【特別企画】

やじうま文房具Watch いちばん使える100円ボールペンはコレだ! 前編

by 編集部

文房具の中でも、馴染み深いヤツ

 普段、何気なく使っている黒いボールペン。皆さんも、愛用の1本があるのではないだろうか。ひと昔前までは、ボールペンというと郵便局や銀行で使われている出来合いのものをイメージするかもしれないが、それが今では、滑らかな書き味の油性ボールペンや、水性インクと油性インクの長所を併せ持ったゲルインクボールペンなど、バリエーションに富んでいる。

 家電Watchでもこれまで、多色ボールペンや消せるボールペンなど、新しい機能や性質を持つペンを多く取り上げてきた。ただし、それらは既存品に比べやや値段が高い。値段が高ければ使いやすいのは当たり前だ。

 それなら、私たちが普段接する機会が多い、100円の何気ないボールペンではどうだろう。100円ボールペンとひと括りにしても、インクの種類から太さ、機能までさまざまだ。この中にもきっと、自分にとって使いやすい、ベストの1本があるに違いない。

 そこで今回、編集部では「100円以下」「黒ボールペン」という条件を設け、該当する黒色ボールペン計72本を一気に購入した。ライター氏を含む計5人が書き味や使い心地を比べ、それぞれのイチ押しの1本を前編と後編に分けてご紹介しよう。


店頭の100円ボールペン、片っ端から使いました

インクの発色、書き心地、使用感の3つを確認

 今回の検証は、「100円以下」「黒ボールペン」という条件に該当した計72本のボールペンを、5人が片っ端から使うところから始まった。

 まず最初のテストは、それぞれベストの5本を選んだ。選ぶ基準は、インクの発色、書き心地、使用感の3つ。会議室の机に紙を1枚だけ敷き、その紙に書き慣れた自分の名前を記していく。選ぶ基準を1本1本確認しながら、全てのボールペンを使用した。片っ端から使っていくと、自分のボールペンの好みが、だんだんとわかってくる。「もう握っただけでわかる! 」という声も上がっていたほどだ。

 各自「コレだ! 」と思う上位5本を選んだところで、次のテストでは、実際に日常生活で約3週間使ってみる。仕事やプライベート、日常の雑務の中など、それぞれの用途や生活スタイルに合わせて、自ら選んだ5本のボールペンを使い比べるのが狙いだ。そして、自分の好みや用途にピッタリなベストの1本を決定した。

黒ボールペンは100円以下でもたくさんある片っ端から試してみました書き込んだあとの検証用紙

 

ボールペン全体ではゲルインクと進化系油性インクが主流

 ベストの1本を発表する前に、昨今のボールペンのトレンドを押さえておこう。そもそもボールペンとは、紙をなぞる際に、ペン先に収まっているごく小さな金属の球(ボール)が回転し、インクが出てくるしくみの筆記具のことを指す。よくボールペンに書かれている0.5mmとか0.7mmというのは、このペン先のボール径のことをいい、筆記線の太さの指標となる。

 ボールペンのインクには大きく分けて3つの種類がある。油性、水性、そして油性と水性の特徴を併せ持つ「ゲルインク」だ。

油性水性ゲルインク

 油性ボールペンは、比較的廉価で製造できるということもあり、早くから国内に流通しはじめた。今でこそ日本は文具大国と言われているが、国内にボールペンが流通するようになってからまだ60年と、歴史は浅い。その中でも、もっとも古くからあるのが、油性ボールペンだ。特徴は、インクが滲みにくく、長時間変色しないことで、裏移りせずに筆記することができる点。よって、証明書のサインや書類などに使われることが多い。一方で、書き出しのかすれや、筆記中にインクがダマになったりするという欠点もあった。

 油性ボールペンの欠点を補う形で登場したのが、水性インクのボールペンだ。水性のインクは、インクの粘土が低いため、力をいれなくてもさらさらと書けるのが特徴。油性インクのように、書き出しがかすれたり、インクのダマもない。ただ、比較的発色が薄く、滲みやすいので、筆記対象を選ぶという弱点もあった。

 近年登場したゲルインクは、この水性から派生したものだ。油性ボールペンの使い勝手と、水性ボールペンの書き味の良さを併せ持ち、書き味は滑らかで、発色もよく、滲みにくいのが特徴だ。

