そこが知りたい家電の新技術

三洋電機「airsis(エアシス)」

~ウイルスまで取れる新機軸のサイクロン式掃除機
by 大河原 克行

空気まで掃除する掃除機

サイクロン式クリーナー「airsis(エアシス)」シリーズの新製品「SC-XD4000」

 三洋電機が、10月21日から出荷したサイクロン式クリーナー「airsis(エアシス)」シリーズの新製品「SC-XD4000」は、2007年にシリーズ第1号製品を投入して以来、同社が追求しつづけた「空気までお掃除する排気がキレイなクリーナー」というコンセプトを、さらに進化させたものとなっている。

 「床を掃除するだけでなく、空間すべてを清浄するというエアシスの特徴を、より具現化する進化を遂げた」と、三洋電機コンシューマエレクトロニクス家電事業部製造統括部事業推進部商品管理課・佐藤敬一主任企画員は自信をみせる。

三洋電機コンシューマエレクトロニクス家電事業部製造統括部事業推進部商品管理課・佐藤敬一主任企画員

 「掃除機をかけるとくしゃみが止まらないといった声や、あかちゃんが『はいはい』する目線の高さに掃除機の排気が吹き出すために、なかなか掃除機がかけられないといったユーザーからの声に対応するために、床だけでなく空気も掃除できる掃除機というコンセプトを思いついた。新製品では、0.08μm以上の微粒子をほぼ100%キャッチできるまで、空気清浄の機能が進化している」という。

 一般的なクリーナーの排気には、0.3μmの微粒子が、1Lあたり115,000個ほど含まれているという。

 ダニの死骸やフンが粉々に砕かれた状態では、ちょうど0.3μm程度の大きさとなり、考え方によっては、一部の掃除機ではこれらがそのまま室内に放出されていた可能性もあったわけだ。

 従来のエアシスでは、0.3μmまでの微粒子であれば、円筒形状のULPAリングフィルターでキャッチし、マイナスイオンで結合させることで、ほぼ100%キャッチしていた。

 新製品では、さらにマイナスに帯電させた帯電層を追加し、粒子の小さいゴミも電気的に引きつけてキャッチするとともに、フィルターの外郭部の接着に樹脂材を採用することでシール性能を向上。さらに進化させることで、0.08μmの微粒子までほぼ100%キャッチすることができるようになった。

 インフルエンザウイルスの大きさは0.1μm前後といわれており、従来の0.3μm以上では通り抜けていたものが、新製品では0.08μm以上のスペックであればキャッチできるということになる。

右が新たなULPAリングフィルターフィルターの外郭部の接着に樹脂材を採用することでシール性能を向上させている
従来製品では0.3μmの微粒子が11万個以上排気されていたそれが新製品では0という数字が計測されている

 「浮遊菌であれば99.9999%を除去、浮遊ウイルスであれば99.999%を除去できる」と同社では説明するが、排気をきれいにするというだけでなく、細菌やウイルスもキャッチするという点での進化は大きなものだといえよう。

 0.08μmの微粒子を測定するには高額の測定器を用いる必要があるが、同社では今回の進化のためにこれを長期間レンタルで導入し、繰り返し性能試験を行なったという。

空気をきれいにするための“立体的な掃除”

 さらに、排気の風によって床のホコリを舞いあげるという問題に対しても対処。「エアブロック」を採用しているのもエアシスの特徴だ。

 「掃除機のハイパワー化によって、排気風速が上昇する傾向にあるばかりでなく、電源コードリール部の冷却風を一定以上の風量を確保しなくてはならないという課題があった。これらの問題を解決するために、排気口よりも下部に空気の吹き出し口を設け、排気風およびコードリール冷却風を覆い、床面への吹き付けを防止することができる」という。

エアブロックの吹き出し口。通常は閉まっている電源を入れると吹き出し口が開き、風を上方に吹き出す。排気の吹き出しやコードリールの冷却風も一緒に上に吹き上げる

 さらにこのエアブロックの吹き出し口を利用して、掃除機がけが終了した後に、ホースを抜くと部屋中の空気を循環させながら汚れた空気を吸い込む「空気清浄モード」を10分間稼働。掃除後の部屋の空気をきれいにする。

 「『エアシス気流』と呼ぶこの機能によって、床面だけの平面掃除だけでなく、空気そのものをきれいにする三次元掃除スタイルを実現できる」としている。

 もともとこの機能は、最初の製品企画段階では搭載されていなかったものだ。

 「お客様から意見をお伺いするなかで、空気清浄機のような機能が搭載できないかという声をいただいた。そこでエアプロックの仕組みを活用しながら、空気の清浄という立体掃除をより進化させることができた」という。

進化したパワーブラシで隅やすき間を残さず掃除

 新たなエアシスのもう一つの大きな進化、それが「隅・すき間一発! 逆立ちパワーブラシ」だ。その名の通り、隅や、すき間といったハウスダストが溜まりやすい場所でも吸い取ることができるブラシの採用だ。

