家電製品ミニレビュー

ダイキン「うるるとさらら Rシリーズ AN40LRS-W」

~冬に買った加湿機能付きエアコン、夏はどうなの?
by 阿部 夏子
ダイキン「うるるとさらら Rシリーズ AN40LRS-W」

 東京では梅雨明けからこっち、うだるような暑さが続いている。休日で1日自宅で過ごすような時など、文字通りエアコンが手放せない状況だ。昨年の冷夏から一転の猛暑に、あわててエアコンを買いに走っている人が多いらしく、店頭のエアコン売り場は混みあっているようだ。

 私自身も、昨年の夏はエアコンなしで乗り切った派の1人。冬になってから、室内の乾燥が気になって、加湿による“美肌効果”のあるエアコン――ダイキンの「うるるとさらら Rシリーズ AN40LRS-W」を購入した。つまり、今年の夏はうるるとさららで過ごす初めての夏となるわけだ。製品の詳しい特徴などは2009年12月に掲載したロングレビューをご確認していただくとして、今回は夏も使えるの? というところを中心にご紹介したい。

 家電量販店の売り場に行けばそれこそ、ピンからキリまで様々な価格の製品が並ぶ。こんな仕事をしていても、機能や省エネ性の違いがわかりづらく、正直戸惑ってしまうところだ。その中で今回紹介するうるるとさららは高級機に当たる製品。製品購入時の価格(2009年11月)は258,000円。現在は20万円以下で購入できる。

加湿は、室内ではなく室外の空気を取り込んで水分子を抽出する。そのため、加湿ユニットは室外機に搭載されている

 うるるとさららの大きな特徴は2つ、「加湿機能」と「4方気流」だ。

 特に加湿機能については、業界唯一の機能となっている。屋外の空気に含まれる水分子を抽出して、室内に放出する「E-moist(イーモイスト)」という技術。室外機で外の空気を加湿ユニットに取り込んで、水分子を抽出。その後、通常の水蒸気に比べ約1/20,000の0.3nmの水分子を生成し、室内に放出しているという。その、放出量は1時間当たり1時間当たり600ml(14畳用、100Vクラスの場合)で、ちょっとした加湿機並みの能力を持っているのだ。

屋外の空気に含まれる水分子を抽出して、室内に放出する「E-moist」技術

 4方気流は、前面の大型フラップと左右のフラップを組み合わせることで、上下左右の4方向に送風できるというもの。壁や天井を沿わせるように送風することで、風が身体に直接当たりにくい気流を生み出すことができるという。

 そのほか、製品の詳しいスペックは以下の表をご確認いただきたい。


メーカーダイキン
製品名うるるとさらら Rシリーズ AN40LRS-W
電源単相100V
冷房能力4.0kW
適用床面積(暖房)11~14畳
適用床面積(冷房)11~17畳
APF6
年間消費電力1,336kWh

 今回はこれらの機能を搭載したうるるとさららの「夏の使い心地」をレポートしたいと思う。

夏に加湿機能って必要なの?

加湿しながらの冷房運転は美肌保湿冷房モードとして用意されている

 そもそも、うるるとさららを購入した一番の大きいポイントは“加湿できる”というところにあった。乾燥しやすい日本の冬は、室内で暖房器具を使うとすぐに喉や肌がピリピリするような痛みを感じる。それを解消するために加湿機能付きのエアコンを選んだのだ。

 一方、日本の夏はどうだろう。梅雨の間は湿度80%を超える日もあるくらいで、エアコンの運転モードには除湿運転も用意されている。じめじめとした日本の夏に加湿機能を使う人なんているの? となってしまう訳だ。

 結論から先にいうと、“加湿する意味は大アリ”。まずは、下の数値をご確認いただきたい。加湿運転アリでの冷房となしの場合での冷房の数値だ。なお、加湿しながらの冷房運転は「美肌保湿冷房モード」として用意されている。今回は加湿なしの通常冷房と美肌保湿冷房の2つを比較した。設定温度はいずれも26℃。


