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千葉工大、遠隔操作で天井裏を点検する探査ロボットを開発

 千葉工業大学と大成建設は、遠隔操作型の探査ロボット「CHERI(シェリ)」を用いた、建物内の天井裏点検システムを共同で開発した。現在は本格的な実用化を目指して、千葉工大や大成建設の施設で実証実験を行なっている。

遠隔操作型の探査ロボット「CHERI」

 CHERIは、人が入りにくい天井裏の点検を効率的に行なうロボット。本体サイズ350×250×90mm(全長×幅×高さ)、重量4.5kgと小型・軽量ながら、高さ150mmの段差を乗り越えられる。狭隘、暗所なスペースや、配管、配線などが複雑に入り組んだ空間でも、効率的に点検作業を行なえる点が特徴。

小型ながら高さ150mmの段差を乗り越えられるという
本体
サイドクローラが稼働して段差を乗り越える

 天井裏点検システムの開発背景には、昨今の大地震などが挙げられている。地震の際に天井仕上げ材の崩落事故などが発生しており、建築物を維持管理するため、劣化診断や耐震診断などの点検作業の重要性が高まっているという。

 しかし、一般的な建築物の天井裏内部は、野縁や野縁受けなどの非構造部材で構成されており、空調ダクトほか各種配線も多数存在するため、人が入りにくくなっている。こうした理由から、効率的に点検できるロボットの開発に至った。

 今回の共同開発は、大成建設側のニーズによって始まったもので、千葉工大が開発した遠隔操作型の探査ロボットに、大成建設が導入していた天井内で撮影可能なカメラ機構を搭載した。

開発の背景には、劣化診断や耐震診断などの点検作業の重要性が高まっていることが挙げられている

無線LANで連携。カメラの映像を見ながらパソコンやコントローラーで遠隔操作

 天井裏での使用イメージは、まず点検口からロボットを投入。ロボットに搭載されているカメラの映像をモニターで確認しながら、カメラの向きやロボットの移動方向などをパソコンやコントローラーで操作して、天井裏を調査する。探査ロボットおよびカメラとパソコンの連携は、無線LANで行なわれる。

 本体に搭載されたカメラは可動式で、上部に障害物がある場合は、カメラを収納して通り抜ける。クローラ方式の駆動部は、本体に2カ所、端部に4カ所備え、端部4カ所は段差またはすき間に応じて個別に角度を変えられる。これにより、天井部材の約65mmほどの段差を容易に乗り越えられ、ダクトや配管下のすき間が約100mm以上ある場合は潜り抜けて点検する。

探査ロボットが動く様子
使用イメージ。点検口からロボットを投入する
モニターで映像を確認しながらパソコンとコントローラーで操作する

LEDライトを備え、暗所でも鮮明なカメラ映像を記録

 また、LEDライトを備えるため、10lxほどの少ない光量でも鮮明なカメラ映像を、リアルタイムで記録しながら点検可能。カメラのリフトアップ機能により、撮影高さは最大300mmまで調整できる。

 これにより、これまで目視点検では確認できなかった場所にもアクセスでき、各種の映像情報を取得することで、より詳細な点検作業ができるようになった。天井部材の不具合や、建物の経年劣化に伴う部材不良などを細部まで確認し、危険箇所を判断するという。

カメラは可動式。撮影高さは最大300mmまで調整できる
各部の名称

 点検に掛かる時間は、6畳一間の天井であれば約15~20分。連続稼働時間は約2時間としている。

 料金に関しては未定だが、現状ある点検サービスよりも低価格での提供を目指すという。

ポイントは誰でも簡単に操縦できること

千葉工業大学 常任理事 未来ロボット技術研究センター・所長 古田 貴之氏

 千葉工業大学 常任理事 未来ロボット技術研究センター・所長 古田 貴之氏は、探査ロボットについて以下のように語った。

「今回のロボットは、誰でも簡単に操縦できるようにシステムを練ってきました。本体も小型のためさまざまな所で展開できるようにし、特に今回は、高まる天井裏点検というニーズに対応しています。世の中の問題を解決する、実用的で役に立つロボットであると言えます」

 現在行なわれている実証実験は、千葉工大施設、大成建設施設、都内某ビルなど全5箇所で実施。実際の環境で実用可能と判断したという。今後は、建物点検業務を行なう調査会社などと連携を図りながら、実際の建物への適用を積み重ねて本格的な実用化を目指していくとしている。