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【これからは予防の時代26】「遺伝性乳ガン卵巣ガン症候群」の検査方法

今回は、「遺伝性乳ガン卵巣ガン症候群」と実際に診断されるまでの過程をご紹介します。遺伝性ですので、家族のガン発症歴などを問診していきますが、確定診断には遺伝子検査が必要となります。費用の問題もありますが、診断されることで社会的差別を受ける可能性もあり、また当事者の心理的なバックアップも必要となります。非常にセンシティブな問題です。

 

第1段階は、家族の病歴を問診

まず最初に、家族歴に関する問診を行ないます。またBRCA遺伝子は優性遺伝ですので、親から子には半分の確率、つまり50%の確率で遺伝します。問診では、父母両方の家系について、以下のような情報が必要となります。

  • 40歳未満で乳ガンを発症した人がいる
  • 年齢を問わず卵巣ガン(卵管ガン・腹膜ガン含む)の人がいる
  • 時期を問わず原発乳ガンを2個以上発症したことがある人がいる
  • 男性の方で乳ガンを発症した人がいる
  • 自分を含め乳ガンを発症した人が3名以上いる
  • トリプルネガティブ乳ガン(エストロゲン受容耐陰性、プロゲステロン受容耐陰性、her2が発現していない)と言われた人がいる
  • BRCAの遺伝子変異が確認された人がいる

 

第2段階は、さらに詳細な問診

第1段階の問診で、遺伝性乳ガン卵巣ガン症候群に該当する可能性が高い人に対して、専門家による詳細な問診を再度行います。ここで遺伝性乳ガンの可能性が高いと判断されると、遺伝子検査や経過観察などについて、既発症者、未発症者を含め、本人や血縁者と話し合う「遺伝カウンセリング」を行ないます。

 

第3段階は「遺伝カウンセリング」

「遺伝カウンセリング」は、まずは既発症者へ遺伝学的検査や経過観察についての話を行ない、そのあと未発症者や血縁者にも情報提供するというように段階を踏みます。そして遺伝学的検査を行なう場合は、家系内の誰から行なうかは家族の事情に配慮しつつ、既発症者のなかでも若年発症者やガン多発症例といった、遺伝子の変異を有している可能性が高い人から順に行ないます。

 

「遺伝カウンセリング」の内容

遺伝カウンセリングの流れと内容は、だいたい以下のようになっています。 

  1. 病歴、家族歴の聴取、家系図の作成、その他リスク因子の確認
  2. 家系の誰がどういうガンにかかったかで、BRCA遺伝子の突然変異が見つかる確率が異なるため、個人に応じたリスクを評価をし、遺伝形式の提示します(例:母親が40歳未満で乳ガンの場合と、祖母が50歳で卵巣ガンの場合では、本人がBRCA遺伝子変異を有する率が異なる)
  3. 遺伝性乳ガン、卵巣ガンでは、高率にガンを発症し、また早期発見が難しく発見時には進行ガンが多いため、検診、予防方法についての情報提供をする
  4. ガンや遺伝に伴う心配や不安、悩み、家族間の不一致といった心理的支援や、保険に入れないなどの社会的な差別を受ける可能性に対する支援
  5. インターネットや書籍などの情報資源の紹介、患者会の紹介 

なお遺伝子検査は保険が効かず、1回20〜30万円かかります。遺伝カウンセリングを受けても遺伝子検査まで受ける人はごく少数のようです。

 

高島裕一郎(医学博士)

予防医学を専門としている医師です。医療の高度化でさまざまな病気の原因がわかるようになりました。これは同時に、いろいろな病気を予防することができるようになってきたことを意味します。生活習慣病やガンなど、生活のなかで予防のできる病気と、その予防方法について、お伝えしていこうと思います。日本医師会認定産業医、日本人間ドック学会認定医。