家電製品ミニレビュー

山善「YLT-C301」

~1,970円で購入したリビング型扇風機の実力
by 伊達 浩二
山善「YLT-C301」

今年の夏は扇風機が主役

 まだ5月も中旬だが、家電売場の主役は扇風機になっている。家電量販店では、エアコン売場よりも扇風機売場の方が人が多く集まっており、大型スーパーの家電売場でも、扇風機が山積みになっている。

 先日、東京電力管内では「15%」という家庭での節電目標数値が正式に決定された。夏場は、家庭で使用される電力のうちエアコンが占める割合は高い。

 資源エネルギー庁が公開した「家庭の節電対策メニュー」によれば、夏の日中に家庭で使用される電力の半分以上はエアコンが消費しているという。このメニューの「無理のない範囲でエアコンを消して、扇風機を使いましょう」という項目を実行すれば、15%の節電目標どころか、50%も節電できるという。実際にはエアコンの消費電力は、機種や温度設定、家屋の構造などに大きく左右されるのだが、ちょっと我慢するだけで50%も節電できるとなれば、試してみようという気になるのは当然だ。

 以上のことをふまえて、今年は、エアコンよりも節電に繋がる扇風機に注目が集まっているようだ。

 とはいえ、扇風機にも、いろいろな種類がある。冷房の主役として使うなら、リビング型と呼ばれる床置きタイプで、ファンの口径が30cm以上の製品を選びたい。このタイプの製品であれば、部屋の構造やライフスタイルを問わず、ある程度以上の実用性がある。

 リビング型は、価格が数千円から数万円まで幅が広い。しかし今回は、涼を得るのに必要最低限の機能さえあれば良いと割り切って、一番安い製品を探してみた。

 それが今回紹介する「山善 YLT-C301」という製品だ。山善の直販サイトでは2,980円で販売されているが、西友の店頭で1,970円で購入できた。

 


メーカー山善
製品名YLT-C301
希望小売価格2,980円
購入場所西友
購入価格1,970円

 

 箱は大きめだが、重さは約4kgと軽く、手提げをつけてもらえれば持ち帰りできる。今回も店頭で購入して、徒歩で持ち帰ってきた。なお、ホワイトベージュ(WC)とホワイトブルー(WA)の2色あるが、今回はホワイトブルーを選んだ。

箱はあまり重くないので手提げを付けてもらえば、持ち帰れる箱を開けたところ。右に取扱説明書が見える真ん中に本体が、その上下にベースやガードが収まっている

押しボタンスイッチとタイマーの懐かしい操作体系

 この扇風機には、本当に必要最低限の機能しかない。部品は、本体、ベース(土台)、ガード(前後)、ファンの5つだけだ。取り扱い説明書通り組み立てれば10分とかからない。

 まず、本体をベースに組み付ける。このときに、本体のツメを先にベースに噛ませる必要があるので注意したい。次に、モーターの軸に、後ろのガード、ファン、前のガードの順で組み付ける。モーター軸に黒いチューブが付いているが、これは保管用。前のガードは位置決めが難しいが、上から組み立てて、左右の横を留め、最後に下のクリップという順番で枠をはめていくと簡単にはまる。

左が本体。右上の青いのがベース。2枚のガードとファンは重なって納められていたベースユニットの固定方法。やや上に見える黒いツメをはめてから、中央の樹脂製ナットを手で締める本体のモーター軸。黒いチューブは保護用なので外しておくこと
まず奥側のガード、ファンの順番で固定していく最後に前側のガードをはめて終了。ファンは一般的な5枚羽根
モーター側から見た状態柱にあるボタンを押して、高さ調整を行なう

 組み上がった姿は、当たり前だが普通の扇風機の形をしている。本体サイズは、37×34×67~87cm(幅×奥行き×高さ)で、高さは20cmの範囲で調節できる。普通のリビング扇だと、上端が90cm~1mぐらいになるものが多いが、一番高い位置にしてもリビング扇としては低めだ。

 本体重量は約2.9kgと軽い。部屋から部屋へ移動するような使い方も気軽にできる。

 ファンは口径30cmの5枚羽根なので、一定の風量はあるだろう。モーターのケースが丸っこいデザインなので、オモチャのようなかわいい印象を受ける。

 風量は押しボタンスイッチで、弱/中/強の3段階切替だ。リモコンはない。タイマーは時間が来ると「切」になるもので、180分まで設定できる。タイマーの構造も懐かしいゼンマイ式だ。押しボタンスイッチは、押すたびに「バシャ」というような音がしてこれも懐かしい。中で機械が動いているという実感がある。

