家電製品ミニレビュー

フィラメントが輝き、ノスタルジックな“裸電球”も楽しめるLEDインテリアライト

ビートソニック「Siphon オリジナル LDF29A」

 LED電球と白熱電球の違いの1つに、放熱部のヒートシンクの有無が挙げられる。ヒートシンクはLED素子が発する熱を効率良く逃がし、明るさと寿命を支える大事な技術的要素だ。

 しかし、電球が丸見えになるような器具に取り付けた場合、ヒートシンクが器具のデザインや美観を損ねる場合もある。

 そんな中で、とうとうヒートシンクを持たない明るいLED電球が登場した。「ダサいLEDは終わりにしよう」をコンセプトに開発された、ビートソニックの「Siphon(サイフォン) オリジナル」を今回は紹介しよう。

メーカー名ビートソニック
製品名Siphon(サイフォン) オリジナル LDF29A
口金タイプE26
全光束400lm(白熱電球30W形相当)
光色2,200K
購入場所Amazon.co.jp
購入価格4,104円

 サイフォンはヒートシンクが無いばかりか、細長いLED素子がフィラメントを張り巡らせたかのように立体的に8本配置され、クリア電球により近いデザインに仕上がっている。口金タイプは一般的な電球と同じE26だ。

ヒートシンクが無いのが特徴のサイフォン
製品パッケージ

クリアタイプの白熱電球のイメージを継承。そして軽い!

 サイフォンの大きさは、60×107mm(直径×高さ)と、40W形のクリア白熱電球よりも一回り大きい程度。しかも、重量は実測でたったの41g! クリア白熱電球よりも11g重い程度で、LED電球の中でもトップクラスの軽さだ。これならば、複数個の電球を使用する器具にも、電球自体の重さの負担を気にせずに、気兼ねなく取り付けられるだろう。

 サイフォンは細部に渡ってなかなか凝った作りをしている。グローブは透明度の高いガラス製で、上部の突起がクラシカルなエジソン型電球を彷彿とさせる。器具に取り付けたら見えなくなる口金なのに、真鍮をわざわざ採用しているところがまた心憎い。

 フィラメントを模した素子はクリア白熱電球と構成は異なるが、電球内部にはガラス製のマウントがあり、その中に導入線が通してあるなど、徹底して古風なクリア電球らしい風情を湛えている。

クリア電球(左)と比較すると一回り大きい程度。口金付近の太さは32mmで白熱電球と同じだった
口金や導入線が通るガラス製のマウントまで、ディティールに凝っている
フィラメントを模した長さ35mmの細長い発光部が8本、グローブ内に立体的に配されている。クリアタイプの白熱電球とは異なるが、とても電球っぽい

拡散性に少々クセありだが……

 サイフォンをシェード付きの器具に取り付けた50cm直下の照度は307lxだった。40W形のクリア白熱電球よりも暗いが、全光束400lmで「白熱電球30W形相当の明るさ」という点で、妥当な明るさと言えるだろう。もちろん20W形のクリア電球よりもずっと明るい。なお、8本のLED素子が並ぶが、多重影はできず、シェードの影も柔らかい。

 光の広がり方は、クリア白熱電球とは異なる。光は電球の水平方向とソケット方向にはよく拡散する。一方で、グローブの突起が影響しているのか、上方向へはあまり広がらない印象だった。また、複数の素子が干渉するのか、光のムラも浮かんだ。

上から、20W形クリア白熱電球、サイフォン、40W形クリア白熱電球の50cm直下の明るさだ。サイフォンの明るさは30W形相当という
サイフォンの光の広がる様子。クリアタイプの白熱電球よりも上方向が弱い反面、横方向、ソケット方向にはよく広がる。複数の素子のせいか、光のムラが浮かぶ
電球の側面方向から見ると眩しいが、真上から見るとそれほどでもない

 スペック的な見方をすると多少気になる点はあった。ここから実際の居住空間で使った様子をレポートしよう。

落ち着きを重視するくつろぎの空間に

 まず、リビングルームの全体照明として、透明なガラス製のペンダントにサイフォンを取り付けた。

 点灯していない時の見た目は、黄色い素子が透けて見えるものの、器具の印象はほとんど損ねない。言われなければ気づかないぐらい、器具とよく馴染んでいる印象だ。

 点灯すると、器具が持つきらめき感や、屈折する光の様子が壁に映し出され、クリア電球らしさがしっかりと現れた。壁面付近の明るさは40W形クリア電球に近い明るさが得られるので、白熱電球と取り換えてもさほど暗くなった印象にならなかった。

