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オリックス・NECら、「国内初」家庭向け蓄電池レンタルサービス
~毎月約5千円。太陽光パネルの屋根貸しで“実質0円”も
(2013/4/26 00:00)
オリックス、日本電気(NEC)、エプコは、蓄電池のレンタルサービスを行なう新会社「ONEエネルギー」を共同で設立、4月26日より東京電力管内にてサービスの受け付けを開始する。レンタル価格は毎月5,145円。東京都の場合、補助金により毎月3,045円で利用できる。取り付けは6月1日以降の予定。
電気料金が安い夜に充電、電気料金が高い昼に使って節約。太陽光との連携も
ONEエネルギーは、“国内初”の蓄電池レンタルサービスを行なう会社。NEC製の定置用リチウムイオン蓄電池(5.53kWh)と、エプコが開発した自宅のエネルギーを“見える化”するアプリケーション「ぴぴパッ!」というシステム一式を、レンタルで提供するのが主なサービスとなる。
蓄電池を導入するメリットとしては、停電時でも電気が使用できる点、電気代の削減の2点がある。停電時の場合、テレビや冷蔵庫、照明など、生活に必要な家電が半日使用できるという。
電気代については、電気料金が安い深夜に蓄電池の電気を蓄えて、電気が高い昼間に使用することで削減できる。同社が実際に、蓄電池を設置したモニター宅(東京都練馬区)における1日の電気料金を比較したところ、蓄電池なしが約370円だったのに対し、蓄電池ありだと約283円と、1日で87円の節約になった(料金プランはオール電化向けの料金プラン「電化上手」。以下同じ)。
また、自宅で導入している太陽光発電システムとの併用も可能。太陽光発電システムと併用した場合、1日の電気料金は約82円で、1日当たり288円の節約になった。なお、今ある太陽光発電システムに、本サービスの蓄電池を設置しても、売電価格が安くなってしまう「ダブル発電」としてはみなされないという。
蓄電池のレンタルプランは、初期費用が0円、月額が5,145円だが、地域によって異なる。東京都の場合は、「家庭の創エネ・エネルギーマネジメント促進事業」の補助金を利用することにより、月額3,045円となる。また、蓄電池の性能が低下した場合は交換もできる。新築・既存・リフォームなど、一戸建て全般に取り付けられる。
契約は10年間。契約期間終了後の蓄電池の継続利用はできない。撤去・返還費用は利用者が負担する。また、マンション、共同住宅では利用できない。
屋根貸しサービスも利用すれば、“実質0円”で蓄電池が利用できる
同社ではさらに、蓄電池レンタルサービスの利用者が所有する一戸建ての屋根を定額で借り受け、太陽光発電パネルを設置する「蓄電池レンタルプラン+太陽光屋根借りプラン」も用意する。利用者には月額約2,500円の利用料が、ONEエネルギーより支払われる。太陽光パネルで発電した電気は、再生エネルギーの全量買取制度によって、ONEエネルギーが1kWh当たり36円ですべて売電する。
太陽光屋根借りプランの契約期間は約20年。契約終了後はパネル一式がユーザーに譲渡される。停電時には蓄電池と併せて、非常用電源として使用できる。
同社では、蓄電池を使用することによる月2,500~3,000円程度の節電効果と、屋根貸しによる賃料によって、蓄電池のレンタル料が相殺できるため、“実質0円”で蓄電池が利用できるとしている。
搭載パネルの目安は4kW以上で、屋根は南向きが条件となる。日射量が少ない地域では利用できない。
常に電気代が安く済むように蓄電池を制御。“節電貯金”など楽しく続ける工夫も
レンタルサービスには蓄電池のほか、エネルギーを可視化するアプリケーション「ぴぴバッ!」も含まれる。自宅のパソコン、スマートフォン、タブレットなどから、蓄電池の利用状況が閲覧できる。
ぴぴバッ! は、自動で蓄電池を最適な状態で使用する点も特徴となる。具体的には、各住宅の電気図面や家族構成、設備機器の情報を元に、各家庭毎の電力消費を予測して、電気料金が最も少なく済むように、蓄電池を自動で制御し、その利用状況を表示する。
また、太陽光発電との連携機能も備える。太陽光パネルからの電力供給と電力消費を予測し、蓄電池が効率よく運転できるよう自動で制御する「節電予報」、翌日の太陽光パネルが発電する電気量をシミュレートし、電力供給を予測する「発電シミュレーション」が利用できる。また、太陽光パネル・蓄電池が正しく稼働しているかを見守る機能も用意されている。
これら予測機能には学習プログラムが搭載されているため、予測値と実績値の差は毎日補正される。使用する太陽光発電システムのメーカーは問わない。
楽しく節電を続ける機能では、節電額を貯金に見立てて、目標値を比べた現在の達成率を表示する「節電貯金通常」「節電状況お知らせ」なども用意される。また、月初に節電額の目標値を設定して、節電できそうな機器を、当日の天気や不快指数によって変えながら、ユーザーに節電する機器を勧めるナビゲート機能も備えている。
さらに、当日の節電貯金額を達成すると、カレンダーに財布のマークを表示する。財布マークが一列揃うと「ビンゴ」として、ぴぴバッ!のキャラクターである「アクビちゃん」のカードがプレゼントされる。カードが4枚揃うと、アクビちゃんのグッズが贈られる。
蓄電池の興味がある人は多いが、価格が高い。10年間使っても買うより安い
ONEエネルギー 代表取締役社長で、ONEエネルギーの筆頭株主であるオリックスの取締役 兼 専務執行役を務める小島一雄氏は、蓄電池のレンタルサービスを開始する狙いについて、これまで蓄電池の価格が高かったことを挙げた。
「我々の調査では、蓄電池の興味がある方は多いが、価格が約120~140万円と高く、普及に至っていない。これをなるべく安く提供したい。ONEエネルギーなら10年間使っても約62万円で利用できる」(ONEエネルギー 小島一雄 代表取締役社長)
また、バッテリーにNEC製を起用した理由については「日産の電気自動車『リーフ』で使われている電池と同じ技術。高い安全性が実証されている」と安全性を強調した。蓄電池のレンタル目標は、3年間で10万台を見込んででいる。
NECの國尾武光 執行役員常務は、家庭に蓄電池を普及するためには「初期導入コストの高さ」「工事の難しさ」「利用効果がよくわからない」の3点が課題であることを指摘。しかし、ONEエネルギーのレンタルサービスなら、これらの問題がクリアできるとした。
「ONEエネルギーなら、初期費用は0円で、初期設置も簡素化・パッケージ化されている。設置の前には、導入効果をシミュレーションでご確認いただいて、利用開始後にはアプリで確認できる。今までの蓄電池は新築向けが主だったが、既築やリフォームの方にも、蓄電サービスを利用していただければ」(NEC 國尾武光 執行役員常務)
エプコの岩崎辰之 代表取締役グループ CEOは、ぴぴバッ! が電力使用量を予測できる理由について、「エプコは設備設計に強みがある。全国の戸建て住宅の電気図面のうち、12%の設備設計をエプコが手がけており、そのノウハウを活用している」と説明した。
ONEエネルギーではまた、2016年以降に予定されている電力自由化後は、蓄電池と太陽光発電システムを導入した家をネットワーク化し、広域電力網を形成するなどで事業を広げることも見通している。
なおONEエネルギーの社名は、参加3社の頭文字から取られており、「ONE ENERGY for ALL」の意味が込められている。