上から、「uni ジェットストリーム」「PILOT フリクションボール」

 現在文房具店の店頭で目立った位置を占めているのが、ゲルインクと、油性でも滑らかに書けるタイプのボールペンだ。具体的な品名を挙げると、“消えるインク”で一躍有名になった 「PILOT フリクションボール」シリーズや、油性らしからぬ軽い書き心地にファンが多い「uni ジェットストリーム」、“世界最低粘度”を謳う「ぺんてる ビクーニャ」などだろう。

 ただしこれら高機能インクのボールペンは、おおむね150円台以上の価格になっている。今回の100円以下という括りでは、これら最新のインクを搭載したペンはほとんど除外され、ゲルインクは全体の20%と少なかった。

100円でもラバーやクリップは当たりまえ

 ボールペンのキモとなるインクについてみたところで、100円ボールペンのそのほかの機能についても確認したい。

 今回用意したボールペンの外見だけ見ると、キャップが付いている「キャップ式」と、ペンの末端をノックしてペン先を繰り出す「ノック式」の2つに大別できる。さらに、握る部分にラバー素材が付いているものと付いていないもの、クリップがバネ式になっているものとなっていないものがある。

キャップ式ノック式ラバーの有無
クリップがバネ式のものもあるつまむと開く

 ペンの持ち手部分に設けられているラバーは、ペンの軸の硬さから指を守り、ペンを握りやすくする効果があり、長時間の筆記に適している。今回試したボールペンのうち、ラバーが付いているものは約78%にのぼった。100円以下のものでも、大半のボールペンのグリップ部にはラバーが付いていることがわかった。

 ペンをどこかに引っ掛けておけるクリップも、ほとんどのペンについていたが、クリップ部分がバネ式ではさめるようになっているタイプは、全体の約15%に留まった。

 ちなみに、今回試したボールペンの中でラバーとバネ式クリップの両方を備えていたのは14%。100円以下といえど、機能に富み、コストパフォーマンスの良いボールペンも探せばあるのだ。

 またメーカー別で見ると、今回試した72本のうち、ZEBRAとPILOTの製品がそれぞれ20本ずつで、全体の約56%を占める結果となった。

 前置きが長くなってしまったが、以上のような流れをつかんだ上で、編集部スタッフのイチ押し製品を見ていこう。

 


走り書きに便利! インクの滲みやかすれがないペン ~ZEBRA「SARASA CLIP 0.5」 by 小林 樹


順位製品名感触
1ZEBRA「SARASA CLIP 0.5」線は太すぎず、インクの発色は濃く、にじみやかすれもでない。速記時にもムラのない線が安定して引ける。クリップが可動式で紙はさめたり、ラバーが滑りにくかったりと、インクも本体も使いやすい。仕事で使うならコレ
2ZEBRA「MULTIBALL」書いた文字が上手に見えるペンといえばコレ。濃い発色で、インク流量は適度。色ムラがなく、文字が書いた端から乾いていくので滲まない。ただ、いちいちキャップを外すのが面倒なので惜しくも次点
3ZEBRA「HYPER JELL」インク流量は多めで、発色が良く、書き心地は滑らか。めりはりのついた字が書けるが、他の4本に比べるとほんの少しインク流量にムラを感じる
4uni「SigNo」細くて、繊細な字が書ける。手帳のような細かい場所に書き込むには便利。すべすべしたラバーが持ちやすい。インクの発色が他に比べてやや薄いのでこの順位
5PILOT「G-knock 0.5」発色、インク流量共に申し分ない。細くてきれいな字が書ける。ただ、速記などで使っていると、芯が紙に当たるときのブレが少し気になった

ZEBRA「SARASA CLIP 0.5」

 私は普段、メモは携帯に直接入力することが多い。だから、日常の中でペンを使う機会というと、取材や、先輩の話をメモする時、手帳に書き込む時などに限られてくる。

 ちょっとしたメモすら携帯で打つことが多いのに、未だに紙の手帳を使っているのも奇妙な話なのだが、ペンを使うメリットは、起動に時間をかけずに速記できる点、人の話を聞きながらでも書き込める点が挙げられるだろう。