 一方で、床面は明るさがさほど広がらない。だが、別の言い方をすれば、器具を見上げても眩しくないので思いの外快適だった。夕焼けのような色合いの光色も、落ち着いた雰囲気を演出するので、くつろぎを中心としたリビングルームの明かりに向いているだろう。

ガラス製の器具にサイフォンを取り付けた様子。黄色いLED素子が見えるが、ヒートシンクが無いぶん言われなければ気づかない
サイフォンを点灯した様子(左)。器具を通した光の屈折のパターンは異なるが、クリアタイプの白熱電球(右)と遜色ない光の表情が映る
サイフォンは30W形相当の明るさだが、天井や壁面の明るさは40W形クリアタイプの白熱電球(右)に近い。だが、真下に光が広がらない分、床面は暗めだ
器具の真下から見た様子。器具を見上げてもサイフォンを取り付けた方は眩しさが軽減される(上)

静かな夕食を演出する明かりに

 次に、ダイニングテーブル上の局部照明として、サイフォンを2つの器具で使ってみた。

 1つ目は、昭和初期にデザインされた乳白色のガラス製の、いわゆる「電笠」と言われるものにサイフォンを組み合わせた。これは筆者お気に入りのペンダントだ。

 シェード全体が柔らかく輝き、テーブル上が優しく照らし出される。嬉しいのは、器具から覗くサイフォンが、もともと古風な電笠のデザインをより一層引き立ててくれた事だ。今まで、この電笠に色々な電球を取り付けてきたが、サイフォンが一番似合っていると感じた。

筆者お気に入りの、昭和初期にデザインされた乳白色のガラス製「電笠」と相性バッチリ。電球が覗く姿に一層レトロ感が漂う
サイフォンは静かな食事のシーンの明かりにも似合う

 もう1つ、アルミ製のペンダントに取り付けた。こちらは、クリアタイプの白熱電球を取り付けた時よりも、器具の表情が豊かになった。少々味気ないアルミ製のシェードなのに、サイフォンのレトロな雰囲気と赤っぽい光色が加わって、柔らかさが増してより魅力的に映った。

 電球が露わになるので覗きこむと眩しい。だが、シェードの反射によってソケット方向と水平方向の光が集約され、テーブルの明るさがぐっと増した。直下の明るさが欲しいなら、このようなタイプのシェードと組み合わせると良いだろう。

 なお、光色は2,200Kと赤っぽい電球色だが、演色性はRa80(Ra100が最高)とまずまず。赤っぽい光色でも、照らされるものの色はさほどくすんだ印象にならないので、食事のシーンにも十分活用できると感じた。加えて、AMラジオにノイズが入る事もなかった。

少々味気ないアルミ製のペンダントが、クリアタイプの白熱電球を取り付けた時よりも表情が豊かになった(上)
光が笠に反射して、この前の電笠よりもテーブルの上がぐっと明るくなった
赤っぽい電球色だが、演色性はまずまず(左)。肉眼では葉の緑色、カーネーションのピンク色もさほどくすんで見えなかった。右は40W形クリアタイプの白熱電球の様子

裸電球でも「絵」になるLED電球

 最後になるが、ワットチェッカーで計測すると、消費電力は4Wだった。LED電球らしく、電気代は確実に抑えられる。1日8時間点灯すると仮定して、1カ月の電気代はたったの26円という試算になる。

 かなり価格が下がってきたLED電球電球の中で、サイフォンは正直言って高価な部類に入る。また、ヒートシンクが無い分、定格寿命は15,000時間と一般的なLED電球の半分以下だ。これらはサイフォンの欠点と言えるだろう。

サイフォンの消費電力は4Wだった。白熱電球よりも大幅に電気代が抑えられるだろう
LED電球であることを忘れてしまうほど、裸電球が絵になるサイフォン。雰囲気を大切にしたい空間や器具に取り付けたい

 とは言うものの、ソケットだけに取り付けた「裸電球」が絵になるLED電球はどれほどあっただろうか。無粋なヒートシンクが無く、クリアタイプの白熱電球そのものの輝きは、LED電球の中でなかなかお目にかかれない価値と魅力がある。相性はあるが、調光器に対応しているのも見逃せない点だ。

 これまで、無粋なLED電球を組み合わせるのを躊躇するような、繊細で趣きのあるクラシカルな器具、電球が露わになるシャンデリアにこそ、サイフォンをオススメしたい。器具そのものの雰囲気を損なわないどころか、使っているうちにそれがLED電球だった事さえ忘れてしまうほど、電球らしさが漂う。くつろぎや雰囲気を大切にしたい空間に、是非取り入れてみてはいかがだろうか。

藤原 大蔵

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