藤本健のソーラーリポート

3万円でちゃんと使える太陽光発電システムをDIYする!

「藤本健のソーラーリポート」は、再生可能エネルギーとして注目されている太陽光発電・ソーラーエネルギーの業界動向を、“ソーラーマニア”のライター・藤本健氏が追っていく連載記事です(編集部)

3万円で太陽発電システムを手作り

 「太陽電池にとても興味があるけれど、マンション住まいなので難しい」、「100万円単位の太陽光パネルの設置は難しいので、もっと手ごろなものはないだろうか」、そんな風に考えている人は少なくないだろう。もちろん市販の小型太陽電池システムというのも、いろいろあるが、50Wのパネルにバッテリー、100Vに変換するインバーターもセットにした持ち運び可能なシステムを3万円で手作りしようというプロジェクトがある。NPO法人太陽光発電所ネットワークの神奈川地域交流会が行なっている「出前出張発電所」というのがそれだ。先日行なわれた出前発電所作りのセミナーに参加してきたので、その内容をリポートしてみよう。

NPO法人太陽光発電所ネットワークの神奈川地域交流会が行なっている「出前出張発電所」
持ち運び可能なシステムを3万円で手作りしようというプロジェクト

 NPO法人太陽光発電所ネットワーク(略称:PV-NET)というのは2003年に発足した太陽光発電を屋根に設置しているユーザー会で、いわば太陽光発電所長の集まり。太陽光発電の普及や啓蒙、またユーザー同士の情報交換といったことを目的に活動を行っており、現在の会員数は2,683人という全国組織。各地域ごとのグループで独自の活動を行なっているのも大きな特徴となっている。

 筆者自身もこのPV-NETのメンバーであり、発足直後の2003年から参加し、神奈川地域交流会の世話人として名前は連ねているが、最近は半分、幽霊会員という状況で、あまり積極的な活動はできていないのが申し訳ないところ。その神奈川地域交流会が今、力をいれているのが出前発電所プロジェクトなのだ。

 この出前発電所プロジェクトは、神奈川県内の各地でハンズオン形式でのセミナーを開き、キャスター付きで持ち運びが可能な、小型の発電所をDIYで作ってしまおうというもの。屋根につけて売電するシステムではなく、作った電気を自分で活用する自立型のシステムだ。これまで横浜、相模原などで5回に渡って開催してきており、多くの人たちが参加してきた。一般参加者は1人3万円、PV-NET会員は5%引きという費用が必要になるのだが、この価格の中にセミナー受講料、テキスト代とともに、出前発電所の部材一式が入っており、その場で作っても持ち帰ることができるというのが大きなポイントだ。

小型の発電所をDIYで作るという取り組み
今回取材したのは第5回目のセミナー
今回使われた部材一式

出前発電所って何?

 しかし、出前発電所とは、そもそもどんなものなのだろうか?

 ネットなどで検索してみると分かるとおり、50Wの太陽電池モジュールは中国製の安いものなら1万円程度で売られている。確かに、このモジュールに太陽光を浴びせればすぐに発電してくれるのだが、それだけだと、まともに使えない。というのも、このモジュールから出てくるのは直流の電気であるため一般の家電機器で使うことができないし、電池など直流で動かす機材であっても、日照の状況によって電圧も変わるし、出力も変わってしまうから、まともに動かせないのだ。もちろん、太陽電池モジュールだけでは日が陰ると電気が使えなくなってしまうのも大きな問題点でもある。

 そこで、この太陽電池モジュールで発電した電気をバッテリーに貯めるとともに、その出力をインバーターを使って100Vの交流に変換して使えるようにした、というのが出前発電所なのだ。

太陽光発電システムの基礎知識を教えてくれる

 こうしたシステム自体、いくつか製品化はされており、この連載でも以前「バイオレッタソーラーギア 」というものを取り上げたことはあった。ただ、結構いい値段になってしまうし、取り扱い上の注意点もいろいろあるのも事実。そこで、できるだけ安い部品を集めた上で提供し、太陽電池やバッテリーに関する基礎知識をしっかり講義し、その知識をベースにシステムを作り上げてみようというのが、このセミナーの狙いなのだ。

回収ルートや安全性などNPOならではのきめ細やかさが光る

 先日、横浜市保土ヶ谷区で行われた第5回のセミナーでは3組の実習希望者と5人の見学者が参加して行なわれた。まずは、太陽光発電の基礎として「電力と電力量の違い」、「太陽電池の原理」、「太陽電池モジュールの特性」……といったもの講義が行なわれ、これから作るシステムの概要なども説明された。その中で、一つポイントとなるのが、バッテリーについてだ。先ほどのバイオレッタソーラーギアを含め、市販のこの手のシステムのバッテリーにはディープサイクルバッテリーというものが多く用いられている。

PV-NETの出前発電所セミナーでは、多く出回っているディープサイクルバッテリーではなく、自動車用の鉛蓄電池を使う。これは、回収ルートまでを考えてのことだ

 ディープサイクルバッテリーというのは鉛蓄電池の一種で、深い放電の繰り返しに強くユーザーとしては扱いやすいのだが、一つ大きな問題点がある。それはディープサイクルバッテリーは産業用バッテリーという扱いになっているため、回収ルートが不明確なのだ。鉛蓄電池の一種だから鉛が入っているほか、希硫酸などの有害物質が多く含まれているため、普通ゴミとして扱うことはできないし、ましてや放置しておくことは論外。

