暮らし

【ダウン症児と私16】1歳過ぎて取得した「療育手帳」、複雑な思いも

中耳炎の手術を終えたユキトくんは、その後の検査で耳の聞こえが良くなったことが確認されました。今回は、1歳を過ぎて申請したユキトくんの療育手帳について、申請から取得までのお話を伺いました。療育手帳を取得したことで、さまざまな福祉サービスが受けられるようになりましたが、複雑な思いも感じていたようです。

 

冬の間は感染予防のため、外出を控えて家で過ごす日々

Q.中耳炎の手術を受けたのは冬でしたが、退院後はどうされていたのですか。

A.冬は前年と同じようにRSウイルスの感染予防のために、シナジス注射を月に1回打ってもらいに病院へ通いました。毎回、ユキトを押さえて太ももに注射するのですが、注射を嫌がる姿は見ているこちらも辛くなりました。でも頑張るしかありません。一方、今まで毎月通っていたダウン症外来は、2月と3月は行けないまま、卒業してしまいました。

 

1歳を過ぎて、療育手帳の取得をソーシャルワーカーに相談

Q.療育手帳を取得されるにあたり、どこへ問合せましたか?

A.通っていたダウン症外来のパンフレットに、療育手帳と特別児童扶養手当について書いてあったのを見て、まずは小児医療センターのソーシャルワーカーさんに電話で相談しました。療育手帳は、各種福祉サービスを簡単に受けられるようにするために、知的障害児へ自治体から交付される手帳です。自治体によって、受けられる福祉サービスには多少の違いがあり、東京都の療育手帳は「愛の手帳」と呼ばれています。ソーシャルワーカーさんから、その手帳を交付されると、ハンディキャップを軽減するための福祉サービスが受けられること、手帳を取得したからといってこちらが不利になることは全くないことを教えていただきました。早速、ユキトも療育手帳を取りに行くことにしました。

 

療育手帳は申請から発行までに2カ月弱

Q.療育手帳の申請にはどんな手続きが必要でしたか?

A.まずは毎月通っている遺伝科の先生に診断書を書いてもらいました。あとは、療育手帳交付申請書、ユキトの写真1枚、母子手帳、印鑑を用意して自治体の福祉窓口で申請します。その後、指定の日時に児童相談所で面接と知能テストを受け、判定を受けます。その知能テストの結果が出たら、もう一度児童相談所に行き、児童相談所の医師の診察を受けます。最初の申請から1〜2カ月かかります。ユキトの場合は、2月初めに申請して3月末ごろに発行されました。ユキトの障害は、重度の知的障害児という判定でした。1歳3カ月目でまだ歩けませんが、歩く見込みがあるということで、身体障害者手帳はもらえません。

 

療育手帳を取得しサービスを受けるも、最初は複雑な思いも

Q.療育手帳を取得すると、どのような福祉サービスが受けられますか?

A.先ほどもお伝えしたとおり、自治体ごとに少しずつ内容が異なります。例えばユキトの場合は、下記のような福祉サービスなどを受けていて、とても助かっています。

 

  • 特別児童扶養手当
  • 心身障害者福祉手当て
  • 心身障害者医療費支給
  • 自動車税の減免
  • 所得税控除
  • JR運賃割り引き
  • 航空運賃割り引き
  • ガソリン代の補助
  • 高速道路料金割り引き

など

 

Q.療育手帳が届いたときは、どんなことを思いましたか?

A.手帳を申請してから交付までに2カ月近くかかったので、やっともらえたという喜びがありましたが、重度の知的障害児とはっきり証明されてしまったのは悲しくもありました。特に、初めての知能テストで33という数値が出たのはショックでした。

 

ダウン症の基礎知識16:療育手帳だけでない支援

ダウン症は、療育手帳もしくは身体障害者手帳の対象になります。手帳を取得することで、さまざまな福祉サービスを受けることができます。ダウン症では、特に幼少期の合併症の治療など、医療費負担が多いこともあり、療育手帳を申請することで負担が多少軽減されます。ただし、手帳の取得は義務ではないので、あえて利用しないことを選ぶ人もいます。また療育手帳のほかに、「特別児童扶養手当」「慢性疾患や重度障害への援助」など、地域によって違いはありますがさまざまな支援制度がありますので、積極的に情報収集して利用したいものです。

 

 

ナナ

5歳のダウン症の息子「ユキト」と、3歳半の弟「マサト」のママの「ナナ」と申します。ダウン症の子どもを育てている様子や、母親の気持ちなどを率直にお話ししたいと思います。