 自動首振りは、モーター部分の上にあるツマミを、下に押すと90度動き、上に引くと停止する。簡単に言えば、数十年前の扇風機とまったく同じ。表示も日本語なので、お年寄りでも使い方を迷うことはないだろう。

丸っこいモーターカバーから、青い首振りつまみが見えている。押すと首振りをし、ひっぱると止まる操作部分。押しボタン4つと、切タイマーのダイヤルだけ耐用年数は6年とされている

風量や動作音は許容範囲、面白いのは自動首振り機能

 風量は「弱」でも、そこそこ強く感じた。最近の機種によくある「微風」ではなく、あくまで「弱」だ。逆に「強」はちょっと弱い。「強」というよりも、強めの「中」という感じだ。ベースも含めた本体が軽い樹脂製なので、思いっきりモーターを回すと、バランスが崩れるのかもしれない。

ガードはちょっと変わったメッシュタイプ

 動作音は、比較的大きい。モーター音が聞こえるし、風切り音もする。風切り音はファンだけでなく、前面のガードからも聞こえる。この製品はメッシュタイプのガードになっていて、そこから風切り音がするのだ。メッシュタイプのガードは、普通のガードよりも、指が入りにくいという利点があるのだが、風の抵抗が大きいという欠点もあるようだ。

 また、切タイマーはゼンマイ式なので動作音が心配だったが、普通の状態では聞こえなかったので問題なさそうだ。

 面白いのは自動首振り機能だ。風量を強くすると、首振りが早くなるのだ。たぶん、ファンを回すモーターから首振りの動力を取っているので、回転数が上がると首振りも早くなるのだろう。ただし、実用に困るほど首振りが速くなるわけではないし、むしろ一生懸命に働いていてかわいいと感じる。


弱→中→強の順番で運転。だんだん、首振りの速度が速くなる

 

 不満を感じたのは、机に向かっているときだ。高さが低めなので、ファンをあまり上向きにできず、顔に風を当てるのが難しいのだ。高さはこのままでも、もうちょっと首が上を向いてくれるとありがたい。下方向には角度が付けられるので、ソファや畳中心で生活するならば不自由はない。

ファンを限界まで上向きにしても、ここどまりだ下方向は、もう少し動く
一番高くした状態一番低くした状態一番高くしても、右に置いたイスと同じぐらいの高さだ。ファンがあまり上を向いてくれないので、イスに座った状態で顔に風を当てるには、ちょっと離れた場所に置く必要がある

欠点もあるが、ちゃんと使える

 肝心の消費電力は、「強」の場合、50Hz圏内では42Wで、1時間当たりの電気代は約0.9円とされている。60Hz圏内では46Wで、約1.0円となっている。

 そこでワットチェッカーを使って、中と弱の時の電力も計測したところ、弱/中/強の消費電力は、それぞれ28/33/40Wだった。扇風機としては、ごく普通の水準。あえていえば、微風モードがあれば、10W台の数字が出るのだが、この製品にはない。ちなみに、高級機種では、DCモーターを搭載して数Wで動作する機種もあるが、それは例外的な存在だ。

ワットチェッカーで待機電流を計測。機械式スイッチなのでゼロだ

 なお、「切」の状態での待機電流は0Wだった。機械式スイッチで、リモコンもないので当然ではあるが、今の時節には合っている。

 さて、結論をまとめてみよう。

 この扇風機は、1,970円とはいえ、扇風機としての機能は果たしている。操作は簡単だし、そこそこ風が送られてきて涼も取れる。しかし、5,000円以上の製品と違って、動作音はうるさいし、夜間にタイマーで動作させていると気になって眠れない人もいるだろう。さらに言えば、風量も「微風」がないし、「強」の強さも物足りない。リモコンがないことも不便に思う人がいるだろう。

 高級感とか静粛性を求めるならば向かないかもしれないが、1,970円という値段は、ちょっとしたUSB扇風機よりも安いというのも事実。ちょうど、100円ショップで売っているビニール傘のような性格の製品だと思えば良い。不満を言えば切りがないが、ちゃんと機能は果たしてくれる。

 こいつはテレビを見るときに、ちょっと離れたところから風が送られてきたいと思うような、ラフな使い方が似合う製品だ。あまり欲張らずに、「風がくればいいや」程度に思うならば、十分に使えることは保証できる。






2011年5月23日 00:00