データで読み解く家電の今

インフル・花粉だけじゃない? 空気清浄機は通年商品を目指す

販売実績を基にしたデータから、国内家電市場の実態を検証(協力:GfK Japan)

 冬のインフルエンザ、そして春に向けた花粉シーズンに、注目が高まる「空気清浄機」。昨年は蚊取空清などの新提案もあったが、現在の市場環境はどうなっているのだろうか?

パナソニック「F-VXM90」

 GfK Japanの行村 真実子アナリストによれば、「空気清浄機はインフルエンザの流行、花粉やPM2.5の飛散状況といった外的要因に販売が大きく影響され、10-3月で年間販売台数の約7割を占める季節家電」という。ただし、通年商品化に向けた取り組みも進んでおり、「蚊取り機能や、ファン機能など従来の需要時期以外でも使えるモデルの登場がこの後押しとなっている」と、変化の兆しも見えているようだ。

シャープの蚊取空清「FU-GK50)」

 家電量販店での販売動向をみると、2013年はPM2.5への不安から販売が急伸したが、需要が一巡したこともあり、ここ数年販売台数は落ち着いている。'16年も販売台数は前年並み、ただし販売金額は、平均単価上昇により前年から1割増となった。

 特に、50,000円以上の高価格帯の販売が拡大し、'16年の数量構成比は前年から6%ポイント拡大し18%となった。行村アナリストは、その要因について「高感度センサーやフィルター自動掃除機能を搭載した高付加価値製品や、スリムでデザイン性の高い製品のラインナップ拡充も影響している」と分析する。

 加湿機能搭載モデルは13年まで拡大傾向にあり販売台数の9割を占めたが、蚊取空清やファン付など加湿以外の機能搭載が増えたことも影響し、'16年では、7割強にまで縮小した。「加湿機能付きの空気清浄機の販売はここ数年縮小している。加湿機は5,000円未満の低価格帯が人気で、販売台数の約半数を占める。加湿機能を重視する人は、別途購入するケースが多いと見られる」という。

フィルター自動掃除機能を強化した日立「自動おそうじ クリエア」
ダイキン 加湿ストリーマ空気清浄機「MCK70T」

 また、近年のトレンドといえるのが、適用床面積の大型化。適応床面積20畳未満のモデルは'16年の数量構成比が18%と前年から6%縮小。一方で、40畳以上は徐々に拡大しており5%に達した。「実際の部屋よりも畳数が多い製品を選ぶことで空気を早く浄化できることが周知されてきた」ため、適応床面積の広いモデルに人気が出てきている。

ブルーエア「Blue by Blueair」

 総務省の統計によれば、空気清浄機の16年時点の世帯普及率は、全国で最も高い東京都でも約50%、最も低い島根県では約30%。「新しい訴求軸の製品が出てくることによって、ユーザー層が拡大する余地はまだあるといえる」(行村アナリスト)という。

出典「全国有力家電量販店の販売実績集計/GfK Japan調べ」