家電製品ミニレビュー

次世代型エアコンの「nocria」だからできる! 快適! 無理せず節電! 後編

富士通ゼネラルのエアコン、nocria Xシリーズ。両サイドについている送風機が自然な気流を作り出す

 富士通ゼネラルのエアコン「nocria Xシリーズ」を紹介している。前編では世界でただひとつ、に搭載されているDUAL BLASTERが、複雑で広い間取りでも均一に涼しくすることを実験で明らかにした。

 中央の吹き出し口から冷風、左右のサイドファンから送風する独自のDUAL BLASTER機構が作り出す気流は、体感温度をより涼しく感じることができるため、設定温度を1段階上げても涼しさはそのままにでき、節電にもつながる。

L字型で空気がよどむ間取りでも、室内の温度差は1℃以内で均一に涼しくなった
nocriaには、握りやすく表示が見やすい大きなリモコンと、運転開始・停止のみができる簡単リモコンが標準添付されている

 後編では、富士通ゼネラルオンリーワンの電波式リモコンの素晴らしさを紹介する。赤外線を使った一般的なリモコンには真似できない便利さがある。たかがリモコンではない! エアコンはリモコンでしか操作できない上に、テレビなどと違って離れて操作する場合が多い。そのためいつでも、どんなシーンでもエアコンを操作できるか否かで、エアコンの操作性が大きく変わるのだ。

 さらに無理せず段階的に節電できるエコ機能や、お手入れについても紹介していこう。

メーカー名富士通ゼネラル
製品名nocria Xシリーズ AS-X45D2W 14畳・200V対応モデル
希望小売価格オープンプライス
購入場所ヨドバシ.com
購入金額257,420円

電波式のリモコンだからエアコンが見えない場所から操作OK

 富士通ゼネラルのリモコンの最大の特徴は電波方式だということ。

 一般的なリモコンは、99%赤外線リモコンだ。

 赤外線リモコンは、操作するときリモコンを機器に向けて操作しなければならない。しかし機器が家具に隠れていたり、リモコンからの距離が遠いと、リモコンの反応が悪くなってしまうことも。リモコンの向きをアチコチ変えて何度も操作した経験がある人も多いだろう。

ほとんどのリモコンには赤外線が使われている。光を利用するので、光を遮蔽するものや距離があると効きが悪くなる
nocriaのリモコンには、赤外線を発光するLEDがない。これは無線LAN(WiFi)と同じ電波を利用しているため

 しかし電波式のリモコンは、そんな問題は一切ない。エアコンが家具の陰になっていても操作できるし、エアコンとは反対方向にリモコンを向けても操作できる。nocriaのリモコンはエアコンがまったく見えない廊下やキッチンからでも操作できるのだ。

 「たったそれだけのこと……」と思うことなかれ。エアコンのリモコンは、テレビのリモコンとは勝手が違う。

・エアコンはリモコンホルダーに挿してある場合が多い
 赤外線リモコンのホルダー設置場所は、赤外線が本体に届く場所に限られる。リモコン式なのに、エアコン下の壁のホルダーまでリモコンを取りに行くという滑稽なシーンが多々ある。

・温度センサー内蔵のリモコンだと快適な室温にならない
 エアコンの中にはリモコン内蔵の温度センサーを本体が読み取り、室温を管理するものがある。リモコンの上に新聞が乗っていて(かなりよくあるパターン)通信できない場合など、室温がうまく調整できず熱かったり寒かったりする。

・電気代の管理など本体と通信する機能が誤動作する
 電気代が表示されるリモコンなどでは、本体と通信できないと誤動作したり、動作しなくなることがある。ハイエンドな賢いエアコン&リモコンは、やり取りする情報量も多く、ボタンを押したあと、しばらくリモコンを本体に向けておく必要がある。操作後すぐに床に置いてしまったりすると、通信エラーを起こしてしまうことも。

赤外線式の場合、リモコンホルダーは申し合わせたようにエアコン直下の壁についている。これは確実にリモコンで操作できるようにするため、置き場所が限られているため
リモコンの上に新聞が載っていたり、そっぽ向いて床に置いてある赤外線リモコンは本体と通信ができず、室温が不安定になる場合がある
データの通信時間が長いため、通信途中でリモコンを置いたりしてしまうとエラーになってしまう

 でも、大丈夫。nocriaの電波式のリモコンならこれらの問題が一挙解決だ。まず便利になるのが、リモコンホルダーの設置場所がどこでもよくなる点。エアコンが見えないキッチンの影の柱でもいいし、家具の陰もOK、ドアや壁でさえぎられている場所でも問題ない。

 nocriaのリモコンには、温度センサーが内蔵され、人がいる付近の温度を快適にしたり、本体と連携して電気代のガイドや節電のアドバイスなども行なう。本体とのやり取りは電波で行うので、まったくと言っていいほど誤動作しないのも特徴だ。

家具の陰になるような場所にリモコンを設置しても、電波なら家具などを回り込んで本体まで届くので、設置場所に制限がない
たとえリモコンの上に新聞が載っていても本体とリモコンで通信できる
無線LANと同じなので、ドアの向こうからでも、違う階からでも操作できる

