やじうまミニレビュー
キューオーエル「Ran's Night」
キューオーエル「Ran's Night」 |
女性と基礎体温は切っても切り離せない関係にある。体調を知る上で非常に重要な情報源となるからだ。基礎体温の変動に問題がなければ、その変動に合わせたセルフマネジメントが可能になるが、そうでない場合はホルモン分泌の乱れをはじめとした問題が推測される。
婦人科系の病気を防ぐ意味でも、本当なら毎日基礎体温を測った方がいいのだが、これがなかなか実行できない。
基礎体温は“何もしていない状態”で“毎日同時刻に測る”というのがルールだ。つまり、寝起きが最も望ましいというわけ。起きあがった後やトイレに行って戻ってきてからではすでにアウト! 目が覚めたら、そのまま安静状態で測らなくてはいけない。忙しい女性たちがこれを毎朝続けるのは本当に大変である。多くの女性が「つい測るのを忘れてしまう」「そのまま二度寝してしまう」「メモし忘れる」「水銀の基礎体温計は壊しそうで怖い」と悩んでいる。
これらの悩みを解決するために、毎朝アラームで計測時間を知らせ、計った体温までデータとして保存し、液晶上にグラフとして表示してくれるというハイテクな電子式の基礎体温計も存在する。記録までしてくれるのはありがたいが、目が覚めたら測るという行動はやはり避けられない。
■目覚めたときには計測が完了している「Ran's Night」
そこで登場したのが、51×69×14.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量39gで、卵のようなオーバル型をしたユニークな外観を持つ衣類内温度計「Ran's Night」である。装着フックでパジャマのパンツや下着に固定して寝るだけで、内蔵された2つのセンサーが眠っている間に定期的に皮膚側と外気側の温度を記録しつづけ、その日の最高温度を教えてくれる。目覚めたときには計り終わっているので二度寝の心配もなく、すぐに活動を開始できるのである。
メーカー | キューオーエル |
製品名 | Ran's Night |
希望小売価格 | 12,800円 |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 13,440円 |
横から見た様子 | 装着フックを押すとディスプレイのフレーム部分が持ち上がる | 間に洋服を挟み、裏面を体に接触させる |
データは「Ran's Night」本体内の「スケジュール」で設定した開始時刻から6時間にわたり、10分間隔で37回計測される。例えば開始時刻を午前0時とすると、朝の6時まで自動的に10分おきに衣類内の温度が測られるというわけだ。分解能は0.0625度、角度は±0.5度で、32~40℃までの間小数点以下2桁未満を切り捨てで表示する。小数点以下1桁までしかわからない通常の体温計とは異なり、基礎体温計のように小数点以下2桁までの微妙な温度変化に対応している。
「Ran's Night」には過去7日分の最高温度が保存でき、1週間分の最高温度を一覧で確認することは可能だ。しかしデータをさらに活用するなら携帯電話向けの専用サイト「Ran's Story」への登録が推奨されている。データはボタン1つですぐにQRコード化できるので、携帯電話のバーコードリーダーで液晶に表示されたコードを読み取って1件ずつ送信するのだ。
本体、電池、取扱説明書というシンプルな構成 | 「Ran's Night」の裏面 | 電池はCR2032を2個使用。1日1回QRコードを作成すると、電池寿命は約3カ月だという |
中央のセットボタンを長押しすることで起動する「Ran's Night」のメニュー | 本体では7日分の最高温度を一覧で見られる | 画面が真っ暗な状態で中央のセットボタンを短く押すと、最新のQRコードを生成する。ダウンボタンを押すと1日前のQRコードを生成できる |
生成されたQRコードの例(一部モザイクをかけてあります) | メニューの「スケジュール」で開始時間をセットする |
「Ran's Story」への登録は無料で、転送した温度データから一晩の温度変化をグラフ化したり、最高温度の長期的変化も簡易グラフとして確認できるほか、温度だけでなく月経開始日や体調の記録も可能で、そこから今どのステージにいるのかを把握することもできる。サイトはSNSになっていて日記を書いたり友だちをつくったりできるほかに、コミュニティに参加して体や体調に関する質問もできるようになっている。
パソコンで管理するツールなどは提供されていないが、表計算ソフトなどに記録することで独自にグラフ化は可能だ。
■知っておきたい体温のこと
ここで覚えておきたいのは、「Ran's Night」は「温度計」であり、「体温計」ではないという点。もちろん基礎体温計でもない。「基礎体温計じゃないのに参考にしていいの? お腹で測っていいの? 舌下じゃなくていいの?」という疑問も沸いてくる。疑問を解決するためには、まずは「体温」について知っておいたほうがよさそうだ。筆者もそうだったが、通常の体温と基礎体温の違いについてすら意外と知らない方もいらっしゃるのではないだろうか。この際だから体温について知っておこう。
まず基礎体温だが、いわゆる通常の体温測定が起床時に小数点第1位まで分かる体温計で測るのに対し、基礎体温は4時間以上就寝した安静時に舌下で、小数点第2位まで分かる専用の基礎体温計を用いて測る。基礎体温をグラフ化すると「低温期」と「高温期」の二相性を示すのが特徴。この変動が体のサイクルを表しているのだ。測り方も体温計も異なるため、平熱と基礎体温は簡単に比較できるものではないと覚えておきたい。
次に体温だが、健康状態を知る上で自分の平熱が何度かを把握しておくことは重要だ。ちなみに脇の下で計測した日本人の平熱の平均値は36.89±0.34℃だそうだ。一般的に赤ちゃんの平熱は高く、年を取ると代謝が落ちるため下がる傾向にあるという。さらには1日の時間帯によっても異なり、4~6時という早朝は一番低く、14時~17時あたりは高いという。
