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[ダウン症児と私50]驚くほど早い回復の一方、ストレスで耳の状態は悪化

舌の手術の経過も良く、元気になってきたユキトくん。今回は、怪我が回復する一方で、ストレスから耳の状態が悪化してしまい精密検査を受けることになったときのお話です。耳から膿が出るだけでなく、聞こえていないかもしれないということで、精密検査を受けることになりました。でも、検査を受ける準備だけで、なかなか大変です。

 

驚くほどの回復力で、2週間後には運動会に参加

幼稚園の先生が「口の中の傷は、ほかの場所に比べてすぐに治るよ」と教えてくれた通り、ユキトの傷は目に見えて日に日にきれいになっていきました。ユキトが手で舌を触らないように、ずっと手をつないだまま頑張っていましたが、パパに「もう舌を触らないから大丈夫」と言われて、恐る恐るユキトの手を離してみると、ユキトはすぐには舌を触りませんでした。手術後まだ10日ほどだったので、私はビックリしました。

そして2週間後には、もう舌に手をやることもなく、幼稚園へ行けるようになりました。復帰した週は運動会があり、怪我をしたときには諦めていたのですが、無事に参加もできました。ユキトは驚くほどの回復を見せ、運動会で自分の足で歩いた姿を見たときはとても嬉しかったです。体操、かけっこ、障害物競争、玉入れ、どれもがんばりました。本当に感動しました。そして手術後3週間でいつもの生活ができるようになり、デイサービスにも行けるようになりました。

 

怪我のストレスで耳の状況が悪化?

怪我が早く回復して良かったと思っていたら、ユキトの耳から膿が少し出てきました。ユキトは「滲出性中耳炎」の治療で耳にチューブを入れて以来、手術した病院で4カ月に1度の経過観察と、近所の個人医院で耳や鼻をこまめにお掃除をしてもらっていました。私は慌ててユキトを近所の耳鼻科へ連れて行くと、やはり耳が化膿していました。耳鼻科の先生に舌のケガの話をすると「ああ、舌のケガが原因ですね。過度なストレスが掛かると体の弱いところに出ます。抵抗力が一気に落ちるので化膿したんですね」と言われました。化膿した耳に消毒薬を直接入れて洗ってもらう治療を2日に1回ずつ続け、3週間で治りました。

 

言語療法士の先生の勧めで耳の精密検査

同じ時期に、言語療法士の先生が鈴を持ってユキトの様子を調べてくれたとき、ユキトが鈴の音に反応しなかったので、病院で耳の精密検査(ABR)を受けるように言われました。総合病院を予約し、午後の検査が決まりました。耳の精密検査は、子どもを寝かせて脳波を取って調べるのですが、これがなかなか大変なのです。睡眠導入薬(オレンジシロップ)を飲ませて、しっかり眠ってもらうには、いくつか注意点があります。1つ目は、いつもと同じ時間に寝て同じ時間に起こすこと。2つ目は、お昼ごはんを少なめにすることです。検査の前に眠くなっていたり、お昼を食べ過ぎると睡眠薬を飲めなくなってしまうのです。

 

睡眠薬を飲むのに一苦労

検査当日、私とユキトは起床時間や食事に気を付けて病院にやって来ました。処置室に入り、看護師さんにスプーンで睡眠薬のオレンジシロップを飲ませてもらいましたが、なかなか飲めません。普段使っている哺乳瓶の乳首の部分へシロップを入れて飲ませてみたりしましたが、嫌がってしまいます。最後は、看護師さんがシリンジ(針のない注射器)を使って飲ませると、なんとかゴックンしてくれました。受付をしてからオレンジシロップを飲ませるまでに45分も掛かってしまいました。次に、明かりが調節できてベッドとイスのある「睡眠誘導室」へ行き、ユキトが眠るのを待ちます。ユキトは、明かりを落とし薄暗くするとキョロキョロしてしまって落ち着きませんし、明るくするとニコニコ遊んでしまいます。

 

睡眠誘導室と病院内を右往左往

最初はベビーカーのまま寝かせようとしましたが、眠る気配がないので、ユキトをベッドへ移動させました。すると、ベッドの柵をドンドンと叩き、音が出るのを喜んでしまい、全く寝そうにありません。このままではどうしようもないと困っていると、看護師さんが来て、今度は白い粉の睡眠薬を水に混ぜてシリンジで飲ませてくれました。もう1度、暗い睡眠導入室に入り眠るのを待ちましたが、ユキトは相変わらずキョロキョロして落ち着きません。どうして眠れないのか分りません。ママもいつも通りにしていたらそのうち寝るだろうと思い、私はユキトをベビーカーに乗せて、病院内を散歩しました。しかし、多少眠そうにあくびをするものの2時間経っても3時間経っても全く寝てくれません。検査は2時ごろの予定だったのですが、3時を過ぎると検査の先生が交代しました。4時を過ぎると「検査を後日にしますか?」と言われてしまいました。しかし、また予約を取り直して、嫌がるオレンジシロップを飲ませて何時間も掛かるのは疲れてしまうので「もう少し頑張ってみるので、時間をください」とお願いしました。

 

結局検査を断念、眠れないのは成長の証し

しかしユキトは、5時近くになっても寝なかったので、結局検査はできませんでした。後日、睡眠薬を飲ませて心電図エコーをとる予定があるので、その日に耳鼻科の精密検査も一緒にやってもらうことになりました。次回の予約手続きと会計が終わると、ユキトはイビキをかいて寝ていました。薬を飲んで1時間後には寝る子もいますが、ユキトは今までも薬を飲ませて寝るまで2時間くらいかかっていました。今回も2時間くらいでと思っていましたが、結局4時間以上掛かりました。とても疲れたけれど、これはユキトが成長したからだと看護師さんが教えてくれました。今までは、薬を飲ませればよく分らずに寝ていたけど、大きくなって周りの様子が分ってくると、いきなり暗い部屋に入ったりすると落ち着かなくなるのだそう。周りがよく分るようになってきた証拠だと言うことでした。

 

 

ナナ

5歳のダウン症の息子「ユキト」と、3歳半の弟「マサト」のママの「ナナ」と申します。ダウン症の子どもを育てている様子や、母親の気持ちなどを率直にお話ししたいと思います。