リモコンと付属のプチポンでさらに便利に賢く快適に

 nocriaの2014年モデルからは、標準的なリモコンに加えて「プチポン」と呼ばれるON/OFF操作だけできるスイッチも標準添付されている。

標準サイズのリモコンは、持ち手部分が細く握りやすく、ディスプレイ部分が大きくなっている
プチポンは、ボタンが大きく操作しやすい。運転と停止のみに機能が絞られているので、操作も簡単

 大きなリモコンはリビングに置いて、プチポンは玄関に置いておくというのもいいだろう。これならエアコンの消し忘れに気づいても、リビングに戻らず玄関で消せる。しかもエアコンが運転中かどうかも確認できるので便利だ。細かい操作が苦手だったり、リモコンの字が読みづらいという高齢者でも、プチポンだったら簡単に操作できる。

動作確認ボタンを押すと、エアコン本体が見えなくても動作状態がランプで表示される
玄関にプチポンを置いておくと、消し忘れのときに便利。帰ってきたら玄関でエアコンのスイッチも入れられる

 nocriaは、1台のエアコンに5台のリモコン、もしくは1台のリモコンに5台のエアコンを登録できる。つまりリビングと寝室にnocriaを入れれば、1つのリモコンで別の部屋のリモコンも操作できるというわけ。暑い夏にはあらかじめ寝室のエアコンを入れたり、寒い冬は寝室からリビングのエアコンを入れることができる。こんな便利な使い方ができるのは富士通ゼネラルだけ。もちろん電波式のリモコンなので、1Fから2Fのエアコンを操作することもできる。

1台のエアコンには5つのリモコン、1つのリモコンには5台のエアコンを登録できるので、家全体でnocriaにするとさらに便利

無理せず省エネできる音声ガイダンスでエコ&快適

 DUAL BLASTERが作る気流で体感温度が下がるため、エアコンの設定温度を少し高めに設定しても十分に涼を取れることを前編でお伝えした。しかしnocriaは、これ以外にも省エネ機能を搭載していて、フツーに使っているだけで節電できるようになっている。

・人センサーで自動的に電力セーブ
 洗濯物を取り込んだり、ちょっとお風呂に入ったりと人が数十分いなくなるのは結構あること。nocriaなら人が部屋にいないことを見極めて10分後にパワーセーブ運転に切り替えてくれる。また設定によっては30分誰もいないと電源をOFFする機能も備えている。さらに1時間もしくは3時間経過すると、エアコンを自動的に電源OFFするので消し忘れの心配もない。

・冷えすぎ暑すぎを本体とリモコンの温度センサーで監視
 nocriaには部屋全体を見張る温度センサーが内蔵されていて、部屋を19のブロックに分けて温度を監視・管理している。さらにリモコン本体にも温度センサーが内蔵されていて、「リモコン周囲の温度=人がいるところの温度」として、温度管理を行なう。

人センサーはエアコン中央部にある。人がいなくなると自動的にパワーセーブや電源を消してくれるので便利
本体の温度センサーは部屋を19のブロックに分けて温度を監視・管理する。またnocriaのリモコンには温度センサーが内蔵されており、エアコン本体の温度センサーとともにエアコンのムダとムラをなくす

 そのため窓ぎわなどで室温にムラができてしまっても、DUAL BLASTERでうまく気流を作り、人には直接冷気が当たらないように室温をコントロールできる。また冬場の暖房では、どうしても部屋の天井に集まりがちにな暖気を部屋全体に、そして人の足元に送るように制御してくれる。

・音声ガイダンスで無理なく快適さを保ったまま節電
 たとえば外の気温が設定温度より下がったとき、「外の温度が設定温度より下がっています。節電設定ボタンを押すと運転を停止します」というように、音声で節電をアドバイスしてくれる。他にも今日の電気代が昨日の電気代を越しそうな場合や、電気代の単価が上がりそうな場合などに音声アドバイスが流れる。こうしてアドバイスにしたがってリモコンを操作すると、節電効果が徐々に上がっていくというわけだ。

 さらに音声案内は節電機能だけでなく、リモコンの操作をしたときに設定を復唱してくれる。たとえば電源を入れたときは「冷房28℃で運転を開始します」と音声アナウンスがあるので、寝ぼけまなこで操作もできる。また忙しいときは、リモコンの画面を確認しなくても設定温度や外気、湿度などを読み上げてくれるので便利に使える。

2段階で消費電力を抑えられる電流カット機能

・もっと積極的に節電するなら2段階の電流カット機能もあり
 電車は弱冷房車を選ぶ、オフィスでは上着が手放せないという人にオススメなのが、電流を20、50%の2段階でカットできる機能だ。つまりエアコンの冷暖房能力は落ちるが、消費電力を下げるというものだ。

