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【ダウン症児と私28】できていた療育を泣いて逃げるように、辛い時期

新しい幼稚園へ通い始め、ゆっくりとしながらも少しずつ成長してきたユキトくん。今回は、楽しそうに参加していた療育プログラムに、突然イヤイヤが始まったときのお話を伺いました。新しい幼稚園は、発達段階もきちんと見てくれて、とても決め細やかなアドバイスがもらえると気に入っていたナナさんですが、ユキトくんの変化に不安が募ります。

 

今まで楽しんでいたプログラムを泣いて逃げるように

Q.今まで楽しく参加していた療育プログラムに、泣き出してしまうようになったのですか?

A.はい。それまでニコニコしながら参加していたのに、急に泣いて逃げ出すようになってしまったんです。

 

Q.できなくなってしまったプログラムには、例えばどんなものがありますか?

A.大きな桶にあずきを入れて、体であずきの感触を楽しむプログラムがありました。教室にあずきが散らからないように最初にブルーシートを敷くのですが、それまでユキトはニコニコしながら桶に入って遊んでいたのに、あるときブルーシートを広げると、泣きながら逃げて行ってしまい、全く参加できなくなってしまいました。

 

Q.ほかのプログラムは、どんな様子でしたか?

A.紙吹雪遊びでは、紙をちぎるところまでは参加できるのですが、紙吹雪が舞うのを見ると、怖いのか逃げるようになってしまいました。カラーボールをたくさん入れたボールプールも、泣きながら逃げてしまいます。以前は、ニコニコ笑いながら自ら進んで入って行ったのに……・。絵の具でお絵描きするときも、粘土で遊ぶときも、床にブルーシートを敷こうとすると、泣きながら教室の隅っこにハイハイで逃げて行ってしまうのです。

 

ナナさんは理由が分らず不安に、先生からのアドバイスは?

Q.思い当たる原因はありましたか? 

A.最初は、新しい幼稚園に移って場所や環境が変わったことが原因かと悩みました。成長発達を促すためのせっかくの療育なのに、本人が逃げてしまっては何にもなりません。私は、早くどうにかしないといけないと思い、焦りました。

 

Q.先生からは何かアドバイスはありましたか?

A.担任の先生は、「これはユキトくんが成長している証拠。心配しないで大丈夫」と言ってくださいました。先生によれば、今までのユキトは周りの状況がまだはっきりと認識できていなかったので、何でも同じようにニコニコと反応していただけだったそうなのです。だんだんと周りのことが認識できるようになったことで、分からないもの、怖いもの、イヤなものに対して、「逃げる」という行動で自分の意思を表示しているとのことでした。ですがこれから先は、プログラムを繰り返すことでだんだんと慣れ、怖くないことだと分かってくれば、またお友だちと一緒に遊べるようになると教えてくださいました。

 

それでも、目の前のユキトくんを見て辛い気持ちに

Q.先生から状況を説明されても、泣いている子どもを目の前に、慣れるまで待つのも辛かったのではないですか? 

A.はい。「必ず慣れてまた大丈夫になる」という気持ちは大きかったですが、実際に療育の活動中に我が子が泣いてどうにもならないのは、本当に辛かったです。私が焦ったり、イライラしてしまうと、周りの人に「母親がイライラすると子どもに移るよ」なんて言われるので、余計に私のストレスになっていました。

 

Q.この時期は、泣いているユキトくんだけでなく、ナナさんもストレスが大きかったのですね

A. ほかの子たちは、目の前で楽しそうに遊んでいるのですが、ユキトだけが教室の机の下でグズグズ泣いているのです。「前の幼稚園でやったことは意味がなかったのか?」「私が無理矢理ユキトを通わせているだけなのか?」などの考えがよぎり、とても悲しくなりました。

 

Q.その状況は、どのくらい続きましたか?

A.入園してから半年間は、前の幼稚園でできていたこともイヤがってしまい、なかなか療育プログラムに参加できず苦しい時期を過ごしました。この時期は、食事を食べられず苦労していた時期と重なっていたので、精神的にすごく辛かったです。それを支えてくれたのは、担任の先生の励ましと、同じ歩けないコースに通うお友だち、そしてそのママたちです。

この半年間の辛い時期は、新入園した生徒4人で一緒に過ごしました。この福祉の幼稚園は1歳半から子どもを受け入れていたので、4人は年齢も障害もバラバラです。この時期を一緒に過ごしたママたちとは、今でもみんなで情報やアイデアを出しあって、一緒に子育てを頑張っています。

 

ダウン症の基礎知識28:泣いている理由をわかって、慌てないことが重要

子どもは、知覚が発達して周りの状況が分かるようになると、いろいろな新しい刺激を「怖い」と感じ、嫌がって泣くことがあります。この時期は、発達がゆっくりのダウン症児の子どもにも必ず訪れます。生まれて1年の間は夜泣きなどせずおとなしかったユキトくんですが、新しい幼稚園に通い始めた時期に周りを認識できるようになり、刺激に反応し始めたのです。子どもが泣いたりイヤイヤする時期は、お母さんはストレスが溜まりますが、1人で抱え込まず、ナナさんのようにママや先生と一緒に乗り越えることが重要ですね。

 

 

ナナ

5歳のダウン症の息子「ユキト」と、3歳半の弟「マサト」のママの「ナナ」と申します。ダウン症の子どもを育てている様子や、母親の気持ちなどを率直にお話ししたいと思います。