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プラズマディスプレイ製造技術から生まれた真空断熱窓。パナソニックとエクセルシャノン

シャノンウインドSPG

パナソニックは14日、プラズマディスプレイ製造技術を応用して作られた真空断熱ガラス「Glavenir(グラベニール)」を用いた窓を開発したと発表。樹脂サッシ専業メーカーのエクセルシャノンとの協業で製品化したもので、Glavenirが建築物用の樹脂サッシに組み込まれるのは国内で初めて。

エクセルシャノンが「シャノンウインドSPG」として6月に発売。サッシサイズは640×1,170㎜(幅×高さ)で、価格は285,120円。完全受注生産で、新築向けの販売を予定している。また、パナソニック ハウジングシステム事業部のグループ内販売会社であるパナソニックリビングでも販売する。

断熱と透過率、遮音性能を高めた樹脂サッシ窓

Glavenirは、かつてパナソニックがテレビや業務用ディスプレイなどで展開してきたプラズマディスプレイ(2013年に事業撤退)の製造技術を応用して開発された、真空断熱ガラス。3層のガラス構造で、屋内側に約6mmの薄さながら国内最高クラスという断熱性能を持つ。高透過ガラスによるクリアな視界の確保や、高い遮音性も特徴。

Glavenir真空断熱ガラスの構造

6月より発売される真空断熱ガラス樹脂サッシ「シャノンウインドSPG」は、Glavenirとエクセルシャノンの高断熱フレーム「UF-H樹脂フレーム」を組み合わせたもの。薄くても高い断熱性能を持つGlavenirを搭載することで、ガラス面の断熱性能を高めた。真空断熱ガラスを住宅に使うことで、エアコンなどの省エネにも寄与する。

製品名の「シャノン」には遮音、遮温の意味が込められており、「SPG」はシャノン、パナソニック、グラベニールの頭文字から付けられている。

シャノンウインドSPGの構造

高断熱構造のフレーム内に断熱材を充填し、窓全体の熱貫流率(熱の伝わりやすさを表す数値)を、縦すべり出し窓(連窓)で0.52W/(m2・K)、FIX窓で0.47W/(m2・K)まで向上。国内最高クラスの断熱性能を実現。高い断熱性能により住宅のエネルギーロスを抑え、結露の発生にも高い抑制効果があるという。

また、高透過ガラスの採用により、複層ガラスながらクリアな視界を確保。3層のガラスのうち屋外側2層には、ショーウインドウや展示ケースガラスと同等の高透過なガラスに特殊金属膜をコーティングして、断熱性能を保ちながら可視光線の透過性を高めた「ESクリアスーパー」を採用。一般的なフロートガラスの鉄分による青みを克服し、高断熱ながらクリアな視界を確保したという。

住宅への施工イメージ

シャノンウインドSPGの平均音圧レベル差は35.1dB。住宅性能表示・遮音性能の最高等級である等級3の平均音圧レベル差25dBと比較して10.1dB差があり、音を遮る性能は約3倍となる。

シャノンウインドのラインナップ。今回のモデルはフラッグシップに位置付けられる
春以降の新製品予定も明らかにした

数千万枚生産のプラズマディスプレイパネル製造技術を窓ガラスに

空気やガスを入れて貼り合わせる複層の断熱ガラスに比べて、パナソニックのGlavenirはガラスとガラスの隙間を大きくあける必要がないのが特徴。熱を伝えない真空の特徴を活かして0.1mmの隙間で断熱でき、断熱ガラス全体でも6mmまで薄型化できる。名称は、ガラス「Glass」と、フランス語で未来を意味する「Avenir」を合わせたもの。

真空を担保するシール材やピラーやガス吸着剤にも鉛を使用せず、リサイクルしやすい点も特徴。なお、Glavenirの製造はパナソニックが自社の工場で行なっている。

真空断熱ガラス Glavenir

パナソニックの真空断熱ガラス事業は、プラズマディスプレイパネルの開発/製造技術を応用して2017年より参入。これまで海外で冷凍/冷蔵ショーケースや住宅の窓などに向けて展開しており、2019年には、強化ガラス仕様の真空断熱ガラスと、透明ピラーを実用化した真空断熱ガラスを開発したと発表している。

樹脂サッシ専業メーカーのエクセルシャノンには、パナソニックがこれまで出資している。なお、Glavenirを使った窓をパナソニックブランドとして販売することは現時点で予定していない。

パナソニックのハウジングシステム事業部 建築システムBU VIG事業推進部 木村猛部長は、プラズマディスプレイと真空断熱ガラスの構造上の共通点などに触れ、「真空断熱ガラスは新規参入ながら、既に全世界で数千万枚の真空パネル生産実績がある」と強みをアピールしている。

プラズマディスプレイパネルと真空断熱ガラスの構造上の共通点