体温の測定方法だが、日本では一般的に脇の下で測るが、耳、口、直腸などでも測れる。ただし測定部位によって測定時間が異なり、平熱も違ってくる。体の中心ほど高くて安定しているそうだ。一口に平熱といっても体調や測定時間、気温などによっても変わるので、自分の平熱を管理するためには測る部位を変えずに変動をチェックしたほうがいいのである。
次に体温計についてだが、体温計は「水銀体温計」と「電子体温計」があり、最も正確に体温を測れるのは水銀体温計といわれている。体温計の測定方法には「予測式」と「実測式」の2種類があり、よく1分程度でピピッと音が鳴って素早く測れる体温計は予測式の電子体温計。手軽な反面、予測式なので誤差が生じ、実際の体温より低く表示される傾向があるようだ。たとえば脇の下で測る場合、終了のアラームが鳴ってからさらに10分程挟み続けてみたところ、アラームが鳴ったときよりも若干高くなった。水銀体温計、電子体温計を問わず、正確に測るには10分程度の検温時間が必要なのである。
さらには、体温計の挟み方によっても正確性に差が出るらしい。よく脇の下で平熱を測るのに斜め上から挟んでいるが、実はあれは間違いなのだとか! 斜め下から押し上げるようにして挟まなくてはいけないという。一番正確に測ろうと思ったら「水銀体温計を脇の斜め下から押し上げるようにして挟み10分以上待つ」ということになる。たかが体温、されど体温。調べてみると結構奥が深いのである。
ここで話を「Ran's Night」に戻そう。「Ran's Night」は下着やパジャマのパンツにクリップするため、装着部位は「腹部」となる。取扱説明書によれば「機器の計測温度は通常、口中温度より低くなる」らしいが、腹部は新陳代謝が激しく高温を示すこともあるらしい。なんともややこしい話だ。
基礎体温は具体的な体温が何℃であるべきなどと決まっているわけではなく、低温期と高温期が一定のパターンできちんと推移しているかどうかをチェックするものと考えると、就寝中という安静時に、同じ条件下で記録しつづけることで比較的安定した結果が得られるということになるといえるのだろう。
■これは確かに便利!
正直半信半疑での使用開始だったが、実際測定してみたところ「Ran's Story」上のグラフはほぼ低温期と高温期に分かれているのが確認できた。携帯電話で参照できるコンテンツだけに、表計算ソフトで作れるグラフとは異なり、★マークの位置で見るおおざっぱなものだが、月経の開始タイミングも加味すると概ね問題なく推移しているのが分かったのだ。サイトの「ぐっすりグラフ」では一晩の体温の推移を折線グラフを見ることもできた。基礎体温データとして扱うことは難しいかもしれないが、さらに細かいコンディションを登録していくことでセルフマネジメントに役立てられるだろう。
かつて数カ月分の基礎体温を記録できる多機能型の電子基礎体温計を使っていたことがあったが、やはり目覚めてから基礎体温計をくわえるというだけの行為すら面倒だったことを覚えている。うっかり二度寝してしまい、体温計をくわえていられなかったというミスも発生。口に入れるものだけに、体温計自体の衛生面のケアも必要だった。
「Ran's Night」は腹部にしっかり装着でき、寝返りなどでは取れない。装着した瞬間だけややひんやりした感触はあるものの、違和感も一切感じない。しかもこれだけで温度が記録されるのだからありがたいことこの上ない。
10月17日の夜の例。皮膚側と外気側の温度に大きな差はみられないようだ。なお、この日は4時前に一度トイレに起きたと思われる | 1月8日の例。4時から6時にかけて温度が下がっているのが確認できる |
10月から11月にかけての温度推移。測定忘れやデータ転送忘れで穴は空いているが、低温期と高温期に分かれている。月経開始日を登録するとグラフにも表示されるようになる | 12月から1月にかけても概ね分かれている。お正月の前後は夜通し部屋の片付けをしていたので、測る機会を失っている |
■問題は、夜更かしとQRコードの読み取り忘れ
「Ran's Story」はSNS形式を取っているため、一瞬自分のデータが他人に共有されてやしないかと心配になったことがあった。もちろんそのようなことはないので安心していただきたい。ただ、データのグラフ化や管理を望んでいるだけで、他人とのコミュニケーションは考えていないという方には、操作の混乱や心理的な負担があるかもしれない。
「Ran's Story」に登録すると、測定データをより活用できるようになる | 「Ran's Story」のホーム画面 | 「Ran's Story」のデータ管理メニュー。一晩の温度推移は「ぐっすりグラフ」で確認できる |
このほかに注意すべき点があるとすれば、トイレでの落下だろうか。装着しているのを忘れてうっかり落としてしまいそうになるのだ。特に夜中に起きたときはボーッとしているので気をつけたいところ。
あとは基本的な問題だが、寝る前に「Ran's Night」を装着し忘れないことと、夜更かしなどの不規則な生活をしないこと。どちらも測定には致命的だ。
また、起床後にデータを忘れずに「Ran's Story」に転送しておくことが大事だ。些細なことだが、慣れるまで筆者にとって読み取り忘れも大きな課題であった。1週間分保存してあるから大丈夫だと思っていると、思った以上に日数が経過していてごっそりデータが消えていたなんてこともあったのだ。朝取り外したらQRコードを読み取るなどの習慣をつけたほうがよさそうだ。
大事なグラフのあちこちに穴を開けてしまうズボラな筆者だが、「Ran's Night」の利便性は大いに評価している。体温計ではないため、体調に問題を感じたときは普通の体温計で体温を測ったほうがよいことはいうまでもないが、セルフマネジメントツールとして女性の味方になってくれそうだ。朝が苦手な方には特にオススメしたい。
2010年 1月 15日 00:00
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