家電製品ミニレビュー
東芝「リビング扇風機 F-LN10」
東芝ホームテクノ「リビング扇風機 F-LN10」 |
日本は、空前の扇風機ブームを迎えている。
東日本大震災の影響による電力不足で、政府からは家庭や企業を問わず、例年より15%の節電を行なうことが推進されている。政府から公開された具体的な節電対策の資料には、「エアコンを使わずに、扇風機を使う」ことが明記と記されており、その影響からか、扇風機が爆発的に売れているとの報道が相次いでいる。
まだ5月なので冷房シーズンには早いかもしれないが、最高気温が25℃を超える日も出てきた。家電Watchでもこの旺盛な扇風機需要に応えるため、さっそく扇風機のレビューを掲載しよう。今回取り上げるのは、東芝ホームテクノの扇風機「リビング扇風機 F-LN10」である。
メーカー | 東芝ホームテクノ |
製品名 | リビング扇風機 F-LN10 |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入店舗 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 12,800円 |
扇風機は大型のモノからUSBタイプまで種類が幅広いが、本製品は居間に置いて使う“リビング扇”タイプの扇風機だ。東芝でのラインナップとしては、最上位モデル「SIENT(サイエント) F-DLN100」に次ぐ高級モデルとなる。
この最上位モデル「サイエント」は、大変人気の商品のようで、現在はほとんどのECサイトで品薄になっている。F-DLN100については在庫が落ち着き次第、改めて取り上げさせていただく予定だが、今回のF-LN10については、まだ余裕があるようだ。
■消費電力はたった10W、微風だけど涼しい「ゆっくり」モードで節電
話をF-LN10に戻そう。見た目は直径約40cmくらいの台座部に、高さ約80cmほどの支柱、直径約40cmくらいの羽とガードが付いている。言ってみればフツーの扇風機のような印象だが、台座部にはLEDのモニター、付属品にはリモコンが付いており、高級モデルであることをうかがわせる。
羽根は4枚 | 台座部にはLEDのモニターが付いている | リモコンも付属。羽根の裏に置ける |
まずは運転しつつ、消費電力を計測してみよう。本製品の運転モードは4段階あり、「ゆっくり」「弱」「中」「強」の順でパワーが強くなる。弱/中/強の3つのモードが用意されているのは普通だが、「弱」よりも弱い「ゆっくり」モードがあるのが特徴だ。
運転を「ゆっくり」から「弱」「中」「強」に切り替えている動画 |
F-LN10の消費電力。上からゆっくり/弱/中/強の順。「ゆっくり」は消費電力が10Wと少なく、しかもちゃんと涼しかった |
ワットチェッカーで消費電力を計測すると、10/22/30/35W(ゆっくり/弱/中/強)となった。特に「ゆっくり」モードは10Wと少なく、電球形蛍光灯1個くらいの電力しか使わない。エアコンの消費電力が750W(同じ東芝製品の場合、圧縮機の定格出力)と比べるとものすごい差だ。ただエアコンは、常にフルの出力で運転しているわけではないので、実際の運転では消費電力はもっと下がるだろうが、それでもたった10Wで冷房運転はできない。エアコンから扇風機に切り替えることで、かなりの節電効果があることになるだろう。
ついでに、我が家に既にあった古い安物の扇風機の消費電力を調べると、22/30/42W(弱/中/強)であった。最小運転で比べれば、安物の扇風機よりも節電効果があることになる。
運転モード | ゆっくり | 弱 | 中 | 強 |
F-LN10 | 10W | 22W | 30W | 35W |
古いリビング扇 | なし | 22W | 30W | 42W |
肝心の涼しさについてはどうだろう。せっかく節電しても、暑かったら意味はない。しかしこの「ゆっくり」モードは、意外にちゃんと涼しい。ソヨソヨと肌を撫でるようなやさしい風ではあるが、これだけでも涼感は得られた。冷房に弱い人は、逆にこのやさしい風方が向くのではないだろうか。
ただ、お風呂上りなど体が熱を持っている時は、「ゆっくり」だと物足りない。その場合は「弱」、あるいは「中」を選択しよう。「強」はパワーがかなり強いので、一般家庭で使うシーンはあまりないだろう。
なお本製品には、リズム風モードもある。リズム風モードでは、消費電力の数値が27W→10W→0W→27W……とコロコロ変わっていた(「ゆっくり」運転時)。モーターのON/OFFをこまめに繰り返しているようだ。
■体感温度に合わせて風を調節。温度と湿度の“デュアルセンサー”で手軽に自動運転
