家電製品ミニレビュー

東芝「SIENT(サイエント) 200 F-DLR200X」

~もうACモーターの扇風機には戻れない!

東芝ホームアプライアンス「SIENT(サイエント) 200 リビング扇 F-DLR200X」

 静かで柔らかな風を生み出すDC(直流)モーターを搭載した扇風機が、高価格にも関わらず市場を賑わしている。これまでのAC(交流)モーターの扇風機と違い、DCモーターは低速でも安定して回転できるため、そよぐような微風から、駆け抜けるような強風まで自在にコントロールできる。さらに、消費電力も低いのも特徴だ。

 そんなDCモーターを採用した扇風機の中から、先日、東芝の「SIENT(サイエント) 200 リビング扇 F-DLR200X」を自腹で購入した。せっかくなので、レビューで紹介してみよう。

 本製品は東芝の高級扇風機「SIENT」の中位機種となる。最高級モデル「F-DLR300X」で搭載されている充電機能は省かれているが、それ以外は同じ機能が搭載されている。

メーカー名東芝ホームアプライアンス
製品名・品番SIENT(サイエント) 200 リビング扇 F-DLR200X
希望小売価格オープンプライス
購入店舗Amazon.co.jp
購入価格22,800円

 本製品の大きな特徴は、4段階の強さが選べる「揺らぎのあるリズム風」だろう。風量が「最小」なら、対流のような空気の動き~僅かに感じられる微風のリズム風に、「最大」なら、カーテンがふわりと揺れるような風~高原を吹き抜けるような強風のリズム風といったように、段階毎にリズム風の強さが選べる。このリズム風は、信州の上高地に吹く高原の風を計測してプログラム化したものという。

 また、首振り運転は上下と左右を組み合わせられる「立体首振り」に、温度と湿度に合わせて風量を自動でコントロールする「センサー運転」、除菌・脱臭効果のある東芝独自の微粒子イオン「ピコイオン」を風に乗せて放出する機能も搭載されている。

羽根は、低速でも滑らかでかつ心地良い微風を生み出すという7枚羽根。羽根の付け根と羽根の先端の角度が大きい。直径は30cm
DCモーターと7枚羽根により、心地良さを追求しているという(ホームページより引用)
脱臭効果がある「ピコイオン」の効果(ホームページより引用)。衣類についたニオイを数時間で低減するという

組み立てはラク! 工具不要でスムーズに進められる。ACアダプターもなし

 組み立てはとても簡単で、数分で終わってしまった。場所も取らず、工具も一切要らなかった。

 手順は以下の写真のとおり。重いモーターが付いた頭でっかちの支柱を固定するのが面倒そうに思えたが、実際にはベースを床に置いたままできたので、特にラクだった。組み立てを考慮したデザインと言えるだろう。

F-DLR200Xのセット一式。画像上左から、本体。後ガード用締め付けリング、羽根用スピンナー、リモコン、リモコンホルダー、操作キー説明シート。後ガード、前ガード、羽根、ベース
取り付け手順は番号の通り
【1】ベースを床に置き、支柱の○印を、ベースの○印に合わせて差し込む。そして、支柱の○印がベースの●印に合うように回す。正しくセットされると、ベースのロックボタンが上がる
【2】後ガードを本体にはめ込み、締め付けリングを右に回して固定する(画像左)
【3】モーター軸のキャップ(黒)をはずし、羽根を差し込み、スピンナーを左に回して羽根を固定する(画像右)
【4】前ガードを取り付ける。前ガードのツメを後ガードに引っ掛ける(画像左)。次に、両手で前後ガードの全周をはめ込み、前ガード下にあるクリップを押し込んで固定する
【5】完成した様子。白を基調としたスッキリとしたデザインだ

 電源はプラグをコンセントに差し込めばOK。コードリール付なので、必要に応じてコードの長さが調節できるのが良い。DCモーターの扇風機にありがちな、大きなACアダプターがないため、アダプターを失くす心配もないうえ、使用時もコンセント周りがスッキリする。

 完成時のサイズは、373×368×810mm (幅×奥行き×高さ)で、高さは支柱の後ろにある「高さ調整ボタン」を押せば、1,100mmまで12段階で伸ばせる。高さ調節範囲は290mmと広いので、床に座る生活から、椅子に腰掛ける生活までカバーできるだろう。重量は約6.2kgと重めだが、安定感はある。

