家電製品クロスレビュー
ダイソン「DC35 マルチフロア」その1

~新生活の掃除機に迷ったらこれ1台でOK
by 正藤 慶一

 家電クロスレビューは、注目を集めている家電製品を複数の人間が交代で使って、レビューを行なうコーナーです。


ダイソン「デジタルスリム DC35 マルチフロア」

 今回からスタートする「家電クロスレビュー」は、注目の家電を交代でレビューをしていくことで、より製品の良さを引き出すことが目的のレビュー記事。第1回目に取り上げるのは、ダイソンのサイクロン式ハンディクリーナー「Dyson Digital slim DC35 multi floor(デジタルスリム DC35 マルチフロア)」だ。



メーカーダイソン
製品名Digital slim DC35 multi floor
(デジタルスリム DC35 マルチフロア)
発売日2月14日
直販価格49,800円

 DC35を取り上げる理由は、従来からの改良点が非常に大きいところだ。ダイソンはこれまでにも、「DC16」「DC31」といったハンディクリーナーを送り出してきたが、今回のDC35には、これまでなかった機能を搭載している。

 まずはモーター。小型で軽量、エネルギー効率も向上したという「ダイソンデジタルモーター」を採用している。さらに、本体に取り付けることで、床の掃除にも使用できる「ロングパイプ」や、ダイソンのキャニスター型(床移動型)掃除機と同じ掃除ヘッド「カーボンファイバー」など、付属品も追加されている。これらの新しい機能が、いったいどのように働いてくれるか。それを複数の人間で判断しようという狙いがある。

 取り上げる理由としてはもう1点、ハンディクリーナーなので、消費電力がキャニスター型と比べて少なく、またコードレスである点だ。最近は震災の影響による電力不足が叫ばれているが、DC35の消費電力は最大でも200W(定格)。キャニスター型だと強運転で最大1,000Wを越えることもあるなか、この低消費電力は大きい。しかも、充電式のため、例え停電したとしても、充電しておけば問題なく使うことができる。一方で、消費電力が少なくて充電式であることで、掃除能力はどうなのだろうか? ということも見ていきたい。

 1回目では、30代独身で賃貸マンション住まいの私が使い、一人暮らしの人間にDC35がどのように活躍してくれるかを見ていこう。2回目では一戸建て住まい、最後となる3回目では夫婦2人暮らし世帯でのようすを紹介する。

 なお、DC35については、既に「家電製品レビュー」でも詳しく取り上げている。クロスレビューと併せて、参考にしていただきたい。

運転音は意外とうるさくない

意外……と言っては失礼かもしれないが、運転音はうるさいと感じなかった。写真はカーボンブラシのモーターヘッド使用時

 そんなわけでDC35を使ってみたのだが、結論を一言で表せば「最初は不安だったけど、すごく便利なハンディクリーナーだ!」。

 実は、DC35には当初あまり期待していなかった。というのも、「ダイソン」イコール「運転音が大きい」というイメージがあったからだ(これはあくまでキャニスター型での話ではあるが)。賃貸マンション暮らしで、しかも夜に掃除する機会の多い自分にとっては、静音性は吸い込み力と並ぶ購入動機の1つ。だからこれまでは、“静音”を謳う国内メーカーの製品の掃除機に、どうしても目が移ってしまっていた。

 しかしこのDC35、実はそんなにうるさくない。そりゃ掃除機なので、空気を吸い込んだり排気したりなどの音はどうしてもするが、思っていたよりも不快感はない。擬音でいうなら「ホワー」といったところか。また、本体が軽量なこともあってか、床など掃除面に響く音もあまり大きくない。さすがに“静音”ほど静かというわけではないが、音に関しては及第点を与えても良いのでは……と感じた。

 また、運転する時にはトリガーを引く、という操作法も分かりやすい。引けばシュッと動き、離せばすぐに止まってくれるのもうれしい。本体は2.2kgとややずっしりした感覚はあったものの、そこまで重いということもなかった。

ゴミの吸い込みも文句なし。豊富なアタッチメントでどこでも使える

 じゃあ肝心の吸い込み力はどうかというと、これはまったく問題なし。床や机にあるホコリや髪の毛などは、確実に吸い込んでくれる。ハンディ式は、気になるところをサッと掃除がけできる一方で、ゴミの吸い込み能力はイマイチ……てなことがありがちだが、DC35に限って言えば、まったく問題はないだろう。