 このようにnocriaには、段階的に設定できる節電機能がいろいろ付いているので、気温や湿度、自分や家族の体調などに合わせて、無理のない節電ができるのも魅力だ。

冬はDUAL BLASTERが温風を床に押し付けてエコ&快適

 これから夏本番で季節はずれとなってしまうが、nocriaは暖房機能も優れている。残念ながら実際には利用できなかったが、昨年nocriaを購入した友人は「床暖房みたいに暖かい」と強調していた。

 友人いわく、それまで使っていたエアコンと比べると、足元がとにかく暖かいという。エアコンの暖房機能は「足元が暖かい」というのが常套句になので、半分マユツバだったが、よく聞いてみると納得。どうやら夏場はサーキュレーションするDUAL BLASTERの向きを変え、中央の吹き出し口から出た温風を床に押し付けるらしいのだ。

中央から吹き出した温風を押さえ込むような気流を作るDUAL BLASTER。この効果で部屋全体の床が床暖房のように暖かくなる

 DUAL BLASTERのない一般的なエアコンは、センターから吹き出した温風は床に跳ね返って天井に溜まってしまう。これは温かい空気は軽く、冷たい空気が重いため、床に向かって温風を吹き出しても舞い上がってしまうためだ。宙に浮く風船をいくら床に投げても、すぐ天井に登ってしまうのと同じことだ。

 しかしDUAL BLASTERを使うと、床に吹き出した温風を上から押さえつける気流を作るので、部屋の床が隅々まで温かくなるのだ。DUAL BLASTERの吹き出し口は小さいが、あるとないとでは大違いだった冷房の効きを考えると、冬の足元は暖かくなるというにも納得だ。

 またエアコン暖房の寒さのひとつに、霜取り運転中の底冷えがある。暖房をしばらく使っていると、室外機の熱交換器にはミッシリと霜がつき、そのまま使うと暖房効率が悪くなってしまうので、数分間霜取り運転を行なう。

 このとき屋内機の熱交換器は、冷房を使ったように冷えてしまうので、たとえ送風用のファンを停止していても吹き出し口から冷たい空気が出てきてしまう。霜付きは寒い地方だけの話ではなく、ごく普通の地域でも起こる現象。横浜に住む筆者だが、何度も霜が付いた屋外機を見ているだけでなく、霜取り運転を底冷えを体験している。

霜取り運転中でも室内機の熱交換器が冷えないように、特殊な配管とバルブを使っている

 nocriaは、特殊な配管とバルブを使い霜取り運転中でも室内の熱交換器があまり冷えないようにしている。そのため、気づくと底冷えするということもなくなるので、霜取り運転していることすら気づかないだろう。

フィルター自動クリーニングはないが、簡単・楽ちんのメンテナンス性

 nocria Xシリーズは、富士通ゼネラルのハイエンドエアコンだが、フィルター自動クリーニング機構はない。なぜなら自動クリーニング機能に使っていたスペースに、より大型の熱交換器を入れることで、エアコン本来の機能である冷暖房機能に注力したためだ。

 フィルター自動クリーニング機能は、あれば便利だし、掃除をしてくれて損はない。しかし毎回運転するたびに掃除するほど、汚れが溜まるものでもない。

エアコン本体のフィルターは、前面のフタを跳ね上げれば簡単に引き出せる
DUAL BLASTERのフィルターも簡単に取り外しOK

 筆者の独断だが、自動クリーニング機能は付加機能の中でもかなり優先順位は低い。フィルターを1カ月に一度掃除機で軽く吸うぐらいならそれほど手間もかからず、不便さも感じないだろう。

 もしエアコンの購入ポイントとして「フィルター自動クリーニングが必須」という場合は、nocria Zシリーズにするといい。ただしDUAL BLASTERは搭載されていないので、自然な気流の涼しさは得られなくなる。

 なお熱交換器は抗菌・防カビコーティングされているので、冷房を使っていれば湿気の水とともに屋外に排出されるので、掃除の手間かからない。ほぼメンテナンスフリーと考えてもいいだろう。

間取りが複雑になったオシャレな住宅にピッタリ!

 ここまで2回に渡ってレポートしてきた富士通ゼネラルのエアコンnocria Xシリーズ。

 同サイズの他社製エアコンに比べて、巨大な冷・暖気の吹き出し口と巨大なフラップで大風量を送り出す。しかもDUAL BLASTERならではの気流により、広く複雑な形状の間取りでも部屋を均一に涼しくでき、設定温度を一段階上げても気流で体感温度の涼しさは変わらない省エネエアコンだ。しかもその涼しさは、森林の奥にあるトンネルから吹くような自然の涼しさで、実に気持ちがいい。

 フィルター自動クリーニング機構を世界ではじめて搭載したのは富士通ゼネラル。そして2つの気流を持つDUAL BLASTERも富士通ゼネラルが世界に先駆けて搭載した。

 従来のエアコンでは不可能だった自然な気流制御は、今後のエアコンの標準機能になるかもしれない。それほど革新的なものであると感じた。

 エアコンの効きが悪いキッチンを涼しくしたい! 複雑な間取りで室温にムラがあるリビング・ダイニングを快適にしたい! リモコンの効きがどうにも悪い! という方には、ぜひオススメしたい次世代型エアコンだ。

藤山 哲人