DCモーターの扇風機だが、プラグはACアダプタではなく一般的なもの。必要に応じて長さが調節できるコードリール付きだ
高さ調節は手動。スタンドの後ろの「高さ調節ボタン」を押して固定を解除し、調節する
高さを変えた様子。810mm(左)から1,100mmまで高さが12段階選べる
ベース部は後ろから前に向かって緩く傾斜している(上)。表面はツヤのある透明感のある仕上げで、高級感がある(下)

 全体的なデザインはシンプルながら、細部も考慮されている印象だ。色は白を基調とした本体に無色透明の羽根、ところどころに配されたシルバーがアクセントになっている。ベース部は後ろから前に向かって緩く傾斜しており、表面はツヤのある透明感のある仕上げで、高級感を感じさせる。羽根の後ろ側のモーター部は、凹凸が少ないスッキリとした仕上げで、ハンドルは内部にスッキリと収納できる。

 操作はベースの操作キー、またはリモコンで行なう。操作キーは全てピクトグラム(記号)化されており、使い始めは少々わかりにくいかもしれないが、その場合は同梱される貼る説明シールをベースに貼ると良い。風量の調節は、ベース側は風量ダイヤル、リモコン側は矢印キーで行なう。操作状態は、キーの側にインジケーターが浮かび上がって知らせる。手動で停止した後で再運転する場合は、最後の運転状態でスタートする。

 姿・形、表示も含め、全体的に主張しないデザインなので、どんな部屋にも馴染みそうだ。

モーター部も凹凸が少ない、スッキリとした仕上げ。後姿にも気が使われているデザインだ
持ち運びハンドルは、使わないときにはスッキリと収納できる
ベースにある操作パネルとリモコン。本体でもリモコンでもほぼ同じ操作ができる、ボタンはピクトグラム化されており、文字による説明は省略されている
運転状況は、本体のボタン側にインジケーターが浮かんで知らせる。写真中の表示は、風量「1」、センサー運転「3」、左右首振り「90度」、上下首振り「ON」、ピコイオン運転「ON」、タイマーは「2時間後OFF、6時間後ON」の状態だ。なお、本体に貼り付けられる説明シールも付属する
本体側の風量の調節は、風量ダイヤルを回す。右に回せば強く、左に回せは弱くなる。ダイヤル中央のボタンは、連続/リズム風の切り替えボタン
表示部のインジケータの明るさは、切タイマーボタンを長押しして調節できる
リモコンはリモコンホルダーを使うことで、スタンドの後方に納められる。定位置があるので、紛失しにくいだろう

微弱な風から、部屋の空気を循環する強い風まで。上下左右の首振り運転も

 電源を入れてみると、「ピロロロロ」と抑揚のついた電子音が軽快に鳴る。風量はベースの風量ダイヤルを回すか、リモコンの「↑/↓」のボタンを押し、[1]から[7]まで、7段階の調節ができる。

 もっとも弱い風量の[1]は、微風というよりも、空気が動くのに近い感覚の風。しかし、数m離れたところに居ても、空気の動きが感じられるほど、しっかり届くのが驚きだ。羽根の回転は非常に低速で、扇風機の羽根の回転数が数えられるぐらい静かに回り、風切り音は全く聞こえない。最小風量運転時の音の大きさは16dBで、これは1m離れた木の葉の触れ合う音や、時計の秒針の音の20dbよりもさらに低い。しかも、この無音に近い微風は、風量[3]まで続く。

リビングルームで使用している様子。背が高くなるので、椅子の生活にもぴったりだ。部屋の隅に置いても、しっかり風が届く
風量に関わらず、ムラのない風が淀みなく遠くまで届く。風量[1]~[3]までは羽根の風切り音もモーター音もほとんど聞こえない。とても静かだ

 風量[4]になって、ギアチェンジするかのごとく、初めて羽根が発する風切り音がヒューンと聞こえ、一般的な扇風機で言えば「弱」の感覚に近い風量になる。2m先に置いた雑誌の1ページがフワリとめくれるほどの強さだ。弱風だが、部屋の隅にまでしっかり届くのがわかる。風切り音は聞こえてくるものの、モーターの音は聞こえない。

 風量[5]~[6]になると、雑誌のページがパラパラと数ページめくれ、カーテン全体が若干忙しく揺れる強さの風になる。それでも、一般的な扇風機の「弱」と「中」の間ぐらいだろうか。風切り音は段階的に大きくなるが、モーターの音はほとんど聞こえない。

 風量[7]で最大になるが、一般的な扇風機の「中」ぐらいだ。ここではじめて唸るようなモーターの音が聞こえてくるが、風切り音に紛れる程度。最大風量運転時の音の大きさは42dBで、いわゆる図書館レベル(40dB)だ。微風の音よりは大きいが、それでも一般的な扇風機とは比べ物にならないほど静かで、普通の会話やテレビ視聴などの邪魔にならない。

