老師オグチの家電カンフー

実家にありがちな、家電の残念な使われ方

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです

 こないだ実家に帰ったら、シャープの「蚊取空清」が置いてあったんですよ。

 さっそく、どのぐらい蚊が取れているか確認してみました。フタを開けてみたら小バエが数匹程度。購入してから約2カ月でこんなもんか……。というか、電源入ってないんだけど!

我が輩は「蚊取空清」である。蚊はまだ取っていない

 父親が言うには、「日中は窓を開けてるから、空気清浄機はムダ。だから電源落としてるんだよ」と。寝るときにオンにしているらしいが、そんなにすばやく蚊は取れないから。日中に蚊を見つけた時は、蚊取りラケットで殺っているらしい。さらに母親曰く、「1日1プッシュの蚊がいなくなるスプレーのほうが効くわ」。男は黙ってスプレー!(母親は女ですけど)

500円ぐらいで買える蚊取りラケット。我が実家においては、殺す蚊の1匹あたりのコストが「蚊取り空清」の数百倍分の1?

 かように、高齢の人には家電の電源を切りたがる、コンセントを抜きたがる習性があります。節約の観念が高いゆえでしょうか。昔は冬場になると冷蔵庫のコンセント抜いちゃうお婆ちゃんもいましたからね。そこまで行かなくても、DVDレコーダーの電源がコンセントレベルで切られている実家も少なくないんじゃないでしょうか。

 うちの母親もケータイは持っていますが、普段は電源オフにしているので、電話してもつながりません。デジタルデトックスなんてレベルじゃないです。たまにメールが来るのですが、電源を落とされる前に返信するようにしています。ピンポンしてしばらく反応しないと帰ってしまう宅配便のようです。おそらく、既読スルーの意味も知らないでしょう。

 家電に布のカバーをかけるのも、我が国特有の文化です。うちの実家でも、固定電話のカバーこそないものの、液晶テレビにはお手製の布カバーがかけられています。そんな風習をバカにするのは簡単ですが、我々もスマホにカバー(ケース)を付けてますからね。カワイイからとか、リセールバリューに影響するからとか理由をつけつつも、目くそ鼻くそかもしれません。

 いちいちコンセントを抜いたり、カバーを付けたりするのは、使うときに面倒だと思うのですが、引退した高齢者には時間がたっぷりあります。寿命という点では持ち時間はあまりないはずですが、日常に使える時間は余っている。

 そして、ケチケチ使うので、たいていの高齢者は物持ちがいいです。家電が10年、20年持つのは当たり前。パソコンでもWindows XPが普通に使われていたりします。ちなみに、実家ではまだ初代iPadが現役です。

 「古っ!」と思うでしょうが、発売が2010年なので、実はまだ7年しか経っていません。IT世界の時間軸では、かなり古く感じますが、人生において7年前ってそんなに昔じゃないですよね。そう感じるのは、自分が老いてきたからでしょうか?

生き急げるのも、若いうちだけです。

小口 覺

雑誌、Webメディア、単行本の企画・執筆、マンガ原作、企業サイトのコンテンツ制作を手がけるライター。日経MJの発表した「2016年上期ヒット商品番付」では、命名した「ドヤ家電(自慢したくなる家電)」が前頭に選定された。

Webページ「有限会社ヌル/小口覺事務所」
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