家電製品ミニレビュー
パナソニック「リビング扇 F-CH328」
パナソニック「リビング扇 F-CH328」 |
昨年からの節電志向で、扇風機市場はかつてない盛り上がりを見せており、種類も豊富だ。一昔前ならちょっと考えられない3万円以上の高級機から、DCモーターを搭載した省エネ・微風対応タイプまで。扇風機売り場には様々な製品が並んでいて、本当に迷ってしまう。
そんな扇風機売り場において、今回紹介するパナソニックの「リビング扇 F-CH328」は少し地味に見えるかも知れない。羽根の枚数や風質について何かを謳っているわけでもないし、デザインに凝っているわけでもない。しかし、実際に使ってみると迷いなく使える良製品であることがわかった。
メーカー | パナソニック |
製品名 | リビング扇 F-CH328 |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 13,531円 |
F-CH328は、いわゆるリビングタイプの扇風機で、首振り、タイマー、不規則な風を送る「1/fゆらぎ」機能など基本的な機能を搭載しているほか、国内メーカーで数年前から搭載されている温度センサー機能も備える。これは室温に応じて扇風機の運転を自動で制御する機能で、エアコンと併用するのに便利な機能だ。
また、パナソニックならではの機能が独自のイオン技術「ナノイーイオン」の放出機能。ナノイーは水に包まれた微粒子イオンで、ニオイの元となるウイルスを抑制する効果や、肌や髪への保湿効果などが実証されている。
本体サイズは376×346×90~105cm(幅×奥行×高さ)で、本体重量は4.6kg。組み立てはごく一般的なもので、迷うことはない。
組み立てる前の部品 | 支柱と台座部分は分かれていて、ネジで固定する。写真は台座部分の裏側 | 台座部分 |
本体正面 | 本体側面 | 羽根は5枚羽を採用する |
10畳程度のリビングに置くのにちょうど良いサイズだ。操作は、本体台座部分の操作パネルか、付属のリモコンで行なう。操作パネルのボタンはいずれも日本語表記で使いやすく、操作しやすい。
操作パネルは全て日本語表示でわかりやすい。電源ボタンはかなり大きく設けられている | 付属のリモコン | 支柱部分に取り付ける専用のホルダーが付属する |
■温度センサーでエアコンとの併用が快適
自宅のリビングに設置したところ |
我が家では、F-CH328をリビングに設置。室温が30℃以下で風がある日は、窓を開けて扇風機だけを使い、室温が30℃を超えるような真夏日はエアコンとF-CH328を併用して使っている。実は、これまで私は、エアコンと扇風機を積極的に併用するようなことはしなかった。エアコンをつけている上に扇風機までつけるなんて、無駄だと感じていたのだ。
それが、今回レビューのためにエアコンと扇風機を併用したところ、その快適さにやみつきなってしまった。特におすすめしたいのは、室温が32℃を超えるような猛暑日。マンションの4階の我が家は日当たりが良く、夜19時を超えても室温は31℃以上。帰宅して部屋に帰ってきただけで汗だくになってしまう。そんな時にエアコンだけをつけても、涼しいと感じるまでにかなり時間がかかる。
それが、扇風機を使って室内の空気を動かすと、明らかに涼しくなるまでの時間が短縮される。また風が身体に当たって体感温度を下げてくれるので、設定温度を高めにしても快適に過ごせる。いつもならエアコンの設定温度を25℃にするところを、扇風機と併用することで、28℃か29℃まで上げても快適さが変わらない。エアコンと扇風機を併用した方が、結果的に省エネになる。
温度センサーは低/中/高の3段階で設定可能。温度センサー高では室温約29℃、低では室温約25℃で運転が自動停止する |
エアコンの併用に便利だったのが、室温に合わせて風量を自動で調整する温度センサー機能だ。例えば室温モードを「低」に設定した場合、室温が約25~29℃になると風量が自動で「弱」にして、室温が約25℃以下に下がると運転を停止する。
実際使ってみると、思っていたよりずっと正確で、室内の温度計と比べてもほとんど差がない。あれ、風が弱くなったなと思うと、室温もその分低くなっているのだ。エアコンではもはや当たり前の機能だが、扇風機でも同様に自動で調整してくれるのは嬉しい。
■就寝時は「1/fゆらぎ」機能がマスト
羽根の後ろ側に設けられている大きな取っ手 |