 全体的には一般的な扇風機よりも風が弱めの印象だが、物足りなさは全く感じなかった。なぜなら、淀みなく連続する風が塊となって届くので、さほど強い風でなくても十分に涼しさが感じられるからだ。本製品を部屋の隅に置いても、風量に関わらず、ムラのないスッキリと整った風が、部屋の反対側まで余裕で届く。このパワフルさがとても印象的だ。

 また、首振り運転を併用すれば、風は部屋の隅々まで届けられる。首振りは上下、左右の2種類があり、風量に関係なく滑らかに作動する。上下は約20度、左右は90度、70度、50度の3つから選べる。上下・左右の首振りを同時に作動もできる。

 おやっ! と感心したのは、上下の首振りだ。上下首振り運転の時、本体のモーター部全体は動かずに、羽根と直結したDCモーターだけが独立して動く。これがなんだかカッコイイ! 小さな工夫といえばそれまでだが、洗練された動きに高級機としてのこだわりを感じた。

上下の首振り運転は約20度。モーター部全体は動かず、羽根と直結したDCモーターの部分だけが独立して動く。リモコンでも首振りのON/OFFができる
左右の首振り運転は3種類から選べる。左から90度、70度、50度の様子
首振り運転に加え、羽根全体の風向も手動で調節できる。上下は36度の範囲で傾けられる
左右の風向調節は25度ずつ。左右合わせて50度だ
上下、左右の首振りを組み合わせて運転しているようす。上下左右に動くことで、広範囲に風が広げられる。首振りの速度は、風量に関係なく、一定の速度でゆっくりと変化する(再生時間:1分21秒)

リズム風は心地良い静かな風が1日中続く。就寝時にオススメ

 風量を自分で選ぶ連続風も静かで快適だが、リズム風運転にした時こそ、本製品の特徴である7枚羽根と、低速でも安定して回転するDCモーターの実力が発揮される。

 リズム風運転にすると、自然界の風のように、風に予測できない強弱が付く。本体ダイヤルの中心にあるキー、またはリモコンのファンマークのキーを押せばリズム風に切り替わり、インジケーターの「羽根マーク」が点滅する。風量も、[1]~[4]の4段階に切り替えられる。風量の調節は、連続運転と同じように、本体の風量ダイヤルを回すか、リモコンの風量キーでできる。

 リズム風[1]は、ほのかな空気の流れと、僅かに感じる風の間を、穏やかに行き来するような印象だ。[2]は、凪ぎから時折フッとそよ風が吹きぬける、柔らかな風が体感できる。[3]になると、強弱の振幅がさらに広がり、凪ぎ、微風、そよ風が心地良く混ざり合う風になる。そして[4]は、風の強い高原のようだ。そよ風とほんの少しの凪ぎ、そして突風に似た強い風が吹きぬける。

リズム風[2]の様子。わずかな微風からフワリと吹きぬけるそよ風まで再現されている(再生時間:2分13秒)

 このうち[1]は、限りなくやさしい風なので、扇風機が苦手な人にも向きそうだ。[2]と[3]は、仕事や勉強、食事、団欒に向く日常生活に適した風だ。密閉された室内に、自然の中で感じるような心地良い風が実感できるだろう。首振り運転と合わせれば、さらにランダムな風になる。

リズム風[2]の風は、ほのかな空気の動きから、そよ風がフッと吹き抜ける柔らかな風を送る。自然に近いやさしい風なので、就寝時にも活用できる。本体の高さ調整の範囲は広いため、背の高いベッドでも無理なく風が向けられる

 最高に気に入ったのが、リズム風[2]だ。就寝時、設定温度を普段よりも1~2℃上げたエアコンと、上下・左右の首振りとリズム風[2]を併用することで、常に空気が柔らかく動き、かつやさしい風が時折肌を撫でるため、心地良いまどろみに誘われる。かすかに風切り音が聞こえるが、不快ではなく、むしろ耳に心地良く響くほどだ。

 身体の一部が冷えて目覚めたり、逆に不快な汗に起こされたりもなく、朝までぐっすり眠れた。起床時も、喉や鼻が乾いたり、声がガラガラにもならない。扇風機を点けっぱなしにして眠ったのに、驚くほど快適な目覚めが迎えられた。これは一般的な扇風機ではまず味わえない快適さだろう。買い換えてからは、扇風機を点けっぱなしにして眠るのは当たり前になってしまった。

 点けっぱなしを心配するならば、「切タイマー」、「入タイマー」を併用すると良いだろう。どちらのタイマーも1時間刻みで9時間まで設定できる。両方のタイマーの組み合わせもできる。