運転モード冷房美肌保湿冷房
温度湿度温度湿度
測定開始時32℃54%31℃53%
1時間後27℃49%27℃51%
2時間後27℃45%26℃55%


 加湿運転なしの方は、起動後2時間後には湿度が10%近く下がっている。一方、美肌保湿冷房運転では、2時間後の湿度は最初よりも高い数値になっている。

 一般的に肌や喉に良い湿度は60%程度とされている。それから考えると加湿運転なしの数値は明らかに低い。体感してもこの差は歴然で、加湿運転ありの方が断然快適に過ごせる。感覚的な話になってしまうが、一言でいうと「質が違う」感じだ。

 加湿運転なしの状態でガンガン運転していると、最初は快適だが、一定以下の温度になると手足がかさかさと冷えてくる感じがする。これは私が冷え症だということにももちろん由来すると思うが、加湿運転アリの場合このキンキンに冷えた感じがしない。

 冷え症の私の場合、普通の冷房モードだと運転してから2時間くらいすると、寒さと乾燥を感じてすぐに電源を切ってしまう。それが美肌保湿冷房だと不快な感じがなく、4~5時間付けっぱなしでも快適に過ごすことができた。

 注目したいのは湿度が上がっても温度はきちんと下がっているということ。設定温度はいずれも27℃としたが、2時間運転しても、温度が下がりすぎることなく、きちんとキープされている。なお、今回の数値は人が生活しているリビングで採取したものなので、人の体温やドアの開け閉めにも影響されている。

寝ている時に使っても喉がピリピリしない!

 加湿冷房機能の良さを一番実感できるのは就寝中だ。もともと私が冷房が苦手ということもあって、わが家で一番エアコンが活躍するのは就寝中だったりする。起きている時の暑さは我慢できるけど、暑さで眠れないのは仕事や健康に差し支えるというのがその理由だ。

 ただ、これまでのエアコンだと、一晩中付けっぱなしして寝ると、次の日の朝の寝起きが最悪だった。手足が冷え切って、喉は乾燥してピリピリと痛い。普段の低血圧がさらに悪化した感じだ。それが、うるるとさららの快眠運転を使い始めてからはそれが一気に解消された。

 快眠運転とは、起床時間に合わせて設定温度を自動で切り替えてくれるというコースで、寝始めは温度を徐々に下げて、その後、しばらくは温度をキープ。さらに起床時間が近づくとまた温度を上げてくれるというものだ。本体には「冷房快眠」「除湿冷房快眠」「美肌冷房快眠」の3つのコースが搭載されている(暖房用も別に用意されている)。

快眠コースでは就寝中の身体のメカニズムに合わせて温度を設定する快眠モードでも加湿しながら冷房する「美肌冷房快眠」コースが用意されている起床時間を入力する

 喉や肌の乾燥が気になる私は、もっぱら美肌冷房快眠コースを愛用しているが、これがすごく快適。もともとの設定温度を28℃などやや高めに設定しておくことで、冷えすぎを防ぐこともできるし、なにより起床後のあのダルさから解消された。乾燥で喉がピリピリすることもなく、気持ちよく目覚めることができるようになった。

パワフルやロングなど場所や状況に応じた運転モード

帰宅時や家事で家の中を動き回る時などに便利なパワフルロングモード

 というわけで、もっぱら加湿機能ありの美肌保湿運転を愛用しているが、それはやっぱり夜間が中心だ。休日の昼間に外出先から帰ってきたときや、家事で動き回って汗ダラダラのときは加湿運転は選ばない。ムンムンと暑さが立ち込める室内を一気に冷やしたい時に便利なのが「パワフルモード」だ。

 ほかの運転モードとは明らかに違う運転音と風量で、一気に部屋を快適にしてくれる。私の場合、まずはパワフルモードで室内を冷やし、それから通常の冷房モードに切り替えている。

 うるるとさららではこのほか、風の届く距離が長くなるロングモードも備える。わが家では縦長の部屋の横位置に本体を設置したため、ロングモードを活用することはなかったが、二間続きの部屋で1台しかエアコンを置いてない場合など便利に使えそうだ。