 これまでの課題は、ブラシの両サイドに回転ブラシを支える軸受けがあるために、回転ブラシが直接、隅には届かずに吸い取りムラが発生するという点だった。

 だが新製品では、設計を大幅に見直し、ブラシの右側部分をミリ単位の薄さとすることで、壁の横までブラシを届くようにし、従来製品ではブラシが届かなかった場所の掃除ができるようにした。

 「これを実現するための課題は、強度と性能、使用感を両立することだった。ブラシが端まで届く形状にすると、どうしても強度が弱くなる。一方で強度ばかりを追求すると自走性が損なわれ、操作性が悪くなり、性能も発揮しにくくなる。何度も形状や素材を研究し、試行錯誤を繰り返した」と佐藤氏は語る。

 辿り着いたのが、樹脂とステンレスを一体成形とした構造だった。ステンレス板を軸受け部分に使用し、強度を確保するとともに、ブラシ回転の安定化を実現。これにより、ブラシ毛が隅まで届くように限界まで芯体を延長することができたという。

新開発の「隅・すき間一発! 逆立ちパワーブラシ」(下)。従来のブラシ(上)では隅までブラシが届いていないが新製品で右側部(写真では裏返しているため左側部)が隅までブラシが到達している右側部分の構造。ステンレスと樹脂の一体成形となっている

 「樹脂とステンレスによる一体成形が、自走性は維持しながら、強度をもった形で隅までブラシが届くようになった要因」とする。

 エアシスでは、ブラシの前面部が開いて壁際のゴミを吸い取ることができる「ガバどり機能」を従来機種より継承。今回の新たな構造の採用により、前面と横方向の隅までブラシが届くことになる。

右側の隅のゴミがきれいにとれているのがわかる
さらに「ガバどり機能」によりブラシの前面部が開いて壁際のゴミを吸い取ることができる手元のグリップをひねるだけで、ブラシを変えずに隙間を掃除できる構造

 「右側だけしかブラシが届かないという点ではまだ改良の余地がある。次の目標は、左側部分もブラシが届くという仕組み」と、佐藤氏は将来的な進化にも意欲をみせる。

 右側だけブラシが届けば、左へ左へと回っていけばすべての四隅のハウスダストを吸い取ることはできるが、利便性をさらに追求するという意味では、左部分の構造の改良はこれからの課題といえるのだろう。

 三洋電機がエアシスで採用しているブラシは、そのほかにも多くの機能を備えている。

 手元のグリップをひねるだけで、ブラシを変えずに隙間を掃除できる構造としているほか、回転ブラシへの髪の毛、糸くずなどの絡みを防ぐための「からみブロック」を搭載。さらには、市販のウェットシートをブラシ部に巻き付けて掃除がけをするウェット拭き対応機能によって、ブラシでは取れないフローリングについて皮脂などの油汚れを除去したり、ダニのふんなどの水溶性のアレル物質の除去などに優れているといった特徴も持つ。

 ウェットシートのブラシへの巻き付けや、取り外しは手元のスイッチで行なえるため、手を汚さずに済むというのもありがたい仕組みだ。

 ウェットシートの巻き付け機能や独自のブラシ構造など、三洋電機の掃除機において回転ブラシの進化はまさに特筆できるものだといえよう。

市販のウェットシートをブラシ部に巻き付けて掃除がけをするウェット拭き対応機能ボタン1つで巻きつけ、さらに使い終わればそのまま吸い込むため手が汚れないウェットシートの操作は手元のボタンでできる

ペットの毛に有効、ティッシュでフィルターの目詰まりを防ぐ

フィルターの目詰まりを未然に防ぐ、「ティッシュでブロック」機能

 さらに三洋電機が継続的に搭載している機能の1つとして好評なのが、本体にティッシュをセットするだけでフィルターの目詰まりを未然に防ぐ、「ティッシュでブロック」機能だ。

 この機能はとくにペットを飼っている家庭で人気だという。

 ペットを飼っている家庭で掃除機を利用すると、サイクロン方式の場合、ペットの毛がフィルターに絡んでしまうといった理由から、量販店店頭でもなるべく紙パック方式の掃除機を進める傾向が強い。

 しかし、紙パック方式では、紙パックにゴミである程度一杯になる期間まで使用することが一般的であり、それまでに約2~3カ月の期間がある。その間、ペットの毛ならではの臭いが内部で発生することになる。

 エアシスでもペット臭ブロックフィルターを搭載し、ペットの臭いを抑制するなどの工夫を凝らしているが、ティッシュを使って、掃除するたびにゴミを捨てることができれば、臭いを断ち切るという点でも有効だ。紙パックに比べて、ティッシュ1枚という点では、コストの観点からも現実的な提案となる。

 このように進化したエアシスは、部屋全体をきれいにするという点での強化と、使い勝手の追求に力が注がれている。

 吸引力ばかりに注目が集まっている昨今の掃除機市場のなかで、三洋電機独自の視点での提案は、むしろ新鮮であり、的を射ているといえまいか。





2010年11月2日 00:00