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[ダウン症児と私46]手術前の丁寧な聞き取りに、焦りが募るナナさん

歩行訓練中に転んで舌を切ってしまい、縫合手術が必要になったユキトくん。今回は、縫合をしてくれる病院で、手術前にナナさんとパパ、先生との間で行なわれたやり取りについて伺いました。出血が止まらないユキトくんの手術を、すぐにでも始めて欲しいナナさんですが、初めての病院での聞き取りは思いのほか長く、焦りが募ります。

 

出血が止まらず焦るナナさん

縫合手術をしてもらう病院に着いたところでパパと合流し、3人の先生にも会えてホッとしましたが、ユキトは血とよだれを流しながら大泣きしていました。ユキトが舌の傷を触ってしまうので、私はユキトの両手を固定するために後ろから抱っこしていたのですが、転んだ療育施設から1時間以上もこの状態でした。自分の身体がしびれてしまったので、パパに抱っこを代わってもらいましたが、この間も出血は続いているので気は休まりません。

 

長く長く感じた手術前の聞き取り

3人の先生が「もう大丈夫ですよ。縫いましょうかね」と言ってくれたので、すぐに縫ってくれると思っていたのですが、まずはユキトの状況の聞き取りが始まりました。ユキトは10時45分ごろに療育施設の外で転んでケガをしました。すぐに医務室に連れて行き、看護師さんに消毒をしてもらい、医務室のお医者さんに見てもらいました。受け入れの病院が決まって、タクシーに乗り、運転手さんに急いでもらってこの病院に着いたのが12時5分ごろです。パパと合流し、受付が終わって3人の先生に会えたのが12時15分。すぐにでも縫ってもらえると思ったのですが、実際に手術が始まったのは12時40分でした。手術をしてくれる先生が目の前にいるのに、この聞き取りの25分が私にはとてもとても長く感じました。でも、この聞き取りはユキトにとってとても大切なことでした。

 

聞き取りはケガの状況から、これまでの生活まで

先生に話したのは、まず転んだときの様子でした。歩行訓練中はユキトから手を離さないようにと、作業療法士の先生から言われていたのですが、ユキトに強く手を振り払われてしまい、私が離してしまったのです。その拍子に、ユキトはアスファルトへ顔から転んでしまいました。

次に話したのは、妊娠、出産から、今日までの様子です。ダウン症標準型21トリソミーであること。生まれつき心臓に穴が2つあったものの、今は自然閉鎖したこと。脊椎検査で異常がないこと。滲出性中耳炎でチューブを入れる手術をした際、全身麻酔を2回しても異常がなかったこと。薬も食事もアレルギーはないこと。普段の歯の治療方法のことも聞かれました。心臓に穴が空いている場合、虫歯菌が血液中に回ってしまうと、命に関わるので、虫歯の治療は慎重に行います。虫歯の治療をするときは、何日も前からサワシリンという抗生剤を飲ませて、抗生剤が効いている状態で虫歯治療を始めます。そのほか、病院の通院状況や毎日の食事のこと、幼稚園や訓練施設のことなど、たくさん聞かれました。

 

いよいよ手術の方針が決定

ユキトは水分補給が苦手で毎日苦労しています。怪我をした当日もほとんど水分を取っていませんでした。また、朝ごはんもあまり食べられず、訓練が終わったらしっかりごはんと水分をあげようと思っていたところでした。つまり病院に行ったときは、すでに水分不足で、食事もあまり食べられていない状態だったのです。

先生からは、これからもしばらく食事も水分も受け付けなさそうなので、ブドウ糖と抗生剤の点滴を入れながら手術すること、麻酔は部分麻酔で舌に注射すること、抜糸をせずに済む溶ける糸で縫ってもらえることが決まりました。そしてやっと待ちに待った手術が始まりました。

 

暴れるユキトをバスタオルで固定し手術開始

手術は、手術室や個室ではなく、歯科のたくさん並んだ診療台の上で行なわれました。ユキトが暴れないように、ミノムシみたいに全身にバスタオルをグルグル巻きにして、台の上に乗せてネットを掛け、完全に固定されました。サチュレーションという血液中の酸素濃度や血圧などを計る機械を足の親指に付け、ブドウ糖と抗生剤の点滴を腕から入れようとしましたが、入らなかったので足にしてもらいました。そしていよいよ、舌の縫合手術が始まります。部屋中にユキトの叫び声が響き渡り、胸が締め付けられた私は、苦しくなってしまいました。

次回2月14日は、やっと始まった手術の様子や、あとに待っていた細かな手続きのお話しをお伝えします。

 

 

ナナ

5歳のダウン症の息子「ユキト」と、3歳半の弟「マサト」のママの「ナナ」と申します。ダウン症の子どもを育てている様子や、母親の気持ちなどを率直にお話ししたいと思います。