走るライター南井正弘のコレはホントにスグレモノ!

ニュートラルモデルの傑作「ゲルニンバス」に、第21弾がリリースされた!

<実際に履いて使って走ってから書く、ライターの南井正弘が「コレはホントにスグレモノ!」と太鼓判を押すスポーツアイテムを、毎週レコメンド!

 アシックスのゲルニンバスといえば、着地時に脚の過度な倒れこみ(オーバープロネーション)の心配がない、ニュートラルな着地のランナーやアンダープロネーションのランナーに向くモデルとして、全世界で高い評価を得てきた。今年に入って、そんなロングセラーに待望の第21弾が登場。機能性のアップに、しっかりと成功していた。

アシックス ゲルニンバス21
メーカー名アシックス
製品名ゲルニンバス21
実勢価格17,280円(税込)

 日本においてゲルニンバスは、ゲルカヤノほどの知名度はない。だが、アメリカやヨーロッパといった海外では、ゲルカヤノに勝るとも劣らぬ人気を誇っている。その証拠に、全米屈指のランニングギアチェーンである「ロードランナースポーツ」のブランド別売り上げでは、いつもゲルカヤノとトップ争いを行なっているほどだ。

 筆者は以前よりゲルニンバスのクセのないクッション性を気に入り、歴代モデルのいくつかを着用してきた。そして今回ゲルニンバス21を履いてみて、このシューズならではの機能性や特徴をキープしつつ、いくつかの点でアップデートされていることを体感した。

 まず足を入れてみて感じるのは、アッパーの前足部にゆとりがあること。今回履いたのは標準ラスト、すなわち幅広ではない木型を採用したタイプだが、それでも前作ゲルニンバス20よりもゆったりしていた。かといって緩さがないのは、日本人ランナーの足型を理解しているアシックスならでは。

アッパーには通気性とフィット感に優れたジャガードメッシュを使用。足の動きに適応してくれる特性も。今回のモデルチェンジで前足部にゆとりのあるラスト(木型)を採用している

 踵のフィッティングも素晴らしい。実際に走り始めてみると、ヒール部分の大型ゲルによる高い衝撃吸収性をまず感じる。ゲルカヤノにはミッドソール後部の内側に配されるオーバープロネーション防止のためのデュオマックスのような硬さを感じさせる構造も採用していない。そのため、より足裏でクッション性を感じられる。

ヒール部分に大型のゲルを配することで、シリーズ史上最高レベルの衝撃吸収性を確保

 このスペックもあり、ゲルニンバス21は、前足部の着地ではなく、足裏全体でフラットに着地するか、踵からのヒール着地が向いているだろう。そして他ブランドにはない着地安定性の高さも大きな魅力。このぐらつきの少なさは、ビギナーから中級ランナー以上、あらゆるレベルのランナーすべてに魅力となるはず。

 さらにミッドソール上段のフライトフォーム プロペルは、着地時の衝撃を次の一歩へと変換してくれることを感じる。アシックスのシューズは、どちらかいうとクッション性重視で、反発力を謳うモデルは少なかったが、このモデルでは十分な反発性能を有していると思った。

ミッドソールのフライトフォーム プロペルは、着地時の衝撃を推進力へと変換

 実際に、同社のベストセラーであるGT-2000ニューヨーク7では1Kmあたり5分前半のペースで走ると、自分の脚力だと、シューズとペースのミスマッチでかなり辛いが、ゲルニンバス21では、その反発力のおかげで、あまり辛くなかったのである。

 さらに嬉しかったのが、そのアウトソールのグリップ性。同社のオンロードモデルは、アスファルトやコンクリートといった舗装路では最高のグリップ性を発揮する。だが、アウトソールの刻みが浅いため、土や芝のような路面でのグリップ性が物足りなかったのだ。対して、最新のゲルニンバス21のアウトソールは細かく分割されており、その形状が柔らかい路面に食い込み、充分なグリップ性を発揮してくれたのである。

ゲルニンバス21のアウトソールは、アスファルトやコンクリートといった舗装路だけでなく、公園など土の路面でも充分なグリップ性を発揮してくれた

 このように個人的にも高い評価を与えたゲルニンバス21であるが、唯一と言っていい欠点が、そのプライシング。今回の希望小売価格は1万7,280円(税込)と前作から1,000円ほど値上げをしているのだ。機能性アップを考慮したら仕方ないかもしれないが、筆者の周囲の比較的懐に余裕のあるランナーたちも、1万5,000円を超えると、シューズの購入を躊躇すると言っていたので、その点だけが多少心配である。

南井 正弘

フリーライター、『ランナーズパルス』編集長。1966年愛知県西尾市生まれ。スポーツシューズブランドのプロダクト担当として10年勤務後ライターに転身。雑誌やウェブ媒体においてスポーツシューズ、スポーツアパレル、ドレスシューズに関する記事を中心に執筆している。主な著書に『スニーカースタイル』『NIKE AIR BOOK』などがある。「楽しく走る!」をモットーに、ほぼ毎日走るファンランナー。ベストタイムはフルマラソンが3時間56分09秒、ハーフマラソンが1時間38分55秒。