 速記といっても、走り書きや人の話を聞きながら書いた文字は、かなり読みにくい。というか、自分にしか読めないと思う。せめて自分がしっかり判読するには、

・発色が良い
・書き味が滑らか
・文字が滲まない
・インクの乾きが早い
・カスレやムラがない

という条件を満たした、インクの滲みやかすれがなく、発色が良いペンが理想だ。

 今回私がベストの一本に選んだZEBRA「SARASA CLIP 0.5mm」(以下、サラサ)は、インクの流量がまさに理想的なペンである。発色は漆黒と呼ぶにちょうどいい、鮮やかな黒色だ。速記していても、滲んだりかすれてくることはないインクは優秀。書き味は滑らかで、その名の通りサラサラと力をいれなくても書ける。

 速記だけでなく、さまざまなシチュエーションに対応できるのも、サラサの特徴だ。手帳など細かいところに書き込む際や、自分の名前や住所を一文字一文字しっかり書く時にも、筆記線は太すぎず、はっきりと文字が書ける。芯がブレずに安定しているため、図などを描くときにもぴったりだ。

 また、ノック式なので、キャップを外す手間もいらず、起動性がいい。さらに、付属のクリップにはバネがついていて可動するので、メモやノートを挟むことができる。

 グリップ部分のラバーも滑りにくく、持ち運んで使うのに十分だろう。100円だからと言って、本体の作りがちゃちではない。これだけ書き味の良いインクと、しっかりした本体で、100円という価格は、かなりお得感がある。

 走り書きの多い人、さまざまなシチュエーションでペンを使うことがある人にはお勧めの1本だ。

ZEBRA
http://www.zebra.co.jp/index.html
製品情報
http://www.zebra.co.jp/pro/sarasa-clip/index.html

 


画数が多い漢字もしっかり書きたい人にお勧め ~無印良品「さらさら描けるゲルボールペン ノック式・0.5mm・黒」 by 正藤 慶一


順位製品名感触
1無印良品「さらさら描けるゲルボールペンノック式・0.5mm・黒」画数の多い字も丁寧に書ける操作性の高さが良い。ノック式も好みで◎
2ぺんてる「ハイブリッド K175」評価は1位と同じだが、好みじゃないフタ式。フタだけなくしそうで怖い
3ZEBRA「ジムノックJK 0.5」書きやすさは上位2つに負けないものの、細く握りにくい。手が小さい人向け
4PILOT「V CORN(ブイコーン) 0.5」インクの出は最高。非常に書きやすいが、水性のため細かい部分が読みにくい
5PILOT「チューズ07」評価は4位と同じだが、グリップ部にゴムがない点が残念。太めだが書きやすい

無印良品「さらさら描けるゲルボールペン ノック式・0.5mm・黒」

 私が1番に選んだボールペンは、無印良品の「さらさら描けるゲルボールペン ノック式・0.5mm・黒」。理由は、画数が多い漢字も、端折らずにキレイに書きやすかったからだ。

 どうして画数の多い漢字の書きやすさにこだわったかというと、フツーのボールペンだと郵便や宅急便の宛名欄に名前を書く際にうまく書けないから。家電製品などレビュー品を自宅や担当ライターさんに度々送っているが、元々字が下手なこともあって、画数の多い漢字をグチャッと書きなぐってしまうことが多い。ゆっくり書こうとしても、ペンがつっ変えてしまったり、逆に滑りすぎて細かい部分が書けない。

 参ったことに、自分の名前からして画数が多い。「正」は5画、「一」は1画(当たり前か)と、書きにくいことは全くないが、「藤」は18画、「慶」は15画と、非常に面倒くさい。特に、「藤」の右側は崩れてしまいやすく、「ξ」みたいにテキトーに書いてしまう。こういった細かいところまで、面倒くさがらずにしっかり書けるペンがほしかった。

 そこで選んだのが、無印良品の「さらさら描けるゲルボールペン」だ。書き心地は滑らかで、インクの出も良いため、力を入れなくてもスルッと書けてしまう。それでいながら、止めるところはしっかり止まる。そのため、「藤」の右側のような細かい部分も、ストレスなく書ける。太さもちょうどよく、ゴムのグリップも手に馴染みやすい。

 走り書きをする場合には向かないし、線がやや太めな点は、好みが分かれるだろう。だが、細かい部分もしっかり書きたい場合には非常に役に立つ。私のように、画数の多い漢字を頻繁に書くことが多い人、下手でもゆっくりじっくり書きたいという人に、お勧めしたい。

無印良品
http://www.muji.net/
製品情報(オンラインストア)
http://www.muji.net/store/cmdty/detail/4548718369102

 


 明日は後編として、3人のスタッフによるオススメの1本をご紹介します。引き続き、ご愛読宜しくお願いします。