素を使うというより、自分で作る場合に向いているような感じだ。
炊き込みご飯の素を使う場合は、若干水を少なめにするか、極上の硬めで炊くといいだろう。
■独立して設けられた少量ボタンが特徴
今日はお父さんが残業、お姉ちゃんが外食なので、2合も炊けば十分という場合が多々あるものだ。ただ5合炊きの炊飯器で1~2合を炊くのは、どんなに水の量を調整してもおいしく炊き上がらないもの。
一般的な炊飯器には、炊飯モードの1つとして少量の白米を炊くモードなどがあるが、この炊飯器は「少量」ボタンが独立しているのが特徴的だ。「白米」と「無洗米」の場合、「ふつう」「極上」「極上硬」「極上軟」でそれぞれ少量の炊飯が可能となっている。2合をチョット硬めに、柔らかめに炊きたいというときにうれしい機能。実験してみたところ、1合を極上硬で炊いたご飯も、4合で炊いたご飯もおいしく、食感・味ともに変わらない炊き上がりになった。
「少量」ボタンを押すたびに、少量炊飯と通常炊飯が切り替わる | 変化するのは、炊く時間のようだ |
また「五穀米」「発芽玄米」「玄米」では、「ふつう」で炊いたとき「少量」ボタンが有効になるので、どんなご飯でもチョット炊きができる点がうれしい。
ただ難点が1つある。朝ごはんと晩ごはんを作る人が違うときだ。これはまさに筆者宅の話なのだが、朝は奥さんが「少量」モードで使い、筆者が晩にご飯を炊いたら4合を「少量」モードで炊いてしまったというアクシデントが! 食べられないというほどではないが、やはり炊き上がりが少し違う感じがした。「少量」モードは次回の炊飯時にも引き継がれるので、炊飯ボタンを押す前に必ず「少量」モードをチェックする必要がある。
■予約炊飯と浸し炊飯
予約炊飯のメモリーは標準的な2つ。筆者宅のように家族全員が集まってご飯の時間が毎日同じという場合は、購入時に1回セットするだけでほとんど設定する必要もなく、メモリーが足りなくなることもない。
予約炊飯のメモリーは2つ | 「時」と「分」ボタンを使って、予約時間の変更が可能だ |
時刻は10分単位に設定できるので、かなり細かい炊き上がり時刻を指定できると言えるだろう。また注意したいのが、先に紹介した少量モードだ。前回の状態が保持されるので、予約を確定する前に必ずチェックしよう。
浸し炊飯の予約。写真では、30分浸した後、極上モードで白米を炊く設定になっている |
また予約モードの一環として、手動の浸し炊飯ができるようになっている。「ふつう」や「極上」モードで炊けば、炊飯器が自動で浸し工程も行なってくれるが、あえて手動でお米を浸してから炊飯したいという場合に使うといいだろう。浸し時間が10~60分を10分刻みで指定が可能だ。
■調理モードで豚の角煮に挑戦!
炊飯器で作った豚の角煮は、肉々した食感と、プルプルのコラーゲンが美味!コンビーフのようにパサパサになることがない。 |
調理モードのレシピで気になったのは豚の角煮。子供も筆者も大好物だが、圧力鍋を使うとスグに豚がコンビーフ状になってしまうし、普通の鍋で作ると火から離れられないので、時間がないと作れないメニューだ。
この炊飯器を使った豚の角煮は、肉々した食感が楽しめるプルプルの角煮。まずは40分豚としょうがを内釜に入れて下ゆでだ。これで豚のアクを取り除いてやる。マニュアルに掲載されているレシピでは、ゆで汁を捨ててしまっているが、筆者はもったいなくてそんなことはできない! ゆで汁は鍋に移して、表面の脂を取り除いてスープにしてみた。
材料は豚バラとしょうが、調味液に水 | まずは豚の下ゆで。しょうがと水を入れ40分煮込む | 落としぶたの代わりにお皿を乗せて加熱する |
下ゆでが終わったら味を加えて、再び50分加熱してできあがり。レシピ通りに作ると、ちょっと薄味の角煮になったが、高血圧を患う筆者にはこのぐらいでじゅうぶん!と奥さんに怒られた……
ゆで汁はもったいないので、脂をすくってスープにした | 調味液を入れ、お皿の落としぶたをする | 「調理」の「煮込み」を選び、煮込み時間を50分にセットして調理開始。あとは買い物に出かけられる |
調理にかかる時間は90分と、普通の鍋で作るのとさほど時間がかからないが、ゆでている間に買い物に行ったりできる点に炊飯器角煮に軍配が上がるだろう。
というわけで今回は炊き込みご飯や調理モードの基礎編を紹介してきた。最終回となる次回は自宅を空ける時間が多い人には気になる保温性能について、さらに手入れのしやすさなんかを中心に お伝えしようと思う。
2009年10月19日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)