上下左右の気流で自分好みの送風ができる

上下左右から風が出るという4方向気流(写真は製品発表会の時のもの)

 次に、気流について見ていこう。最近のエアコンでよくある売り文句の1つに「風が身体に直接当たらない」ということがある。各メーカー、センサーで人の位置を感知したり、気流を制御したりと様々な方法でアプローチしている機能だが、ダイキンでは上下左右の4方向から送風できる「4方向気流」を搭載。風の向きをコントロールするフラップを前面だけでなく、左右にもフラップにも取り付けて、上下左右の気流を自在にコントロールできるというものだ。


フラップが動く様子

 風向きはユーザーが自分で設定する必要があるものの、うるるとさららでは本体の据え付け場所を設定することで、場所に応じた送風を行なうことができる。設定方法は簡単で、まず機能ボタンで据え付け場所を選択、後は本体が部屋の中央部分にあるのか、左すみにあるのか、右すみにあるのかを選べばいいだけだ。

本体の据付位置を設定するわが家ではリビングの左端に本体を設定している据付位置を左すみに設定する

 わが家では、部屋の左すみに本体を設定しているため右端を設定。すると自動的に右方向をメインに送風してくれる。本体左はすぐ壁なので、そっちにたくさん送風しても効率的ではないということを本体が勝手に判断してくれるのだ。

 うるるとさららではこのほか、風のエリアや上下、左右、上下左右など自由に風向きを調節できる。センサーで感知するわけではないので、自分で快適な風向きを探し出さないといけないというところは正直手間だが、入力したエリアや方向に向かって的確に送風するので、自分の好みに調節できるという利点もある。また、選択した運転モードや風向きによって大きなフラップが動く様は、まるでロボットを見ているようで面白い。

風を出したいエリアを選ぶことができる中央・左・右の選択エリアが用意されるエリアだけでなく上下、上下左右、左右など気流を好みで選べるようになっている
運転モードや選択エリアによってフラップが自在に動く左右に備えられている小さなフラップ本体内部のルーバーも風向きを制御している
下方向に送風しているときのフラップ本体に対してフラップが水平になる時もある

リモコン操作は面倒、色々機能があるのにもったいない

1つのモードを選ぶのに「メニュー/決定」ボタンを何度も押さなければいけない

 唯一不満を覚えたのはリモコンの操作だった。運転モードを設定・入力するために何度もボタンを押す必要がある。リモコンは2段になっていて、上面で基本的な操作を、下段で細かい機能設定を行なうのだが、これが結構わかりにくい。個人的によく使う美肌保湿運転やパワフルモードなどの運転モードを選ぶ場合は、2段目の「メニュー/決定」ボタンを数回押してまずはメニューを選択、そこからさらに細かいモードを設定、最後に入/切を設定する。

 また、「メニュー/決定」ボタンでは基本的な運転モードだけでなく、お手入れや換気モード、基本設定など普段なかなか使わない設定も一緒になっているため、その都度何度かボタンを押して選ぶことになる。

 もちろん、それぞれの運転モード専用のボタンを用意することは難しいというのはわかっているが、うるるとさららは加湿による美肌効果を謳っている製品なのだから、美肌保湿運転のボタンくらいは用意してほしかった。

冷房が苦手な人にこそ!

 うるるとさららの何よりの強みは、やっぱり加湿しながら冷房できること。外出先や会社の冷房と比べても、わが家の冷房が一番心地よく感じる。肌や喉の乾燥や手足の冷えが嫌で、エアコンが嫌いという人には是非お勧めしたい。私自身、昨年まではアンチエアコン派だったが、うるるとさらを使い始めてからは、「エアコンを使うことで室内が快適になる」という風に考え方が180度変わった。

 エコポイントの導入などでエアコンは省エネ性ばかり注目されることが多いが、本来は夏の暑さをしのいで、快適に過ごすための製品。その意味でうるるとさらは、空調メーカーらしい基本に忠実なエアコンと言えるだろう。





2010年7月23日 00:00