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【これからは予防の時代25】「遺伝性乳ガン卵巣ガン症候群」のガン発症率
2017年 1月 11日 20:00
前回は「遺伝性乳ガン卵巣ガン症候群」の概要をお話しました。今回は、同症候群の人の「ガン発症率」が一般の人と比べてどのくらい高いのかを見ていきます。乳ガン、卵巣ガンそれぞれの発症率に加え、変異のある遺伝子ごとの発症率もご紹介していきます。
乳ガンの発症率は、6〜12倍
日本の乳ガン患者にも、BRCA1遺伝子やBRCA2遺伝子に変異がある「遺伝性乳ガン卵巣ガン症候群(以下、HBOC(Hereditary Breast and Ovarian Cancer))」患者が少なくないことが明らかになってきました。一般の方が乳ガンにかかる確率を1とすると、乳ガンの家族歴がある方は2〜4倍、HBOCの方は6〜12倍にもなります。
卵巣ガンの発症率は、8〜60倍
また卵巣ガンにかかる確率は、一般の方を1とすると、家族歴がある方は3〜10倍、HBOCの方は8〜60倍になります。つまりHBOCの人は、ハイリスクグループとして一般の人と分けて考える必要があるのです。
BRCA1/2どちらに変異があるかで異なるガンリスク
BRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子のどちらかに病的な変異がある場合の70歳までのガン発症リスクはこのようになります。
<乳ガンリスク>
- BRCA1遺伝子に変異がある場合:57%
- BRCA2遺伝子に変異がある場合:49%
<卵巣ガンリスク>
- BRCA1遺伝子に変異がある場合:40%
- BRCA2遺伝子に変異がある場合:18%
BRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子は、乳ガンと卵巣ガンの両方に関わり、またDNAの修復に関係しているので、この遺伝子がうまく働かないと、遺伝子に傷がつきやすくなってしまい、その結果、ガン遺伝子が変異しガン化しやすい状態となってしまうのです。
HBOCでは、DNA修復の遺伝子が失活
通常の発ガンは、複数のガン関連遺伝子が突然変異することで発生するために、高齢になるほど発症しやすくなりますが、乳ガン卵巣ガン症候群の人は、BRCA1かBRCA2遺伝子のうちどちらかでも変異があれば、DNA修復という突然変異に重要な遺伝子が失活しているため、発ガンが早まってしまうと考えられています。
BRCA1/2どちらかでは、ガンを発症しないことも
またBRCA遺伝子のどちらかにに突然変異があってもガンを発症しない場合があるのは、発ガンには複数の遺伝子変異が必要なためで、BRCA遺伝子1個だけ発ガンには足りないからだと考えられます。