 電池工業会によると日本メーカー品は各メーカーが有償で引き取ってくれるが、多く出回っている中国メーカーのものの場合、そうしたルートもない。本来は輸入業者が適正に処置すべきところであるが、実情はかなり曖昧になっている。PV-NETの出前発電所の企画段階でも、もちろんディープサイクルバッテリーを扱うことを検討したが、いい加減なものを出すわけにはいかない、という判断から、自動車用の鉛蓄電池を扱うことにしたのだ。そう自動車用であれば回収ルートが明確で、新たなものを購入すれば使用済みバッテリーは通常無償で引き取ってもらえるから安心なのだ。

 一方、屋根に取り付けるタイプの太陽光発電では、太陽電池モジュールのほかにパワコンが必要となるが、それに相当するのが充電コントローラとインバータという2つの部材。まずコントローラのほうは、過充電防止、過放電防止、太陽電池への逆流防止の3つの役割を担うもの。この充電コントローラを経由せずに太陽電池とバッテリーを直接接続したりすると、いろいろと危険なことが起こるため、充電コントローラは重要な役割を担うのだ。一方のインバータはバッテリーの直流出力を100Vの交流に変換するものとなっている。インバータについてはカー用品の廉価なものを使用しているため、商用電源のような正弦波ではなく、矩形波(疑似正弦波)であるため、機材によっては利用できないものもあるが、パソコンやテレビを動かしたり、携帯電話の充電や照明機器を使う上では問題なく利用することができている。

過充電防止、過放電防止、太陽電池への逆流防止の3つの役割を担うコントローラ
バッテリーの直流出力を100Vの交流に変換するインバータ
インバータは、カー用品用の廉価なものを使用しているため、商用電源のような正弦波(左)ではなく、疑似正弦波の短形波になる(右)

包丁スタンドや突っ張り棒など工夫を凝らした材料で!

 そのほかこれらの部材をまとめて持ち運びができるようにするため、いろいろな工夫をしているのがNPOならではのユニークなところ。ホームセンターで入手したプラスティックの箱と持ち運び用の頑丈なキャスターを用意した上で、その箱の中にうまく設置できるよう100円ショップで揃えた包丁スタンド、突っ張り棒のほか、結束バンドや熱収縮チューブ、マジックテープ……などを利用しているのだ。セミナーにおいては、それらの取り付け方なども懇切丁寧に説明をし、多くのスタッフも手伝いながら作業を進めていったのだ。

100円ショップで揃えた包丁スタンド。これはプラスティックの箱と持ち運び用のキャスターを固定するために使う
突っ張り棒も立派な材料だ
100円ショップで入手した包丁スタンドに充電コントローラとインバータを括り付ける
太陽電池モジュール以外はすべて、プラスチックのケースにぴったりと収納できた
最も難しいのは圧着端子の取り付け。正しく配線しないと事故が起こる可能性もある

 その組み立て作業の中でも難関といえるのが圧着端子の取り付けである。小型のシステムとはいえ、50Wの出力を持つ太陽電池に大きなバッテリーを接続し、それを100Vに変換して使うため、安全に配線しないと、事故が起きる可能性もある。そこで、専用の工具を用意し、電線に端子を圧着させ、確実な形での配線、接続ができるようにしているのだ。こうした工具は高価で、普段の生活では使用用途がないため、NPOの備品として購入し、セミナーのときに貸し出す形にしている。

 こうした各部材を接続できたら、最後に太陽電池モジュールに照明器具で光を当てて、実際に発電しているかをチェック。参加した3組の方々は、人によって制作スピードに違いはあったが、どれも無事に動かすことができた。

太陽電池モジュールに照明器具で光を当てて、実際に発電しているかをチェック
人によって製作スピードに差があったものの、全て無事に完成した

その日に持ち帰って様々な使い方ができる

 ちなみに今回使った太陽電池モジュールは中国製のET-MA50Aというセル変換効率17%の単結晶シリコンを使ったもの。このモジュールは3世代目で、世代が新しくなるごとに、若干ではあるが変換効率が上がり、結果としてモジュールのサイズが小さくなってきている。外形寸法は645mm×540mm×35mmで4.5kgとなっている。一方、バッテリーは軽自動車用のメンテナンスフリータイプのもので9.5kg、その他インバータや充電コントローラー、ケースにキャリーカートなどを合わせると、トータル17.5kg。それなりの重さではあるが、大きめなタイヤがついていることもあり、電車で持ち帰ってもさほど苦労なく運べるようだ。

今回使った太陽電池モジュールはセル変換効率17%の単結晶シリコンを使った中国製のET-MA50A
右から第1世代、第2世代、第3世代
バッテリーとインバーター、充電コントローラなど合わせると総重量17.5kgになるが、タイヤが付いているので、持ち帰ることが可能

 このようにして自ら作った、小さな発電所は、マンションのベランダで活用してもいいし、洗濯物のように昼は外に出して充電し、夜に部屋に持ち込んで使うのもいい。アウトドアでのサバイバルアイテムとして利用するのも面白そうだし、もちろん災害時の非常用電源として使えるのも心強いところだ。

 こうした機材、自分で部品を集めて組み立ててもいいが、原価とほぼ変わらない価格で提供してくれて、組み立ての指導までしてくれるという点で、人気となっているのだ。ちなみに、次回のセミナーは9月28日に相模原市で開催される予定。詳細についてはPV-NET神奈川のホームページで確認していただきたい。

 また、神奈川県内に限らなくても、5〜6名程度のセミナー参加者と作業会場を確保できる団体であれば、個別の開催の検討も可能とのことなので、興味があれば、ホームページ経由で問い合わせてみるのもよさそうだ。

(藤本 健)