基本的にはリビングで使っているF-CH328だが、夜になっても暑さが残っている時はF-CH328を寝室に移動して使っていた。決して小さいとはいえない本体サイズだが、上部についている取っ手のおかげで移動は楽に行なえる。
就寝中に必ず使っていたのが、不規則な風を送る「1/fゆらぎ」機能だ。風が1カ所に当たり続けないので、身体の一部が冷えすぎることがない。冷え性に悩む女性で、就寝中に扇風機を使いたいという人は、「1/fゆらぎ」機能のような不規則な風を送るモードを搭載している機種がおすすめだ。
■ナノイーで部屋干しが臭わなくなった
最後に紹介するのは、パナソニックならではのナノイーイオン放出機能だ。ナノイーは目に見えるものではないので、効果がわかりづらいが、こと部屋干しにおいては確かに効果を発揮してくれた。共働きの我が家では、降水確率が30%以上の日は基本的に部屋干ししている。そこで、気になるのが部屋干し特有のあのニオイだ。乾ききらないままの状態でしばらく置いておくと、生乾きのニオイが衣類についてしまい、ひどい時はもう1回洗濯し直さないといけないこともある。
F-CH328では、本体ベース部からナノイーを放出。風とともに室内に広げるという。実際、部屋干しの衣類に向けて首振り運転をしたところ、風をあてることでいつもより洗濯物の乾きが早くなり、生乾きのニオイが全くしなくなった。
室内に干した洗濯物に対して、送風している様子 | ナノイー放出中は、電源ボタン下のナノイーロゴが青く光る | 羽根カバー中央部にもナノイーロゴが設けられている |
なお、ナノイーを放出していても運転音が大きくなったりすることはなく、いつもと同じように使える。髪や肌に対する保湿効果は今のところ実感できないが、日常的にナノイーイオンを放出できるのは便利。部屋干しする機会があまりにも多いので除湿機の購入も考えていたが、とりあえず今年の夏はF-CH328で乗り切れそうだ。
■扇風機の選択肢が広がった
冒頭で、この製品のことを“地味に感じるかもしれない”といった。F-CH328は、パナソニックの扇風機でハイエンドに当たるモデルだし、上に紹介したとおり、便利な各種機能も搭載している。ただ、2012年のトレンドという観点から見るとやはり少し地味に見える。
理由の1つめは、DCモーターを搭載していないこと。DCモーターは、従来の扇風機では再現できなかった「微風」を実現している省エネ性に優れたモーターだ。シャープや東芝の大手家電メーカーはもちろん、バルミューダやアマダナなどのデザイン系メーカーも今年はこぞってDCモーターを搭載している。
もう1つは、風質について言及していないこと。扇風機の風質については、2009年に英・ダイソンが羽根のない扇風機エアーマルチプライアーで、従来の扇風機の風質を「ムラがある」と表現。以来、バルミューダの「Green Fan」や、東芝の「サイエント」でも、“自然の風”を目指すとして、羽根の形状などを独自に開発。今の扇風機ブームのきっかけになっている。
F-CH328は、DCモーターと風質についてアピールしていないという点から見ると、2012年の扇風機トレンドから外れた製品となるわけだが、では、F-CH328の分が悪いのかと聞かれると、そんなことは全くない。というのも、扇風機はもともとそこまで消費電力が大きい製品ではない。消費電力だけみるとF-CH328は36/43W(50/60Hz)で、シャープのDCモーター搭載の「プラズマクラスタースリムイオンファン PF-ETC1」は最大24W。シャープのPF-ETC1は最小運転時2Wの超微風にも対応した製品のため、さらなる節電に効果的ではあるが、最大消費電力だけを見るとそこまで大差ないのだ。
ただし、風質については、やはりこだわっているメーカーのものははっきりと違う。わかりやすい例でいうと、我が家ではF-CH328の風向きを上向きにして使っていることが多い。顔に直接風が当たると、なんだか息苦しく感じて不快だからだ。一方、ダイソンのエアーマルチプライアーやバルミューダのGreen Fanでは、そのような不快感は一切ない。
要はそこの差に2万円以上の差額を出せるかどうかだろう。
F-CH328は、タイマーや首振りなどの基本性能に、温度センサーやナノイー機能などで付加価値を高めたいかにも日本らしい製品だ。使い勝手も全く問題なく、迷いなく使える。これまでと同じ使い勝手で、さらなる便利さを求める人にはF-CH328を自信をもっておすすめしたい。
2012年7月24日 00:00