家電製品ミニレビュー
フィラメントが輝き、ノスタルジックな“裸電球”も楽しめるLEDインテリアライト
by 藤原 大蔵(2015/9/3 07:00)
LED電球と白熱電球の違いの1つに、放熱部のヒートシンクの有無が挙げられる。ヒートシンクはLED素子が発する熱を効率良く逃がし、明るさと寿命を支える大事な技術的要素だ。
しかし、電球が丸見えになるような器具に取り付けた場合、ヒートシンクが器具のデザインや美観を損ねる場合もある。
そんな中で、とうとうヒートシンクを持たない明るいLED電球が登場した。「ダサいLEDは終わりにしよう」をコンセプトに開発された、ビートソニックの「Siphon(サイフォン) オリジナル」を今回は紹介しよう。
メーカー名 | ビートソニック |
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製品名 | Siphon(サイフォン) オリジナル LDF29A |
口金タイプ | E26 |
全光束 | 400lm(白熱電球30W形相当) |
光色 | 2,200K |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 4,104円 |
サイフォンはヒートシンクが無いばかりか、細長いLED素子がフィラメントを張り巡らせたかのように立体的に8本配置され、クリア電球により近いデザインに仕上がっている。口金タイプは一般的な電球と同じE26だ。
クリアタイプの白熱電球のイメージを継承。そして軽い!
サイフォンの大きさは、60×107mm(直径×高さ)と、40W形のクリア白熱電球よりも一回り大きい程度。しかも、重量は実測でたったの41g! クリア白熱電球よりも11g重い程度で、LED電球の中でもトップクラスの軽さだ。これならば、複数個の電球を使用する器具にも、電球自体の重さの負担を気にせずに、気兼ねなく取り付けられるだろう。
サイフォンは細部に渡ってなかなか凝った作りをしている。グローブは透明度の高いガラス製で、上部の突起がクラシカルなエジソン型電球を彷彿とさせる。器具に取り付けたら見えなくなる口金なのに、真鍮をわざわざ採用しているところがまた心憎い。
フィラメントを模した素子はクリア白熱電球と構成は異なるが、電球内部にはガラス製のマウントがあり、その中に導入線が通してあるなど、徹底して古風なクリア電球らしい風情を湛えている。
拡散性に少々クセありだが……
サイフォンをシェード付きの器具に取り付けた50cm直下の照度は307lxだった。40W形のクリア白熱電球よりも暗いが、全光束400lmで「白熱電球30W形相当の明るさ」という点で、妥当な明るさと言えるだろう。もちろん20W形のクリア電球よりもずっと明るい。なお、8本のLED素子が並ぶが、多重影はできず、シェードの影も柔らかい。
光の広がり方は、クリア白熱電球とは異なる。光は電球の水平方向とソケット方向にはよく拡散する。一方で、グローブの突起が影響しているのか、上方向へはあまり広がらない印象だった。また、複数の素子が干渉するのか、光のムラも浮かんだ。
スペック的な見方をすると多少気になる点はあった。ここから実際の居住空間で使った様子をレポートしよう。
落ち着きを重視するくつろぎの空間に
まず、リビングルームの全体照明として、透明なガラス製のペンダントにサイフォンを取り付けた。
点灯していない時の見た目は、黄色い素子が透けて見えるものの、器具の印象はほとんど損ねない。言われなければ気づかないぐらい、器具とよく馴染んでいる印象だ。
点灯すると、器具が持つきらめき感や、屈折する光の様子が壁に映し出され、クリア電球らしさがしっかりと現れた。壁面付近の明るさは40W形クリア電球に近い明るさが得られるので、白熱電球と取り換えてもさほど暗くなった印象にならなかった。
一方で、床面は明るさがさほど広がらない。だが、別の言い方をすれば、器具を見上げても眩しくないので思いの外快適だった。夕焼けのような色合いの光色も、落ち着いた雰囲気を演出するので、くつろぎを中心としたリビングルームの明かりに向いているだろう。
静かな夕食を演出する明かりに
次に、ダイニングテーブル上の局部照明として、サイフォンを2つの器具で使ってみた。
1つ目は、昭和初期にデザインされた乳白色のガラス製の、いわゆる「電笠」と言われるものにサイフォンを組み合わせた。これは筆者お気に入りのペンダントだ。
シェード全体が柔らかく輝き、テーブル上が優しく照らし出される。嬉しいのは、器具から覗くサイフォンが、もともと古風な電笠のデザインをより一層引き立ててくれた事だ。今まで、この電笠に色々な電球を取り付けてきたが、サイフォンが一番似合っていると感じた。
もう1つ、アルミ製のペンダントに取り付けた。こちらは、クリアタイプの白熱電球を取り付けた時よりも、器具の表情が豊かになった。少々味気ないアルミ製のシェードなのに、サイフォンのレトロな雰囲気と赤っぽい光色が加わって、柔らかさが増してより魅力的に映った。
電球が露わになるので覗きこむと眩しい。だが、シェードの反射によってソケット方向と水平方向の光が集約され、テーブルの明るさがぐっと増した。直下の明るさが欲しいなら、このようなタイプのシェードと組み合わせると良いだろう。
なお、光色は2,200Kと赤っぽい電球色だが、演色性はRa80(Ra100が最高)とまずまず。赤っぽい光色でも、照らされるものの色はさほどくすんだ印象にならないので、食事のシーンにも十分活用できると感じた。加えて、AMラジオにノイズが入る事もなかった。
裸電球でも「絵」になるLED電球
最後になるが、ワットチェッカーで計測すると、消費電力は4Wだった。LED電球らしく、電気代は確実に抑えられる。1日8時間点灯すると仮定して、1カ月の電気代はたったの26円という試算になる。
かなり価格が下がってきたLED電球電球の中で、サイフォンは正直言って高価な部類に入る。また、ヒートシンクが無い分、定格寿命は15,000時間と一般的なLED電球の半分以下だ。これらはサイフォンの欠点と言えるだろう。
とは言うものの、ソケットだけに取り付けた「裸電球」が絵になるLED電球はどれほどあっただろうか。無粋なヒートシンクが無く、クリアタイプの白熱電球そのものの輝きは、LED電球の中でなかなかお目にかかれない価値と魅力がある。相性はあるが、調光器に対応しているのも見逃せない点だ。
これまで、無粋なLED電球を組み合わせるのを躊躇するような、繊細で趣きのあるクラシカルな器具、電球が露わになるシャンデリアにこそ、サイフォンをオススメしたい。器具そのものの雰囲気を損なわないどころか、使っているうちにそれがLED電球だった事さえ忘れてしまうほど、電球らしさが漂う。くつろぎや雰囲気を大切にしたい空間に、是非取り入れてみてはいかがだろうか。