本製品のさらなる特徴としては、温度と湿度を検知して、自動で運転を切り替える「デュアルセンサー」を使った、「センサー運転」を搭載しているところ。例えば、室温27℃で湿度が「適湿」の場合は「ゆっくり」で運転し、同じく27℃でも「高湿」であれば、「弱」運転へと自動で切り替わる。温度・湿度は本体のLEDモニターで表示され、本体/リモコンの「センサー」ボタンを押すことで、センサー運転に切り替えられる。
本製品は温度と湿度の2つのセンサーで運転を切り替える「センサー」モードを搭載している。写真は本体支柱部にあるセンサー部分 | センサー運転が切り替わる条件。温度、湿度が高くなるほど、風が自動で強くなる |
センサー運転を使ってみたが、我が家の場合、気温・湿度ともだいたい「27℃」「適湿」で推移していたので、常に「ゆっくり」運転だった。これではつまらないので、試しに加湿器を使い、部屋の湿度を上げてみた。
湿度が上がると、温度は27℃で変わらないにも関わらず、何だかムシムシと暑く感じられるようになった。これでは「ゆっくり」運転では物足りない。すると、モニターが「高湿」に切り替わり、「弱」運転にパワーアップ。これがちょうど良い風量で、ベストな涼しさが感じられた。
湿度が高くなると体感温度が高くなる、というのはよく言われるが、それに合わせて自動で運転を合わせてくれるとは、何て賢い扇風機だ! ちなみに、運転が切り替わる際は「ピー」などの音はしない。なめらかに周囲の環境に合わせていると感じられる。
センサー運転で、風速が切り替わる最中の動画。「ピー」という音がしないので、“シームレス”っぽく切り替わっている印象を受ける(カタカタという音は、私がキーボードを叩いている) |
センサー運転では標準モードのほかに、より細かく温度を切り替える「強め」や、温度判定を甘めにした「弱め」モードも用意される。暑がりの人は「強め」、寒がりの人は「弱め」が良いだろう。
■見やすいLED表示。110cmからの送風で、部屋の空気の循環にも
本製品のもう1つの特徴が、台座部にLEDのモニターだ。ここで現在の運転モードや、温度/湿度などが表示される。
モニターで便利なのが、温度/湿度表示だ。あくまで目安であるものの、室温と湿度(3段階)を示してくれるので、温度・湿度計を別途使わなくても、部屋の状況がわかる。この数値は、前項で挙げたセンサー運転と連動している。
モニターの写真を見て、「ちょっと明るすぎるな」と思う人もいるかもしれないが、実は本体の「切タイマー」を長押しすれば、モニターは羽根のマークを残してすべて消灯する。まぶしくて寝られないなんてことも無いだろう。
LEDモニターは運転中のみ点灯する。写真はセンサー運転「弱め」の状態 | 写真のように消灯することもできる。羽根マークは点灯するが、通常時よりも明るさは抑えられているという | オンタイマー(2/4/6時間)とオフタイマー(1/2/4時間)も搭載する。写真はオンタイマー。オンとオフの同時使用はできない |
本製品ではこのほかにも、首振り、オン/オフタイマー機能も用意されており、付属のリモコンでもこれらがすべて操作できる。おまけに、電源をオン/オフした際に、停止する前の状態で運転するメモリー機能も用意されている。
【お詫びと訂正】初出時に「オンタイマーとオフタイマーは併用できない」と記載しておりましたが誤りでした。お詫びして訂正させていただきます。本製品では、オフタイマーを設定後にオンタイマーを設定することができます。この場合、オフタイマーで運転を停止した後で、オンタイマーで運転を開始し、オートパワーオフで4時間後に自動停止します。ご教示いただいた方々にお礼申し上げます。
最後になってしまったが、本製品は796~1,102mmの範囲で背が伸ばせるのも特徴のひとつ。上向きに風を送ることで、室内の空気を循環することもできる。私の部屋では、上方向に「弱」で送風するだけで、何となく涼しい感覚があった。エアコンとの併用にも向くだろう。
高さは796mmから1,102mmまで調節可能 | 上は35度、下は16度まで角度調節できる | リモコンでは首振り運転など、ほとんどの操作ができる |
■機能満載の便利な扇風機。寒がりの人やデスクワーク時の使用にお勧め
F-LN10についてひと通り見てきたが、「ゆっくり風」に「デュアルセンサー」に「LEDモニター」と、便利で快適に使える機能が数多く搭載された扇風機だ。特にゆっくり風は、寒すぎない、ちょうど良い風が得られる。寒がりの人や、デスクワークをしている状況にはピッタリだろう。
ネックとしては、扇風機としては高価な部類に入るところか。家電量販店では2千~3千円の安い扇風機が売られているなか、1万円オーバーという価格はなかなか手を出しにくい。「機能は欲しいけど価格は抑えたい」という方は、デュアルセンサーとLEDパネルが省かれた「F-LN8」など、下位モデルを選ぶことをお勧めしたい。
素直に15%の節電に協力するもよし、「扇風機で節電した分の電気代でアレを買うぞ」という動機で節電するもよし。ともかく、みんな無事にこの夏を生き抜こう!
2011年5月20日 00:00