 なお、リズム風運転の他、センサー運転も搭載されている。支柱の裏側にある「デュアルセンサー」が、室内温度だけでなく湿度の変化も感知して、自動で風量を調節してくれる。「標準」「強め」「弱め」と、3つのモードから選べる。

扇風機は部屋の隅ぎりぎりまで寄せられる。ベースが壁面に触れるぐらい寄せ、左右90度と上下の首振りを合わせても、ガードがぶつからない
ガード後ろの風も乱れない。風量を最大の[7]にしても、15cm後ろにある薄いカーテンを吸い込まなかった。窓際にも置きやすいだろう
支柱の後方にある「デュアルセンサー」。室温と湿度を感知して、自動で風量を調節するセンサー運転のための装置だ

ピコイオンの風で、衣服についた嫌なニオイを脱臭。最小消費電力はたったの1W!

 冒頭で述べた通り、本製品には東芝独自の除菌・脱臭イオン「ピコイオン」の発生装置が搭載されている。ピコイオンは、DCモーターの下部から発生し、風に乗って部屋全体に広がる。ピコイオンのON/OFFを切り替える専用キーが本体側にあり、とてもわかりやすい。発生時もノイズはほとんど起こらないので、点けっぱなしで使用している。

 試しにタバコのニオイのついたスーツ、イヤなニオイがついてしまった洗濯物も用意し、2時間ほど風を直接当ててみたが、どちらのニオイも、気にならないぐらいにほとんど消えてしまった。数値では表せないが、確かな脱臭効果が実感できた。寝具や部屋干しのニオイの予防のほか、ニオイが篭る靴箱、水周りの乾燥など、ニオイが発生しやすい場所にも使えそうだ。

ピコイオンは、DCモーターの下部から発生し、風に乗って部屋全体に広がる。写真はガードと羽根をはずして撮影したもの
ピコイオンでスーツについたタバコのニオイ、夜まで外干してついてしまった湿気たニオイを脱臭している様子。鴨居の高さにかけた衣服でも、上下首振り運転でくまなく風が当てられる。ニオイはほとんどわからなくなり、効果が実感できた
最小の消費電力はたったの1Wだった(上)。風力を最大にして、上下・左右の首振り運転ON、ピコイオンONと、フル機能を駆使しても、消費電力は15W。ちなみに待機電力は1Wとされているが、ワットチェッカーでは「0W」と表示され、測定できなかった

 本製品の見逃せない特筆すべき点として、消費電力の低さが挙げられる。連続運転の風量を最弱の[1]、首振りOFF、ピコイオンOFFにした時の消費電力は、なんとたったの1W!! また、風量を最大の[7]、上下・左右の首振り同時運転で、ピコイオンをONにした最大でも、15Wに過ぎなかった。ACモーターの扇風機の消費電力は、強運転で30~40Wだったので、実質的に1/5以上の消費電力で済んでしまう。快適性は比べられないほど高いのに、静かで省エネまでできてしまうのは驚きだ。

【風量の強さと機能の有無による消費電力の差】
運転状態ピコイオンOFF
首振りOFF
ピコイオンON
首振りOFF
ピコイオンOFF
上下首振りON
ピコイオンOFF
左右首振りON
ピコイオンOFF
上下左右首振りON
ピコイオンON
上下左右首振りON
1(弱)1W1W3W3W5W5W
21W2W3W3W5W5W
32W2W4W4W5W6W
45W5W7W7W9W9W
56W7W8W8W10W11W
68W9W10W10W12W12W
7(強)10W11W13W13W15W15W

もうACモーターの扇風機には戻れない!

 使い始めて数週間経つが、特にリズム風は手放せないほど快適だ。リズム風[2]と、上下・左右の首振りで、緩急のある柔らかい風が部屋中に広がり、エアコンの設定温度を普段よりも上げても、快適さがずっと続く。ピコイオンも点けっぱなしにしているので、部屋のニオイも抑えられるようだ。

 相当気に入っているが、欠点もある。1つは、一般的な扇風機の2~4倍もする価格。もう1つが、上下首振りの時に発生する、モーターの唸るような「ブーン」という低い音と、「カラカラカラ」という作動音だ。静かな扇風機だけに、この音は惜しいと思った。

 それでも、組み立てや使い勝手を含めて完成度が高く、一般的な扇風機とは比較にならない程静かで、サーキュレーターのように遠くまで届く微風はとても魅力的だ。季節に関わらず、年間を通して使いたくなる扇風機としてオススメしたい。

藤原 大蔵