 特に気に入ったのが、カーボンファイバーブラシ搭載のモーターヘッドだ。これはモーターの力でブラシが自動的にグルグルと動いて、ホコリを掻き取ってくれるというもので、キャニスター型で言うところの「パワーブラシ」に当たるヤツ。カーボンでできたブラシが床に静電気が発生するのを抑えるため、ホコリが残りにくいという触れ込みなのだが、ダストボックスに溜まったホコリの塊を見ると、売り文句もホントかも……と思えてくる。ちなみにこのモーターヘッド、キャニスター型の最新モデル「DC26」でも採用されている。

 あと、先端部にブラシが付いたブラシノズルも良かった。テレビやパソコンのキーボード、ゲーム機類に溜まったホコリも、チョイチョイとブラシで触れるだけで取れてしまう。この手軽さが、キャニスター型には無い良さだ。家に置いているゲーム機本体やフィギュアのホコリが気になる人には、もうこの時点でお勧めしたいくらいだ。

アタッチメントを付け替えれば、いろんなところを掃除できる。「マルチフロア」を謳うだけある。写真はブラシノズル使用時アタッチメントを変えて座布団の掃除にも使用。気がつくとダストカップにはたくさんのゴミやホコリが溜まっている。成果が見えるのはうれしい


ロングパイプが伸縮すれば……

 ここまでDC35の良い点ばかりを取り上げてきたが、中には「これはチョット気になるな」という部分も無いわけではない。

 それが、今回から追加されたロングパイプだ。これを付けることで、立ちながら床掃除に使える……というのがメリットなのだが、さすがにキャニスター型と比べると、取り回し易さは劣る。というのも、パイプの長さは調節できないため、ちょうど良い位置になかなかフィットしない。そのため、体をやや前に傾けた状態で使わなければならず、不便だった。DC35は本来的にはハンディクリーナーのため、本家キャニスターと比べて文句を言うのは意地悪かもしれないが、逆にいえば、このパイプの長さ調節ができれば、“もはやキャニスター式掃除機はいらない”ってなことにもなるかもしれない。

 あと、置き場所の問題。DC35は壁掛け用のアタッチメントが付いているのだが、これがネジを使って、壁に穴を開けて固定する必要がある。だが、賃貸住宅の我が家では、そう簡単に壁に穴は開けられない。結局、部屋の隅や押入れに置いておくという、これまでの掃除機とあまり変わらない収納法になってしまうのは非常に残念。次回はネジだけではなく、マグネットや両面テープでも大丈夫なようにしていただきたい。

 重さについては、そこまで問題は感じられなかった。ゴミをワンストロークでしっかり取ってくれるので、長い間持ちっぱなしということがないことが大きいだろう。また、連続運転は最長約15分と短いが、我が家は2DKの狭い賃貸マンションなので、普段の掃除では10分以上も連続して使うことはなかった。しかし、大掃除でガッツリ使う場合や、毎日15分以上ガッチリ掃除しないと気が済まない人、部屋が広くて長時間使う必要がある場合には、メインの掃除機としては向いているとは言い難い。

 いくつかの欠点はあるものの、全体的にはハイレベルなハンディ式掃除機であることには間違いない。ちょっとゴミが気になったときに、ヒョイっと持ち出してすぐキレイにできるアクセスのしやすさ、しっかりとゴミを取ってくれる基本能力の高さ、キャニスター式も顔負けのアタッチメントの豊富さは、ほかのハンディ掃除機にはないメリットだ。

 これまでのように、重い本体を取り出し、コードを引き出してコンセントに入れて、1kWの大消費電力で空気を吸い込む、といったこれまでの掃除機の“当たり前”を、覆してしまうかもしれない掃除機だ。ワンルームから2DKくらいの比較的コンパクトな部屋に住んでいる方で、新生活の掃除機選びに迷ったら、これを1台買っておけば、すべてこなせるはずだ。また、既に掃除機を持っている人でも、「使うたびにいちいち出すのが面倒くさい」という場合には、2台目として役に立ってくれるだろう。





2011年4月26日 00:00